Inc.:航空機製造のスタートアップ企業であるIcon Aircraft社が、設計に8年かかった水陸両用スポーツ飛行機「A5」の販売を開始しました。
10年近くに渡る期待の中、研究と開発、厳しいテスト飛行、そして1億ドルの予算を使い、同社はカリフォルニア州バカビルに拠点を置いています。Icon社にはすでに1,500件の事前予約が入って4億ドルを集めており、現在は3年以内に注文に対応できるよう、飛行機の生産を強化している最中とのこと。
米メディアInc.が選ぶ「2014年の最も大胆な25の企業」に選ばれた同社は、ニューヨークのハドソン川で、この水陸両用のスポーツ飛行機のデモ飛行にInc.を招待しました。運転するのは、スケートボードデザイナーのSteen Strand氏と共に2006年にIconを共同設立した、元アメリカ空軍の戦闘機F-16のパイロットでもあるKirk Hawkins氏でした。彼が操縦桿を引くやいなや、小さな2人乗りのA5はジョージ・ワシントン・ブリッジの上空1,000フィートに上昇し、時速100マイルでハドソン川の上空を南に飛行しました。
「緊急事態を乗り切れる完璧なパイロットを探すのではなく、スピンしないような飛行機を作ったらどうか」
「私たちの企業の根底にあるのは、真の航空機会社であるということです。それが戦闘機のパイロットでも、コマーシャルパイロットでも、スポーツパイロットであっても、私たちは空を飛ぶことが本来あるべき姿を目指します、こうした飛び方こそ、全てのパイロットが子供の時に触発を受けたものなのです」とHawkins氏は自由の女神像の周りを旋回し、ゆるやかにハドソン川に着水した後、語りました。
1,000ポンドの重量に34フィートの翼幅を誇るA5は、スポーツカーとスピードボート、そして飛行機が混ざったような乗り物です。余分な物を一切省いたコントロールパネルは従来の飛行機のものというよりも、車に似ています。Iconの顧客の40%を占める、パイロットではない人にとっても読み取りやすく操縦しやすいデザインです。このA5には空港が必要無く、また折り畳んでトレーラーにしまうこともでき、事実上誰でも空を飛ぶことができます[誰でも、とはいえスポーツパイロットのライセンスを持ち、19万7000ドル(約2400万円)の飛行機を買う余裕のある人ですが]。
またA5は、FAA(アメリカ連邦航空局)によって抗スピン性能の認定を受けた初めての、そして唯一の飛行機です。この技術は1980年代にNASAによって証明されていますが、これまでにFAAの基準を満たすことのできた企業は1つもなかったのです。
「どうして飛行機はまだスピンの問題に取り組んでいるのだろうか、と私たちは自問しました。緊急事態を乗り切れる完璧なパイロットを探すのではなく、スピンしないような飛行機を作ったらどうかと考えたのです」とHawkins氏は話しています。「つまり、パイロットがミスをしても飛行機がカバーしてくれるということです。飛行機はあらゆる警告を伝えてくれるだけでなく、乗客が危険な状態にあっても飛行機はコントロールを失わず、墜落することもないのです。警告しながらもただ飛び続けてくれるのです」
このA5に使われている他の重要な技術として、より安全で簡単な飛行を可能にする迎角のゲージが搭載されています。失速の危険がある場合はこのゲージが教えてくれます。このような装置は、航空機産業では初めてのものです。
個人が飛行機を所有する時代がもうそこまで来ている、とHawkins氏は話しています。Iconの製品のロードマップの詳細は教えてくれませんでしたが、最初の製品として販売されるのはA5だけだろう、とのことです。
「これから20年は、航空機の未来に大幅な変化をもたらすでしょう」とHawkins氏は、世界を変えるような革新に必要なのは意欲を持った人間だけだと話しています。「ライト兄弟の2人乗りの自転車が、飛行機が生まれるヒントになりました。空を飛ぶことへ情熱を持った2人の企業家が、現在の飛行機の始まりになったのです」
Take a Ride in the First Airplane That Anyone Can Fly|Inc.
Will Yakowicz(訳:コニャック)
Photo by Icon Aircraft