Inc.:Admiral William H. McRaven(ウィリアム・マクレイヴン海軍大将)は、その職業柄、極度に緊迫した場面や、危険に瀕した状況に関する知識を持っている人です。United States Special Operations Command(アメリカ特殊作戦軍)の長として、マクレイヴン氏はオサマ・ビン・ラディン氏の死につながった襲撃を指揮しました。しかし、この最大の功績も、生涯をかけたアメリカ海軍特殊部隊Navy SEALsでの職務のひとつに過ぎません。
しかし、昨年にマクレイヴンが彼の母校であるテキサス大学オースティン校で卒業式祝辞スピーチをしたときの、彼の卒業生に向けたアドバイスは、百戦錬磨の軍人とは思えない、驚くほどに地に足がついた素朴なものでした。
何年も前、彼は自身の卒業式を二日酔いで迎えたことを認めた後で(そして、完全に当時の卒業式祝辞スピーチの内容を忘れたことも)、SEALsでの基礎訓練で彼が学んだ人生の教訓をひとつひとつ、卒業生に話していきました。最初の、そして、最も基本的な教訓は、誰にでもできることでした。
「ベッドを整えなさい」
「私にとって、SEALsの基礎訓練は一生分の試練を6カ月間に詰め込んだものでした」。彼はスピーチに集まった卒業生にそう話します。「SEALsでの訓練において毎朝、教官が私たちの兵舎室に現れてまず初めに行うことは、ベッドを検査することでした」
当時は、「なんてバカバカしいんだ、と思っていた」とマクレイブンは認めます。なんといっても、彼らは強健なSEALsの一員を目指してやって来た無骨な男たちであり、カリスマ主婦ではないのですから。「しかし、この素朴な毎朝の行いがもたらす効果を、幾度となく思い知らされたのです」と、彼は強調しました。ベッドメイキングが、なぜ素晴らしい1日をスタートさせるためにそれほど有効なのか? 彼は3つの理由を提示しました。
まず、ベッドメイキングを行って1日を始めることは、人生において小さなことが大事である、という事実を裏付けることなのです。もし小さな物事をきちんとできなければ、大事を成すことなど決してできないでしょう。
次に、成功(どんなに小さくとも)は、次の成功を生むということです。もし毎朝ベッドメイキングをしたら、皆さんは1日の最初の任務を遂行したということになります。こんな小さな任務でも、遂行した事実が小さな自尊心を生み、次の任務に向けたやる気を生むことができます。そのやる気で、次の任務を遂行したら、もうひとつ、さらにもうひとつ、という具合に。そして、1日の終わりには、たったひとつの小さなベッドメイキングという最初の任務の完了が、その後の多くの任務の完了になっていることを知るのです。
ベッドメイキングの習慣は、ちょっとした自己成功サイクルのきっかけとして機能するだけではなく、1日の終わりを気持ち良く迎えることもできるようになります。「さらに、もし仮にその1日がひどい日だったとしても、整えられたベッドが待つ家に帰ることができます。皆さんが整えたベッドです。その整ったベッドのおかげで、明日はきっと、もっと良い日になるという元気が湧くのです」と、彼は続けます。
この習慣を薦める、もうひとりのベッドメイカー
このスピーチを聞いたテキサス大学の学生のうち何人が、マクレイヴンの話に説得され毎朝ベッドをきちんと整えるようになったのか、正確な人数を知ることはできません。しかし、マクレイヴンは少なくとも1人の成功した起業家に、寝室を整える習慣を納得させました。「僕の人生はそのとき、とてもごちゃごちゃしていました・・・自分が持つエネルギーが無数の方向へ散らばって何をやっているかわからないような状態でした」。『The 4-hour workweek(「週4時間」だけ働く。)』の著者として知られる、ティム・フェリス氏は、Podcastでリスナーに向けて毎朝の習慣について話しました。フェリス氏は、マクレイヴン氏に影響されて、ベッドメイキングの習慣を始めたそうです。フェリス氏は次のように語っています。
「僕の人生は、不確かなことばかりです。しかし、どんなに嫌な1日でも、どんなに悲惨な状況になっても、ベッドを整えることはできます。そうすることで、なんとかもちこたえたという気持ちにさせてくれます」。フェリス氏のやり方が軍隊の規律正しさとは程遠いことは彼自身が認めているものの、彼もベッドメイキングを実践するひとりなのです。
毎朝の簡単な習慣、実践してみてはいかがでしょう。
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Jessica Stillman(訳:コニャック)
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