Pick The Brain:成功の形はさまざまあれど、「成功すれば幸せになれる」と誰もがどこかで思っています。
成功すれば望み通りの満足感が得られるような気がしますが、この考え方は実は人間の本質に反しているかもしれません。
幸福研究家であり『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラー作家であるShawn Achor氏によれば、脳の働きはドーパミンの影響下で良くなり、コルチゾールの影響下で悪くなる傾向があると言います。実は、「成功が幸福をもたらす」という考え方は、脳のそうした性質に反するものなのです。
ドーパミンが「幸福」ホルモンであることは既にご存じかもしれません。ドーパミンは良い感情、笑い、おいしい食べ物など、ポジティブな性質により体内で分泌されます。
そして、コルチゾールはドーパミンとは逆で、あらゆる形のストレスが引き金となり分泌されます。
ささやかなことでも達成したらそれを喜ぶことが大切です
普通は、何かを1つ達成するとすぐ次のことを始めてしまうので、そのことによる満足感は持続しません。それなのに、なぜ「成功」という抽象的すぎるコンセプトが、「幸福」をもたらしてくれると期待できるのでしょうか。結局、成功(達成)を目指して私たちがしていることは、幸福感に手が届きそうになるたびに、幸せを感じるのを先延ばしにしているようなものです。
大切なのは、目標を達成することではありません。充実感ばかりを持続させて、幸せを先延ばししすぎないことです。もし、マラソンランナーが、ゴールに近づくたびに、それを遠ざけられ続けたら、楽しくないでしょう?
ゴールインのテープを切る感覚をときどき持つのは良いことです。
Achor氏の研究が示唆するものがあるとするなら、人間の脳は、成功に到達するために、幸福感を一種のスプリングボード(きっかけ)として使うように進化を遂げたのかもしれません。2011年のTedx TalkでAchor氏は次のように語っています。
ポジティブな気分でいるときに、体の中にあふれ出すドーパミンには2つの働きがあります。幸福感を高めるだけでなく、脳の中の学習中枢のスイッチを入れるのです。そのおかげで、これまでとはまた別のやり方で外界に適合できるようになります。
本来、ドーパミンは、脳にとって機械の歯車に差す油のようなものです
幸福な状態にあるとパフォーマンスが向上するので、要するに成功しやすくなるわけです。Achor氏はこれを「幸福感のもたらすアドバンテージ」と呼んでいます。
それは以下の通りです。
- 脳の力が増強する
- 創造性が高まる
- エネルギーが増強する
ドーパミンの影響を受けている人たちには、上記のような効果が認められています。
とは言え、目標はあくまでも目標です、目標を意識しすぎて幸福感をないがしろにしないようにしましょう。
もしかしたら、人間が本当に追い求めるべきなのは、お金でも社会的ステータスでもなくて、幸福感なのかもしれません。
少し陳腐なことを言ってしまったでしょうか。でもこれは科学に裏付けられたことなのです。
幸福の見つけ方に関してはたくさんのアドバイスがありますが、私が1つだけ提案するとしたら、次のことです。
自分でコントロールできない状況や出来事のことで悩まないようにしましょう
ある状況から発生した結果が、まったく自分の手には負えないことだと気づいたら、その道の専門家に任せましょう。自分が関わるべき戦いでないなら、その分のエネルギーを、自分の影響力が及ぶことのために取っておきましょう。
この先の人生でどんなことに遭遇するのかは誰にもわかりませんし、前もって知りようもありません。でも、だからこそ生きる価値があるのです。
Why Happiness Comes Before Success |Pick The Brain
ALEX MOMBO (訳:春野ユリ)
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