Inc.:熱心に勉強している人をイメージしてください。真剣な顔で背中を丸め分厚い教科書に没頭している学生の姿が頭に浮かびますか?

学校時代の嫌な経験と難しいことを勉強するのは大変に違いないという単純な思い込みのせいで、勉強は眉をしかめ多大なストレスを感じながらするものだと思っている人がほとんどです。でも、科学によれば、新しいことを速く習得したいときは、学習に集中してしかめっ面になるよりも、笑いながら楽しく学ぶほうが、勉強ははかどるようです。

年齢に関係なく、楽しみながら学ぶほうが学習速度が速い

笑いを織り交ぜた学習の効果は、低年齢から顕著になると、行動科学者であり作家でもあるSusan Weinshenk氏は自身のブログで説明しています。彼女はその記事の中で次のようなシナリオを想定していますが、子どものいる人の多くは覚えがあるかもしれません。

月齢18カ月の娘にタブレット上で知育ゲームをさせることにするとします。あなたはアプリを2、3個ダウンロードして、どれで遊ばせようか決めようとしています。音楽を使って数字と文字のコンセプトを教える、とても真面目なアプリにしましょうか? それとも、陽気な動物たちがひっきりなしに飛び出してきてスクリーンの中を走り回り、子どもを笑わせるアプリにしましょうか?

真面目なアプリほど教育的だと思って選ぶ人が多いかもしれませんが、科学はそれとは反対に、子どもをできるだけ笑わせることを奨励しています。Weinschenk氏はよちよち歩きの子どもたちを、2つのグループに分けて学習結果を比較した研究を取り上げています。片方のグループは笑いを織り交ぜて学習するグループ、もう1つは笑顔で顔がほころぶことがない状態で学習するグループです。「笑いながら学習したグループの子供たちは、笑いのない状態で学習したグループよりも多くの学習目標を達成しました」と彼女は報告しています。

さて、これらは幼い子どもにテレビやタブレットのスクリーンで何を見せたらいいか悩んでいる親には興味深い話ですが、楽しみながら学習するほうが学習効率が高いという話は、大人にも当てはまるのでしょうか。多くの研究がその疑問に対して「YES」と答えています。大人を対象にしたオンラインのクラスは、ジョークやユーモアを取り入れると効果が上がることを証明した研究がありますし、『College Teaching』誌に発表された研究は、受講者の笑いを誘う講義こそ学習効果の高い講義であると主張しています。ほかにも、笑いは大人の記憶力を強化するとする研究もあります。

現実をそのまま伝えるニュースより面白い作り話のほうが記憶に残りますよね。高校で英語を教えているSarah Henderson氏は、教育情報サイト「Edutopia」でこう指摘しています。

ピュー・リサーチセンターの世論調査によれば、『The Daily Show』や『The Colbert Report』のようなユーモラスなニュース番組を見る人のほうが、新聞、CNN、『Fox News』、ネットワーク・ステーションなどでニュースを見たり読んだりする人よりも、内容をよく記憶しています。

科学が示す「ユーモアを利用する学習」の効果

大いに笑うことが情報の理解と記憶にこれほど良いのはどうしてでしょう。「ユーモアは、脳のドーパミン報酬システムを体系的に活性化することが、神経科学の研究により明らかになっています」とHenerson氏は言います。「さらに、ドーパミンは目的志向のモチベーションにも、長期記憶にも大切であることが認知力の研究により証明されており、幼稚園児から大学生に至るまで、あらゆる学習者の記憶力を向上させるには、学習にユーモアを適切に介在させることが有効であると教育学研究が示しています」

だから、次に何かを学習しなければならないときは、フラッシュメモリーカードやハイライトペンに手を伸ばすだけではいけません。どうしたら学習材料を楽しく学べるかちょっと考えてみましょう(たとえば、ボキャブラリーを覚えやすいようにおもしろい小話を作るのは1つの効果的なテクニックです)。楽しく学べると、学習効率が良くなるかもしれません。

The Secret Ingredient for Faster Learning? Laughter|Inc.

JESSICA STILLMAN(訳:春野ユリ)

Photo by PIXTA.