税や保険のことなど、お金の仕組みについて勉強したいと思っても、いざ学ぶとなると現実的には難しいもの。それらの制度は複雑で、年々内容が変わるからです。

だからこそ、「お金に関する基本的な知識を楽しく届けたい」と考えたというのは、『年収500万円で20年働く人 年収1000万円で10年働く人 損しないのはどっち?』(平林亮子著、幻冬舎)の著者。そこで本書では、難しくなりがちなお金の知識を、ゲーム感覚で身につけられるようにしているわけです。

きょうはスタートラインである第1章「超基本! 絶対知ってほしい5問」に焦点を当ててみましょう。当たり前すぎるけれど、なかなか聞けない、そんな話題を取り上げた章です。

円高と円安。日本人にとって海外旅行がお得になるのはどっち?

外国の通貨に対して相対的に円の価値が上がることが「円高」、円の価値が下がることが「円安」。頭ではわかっていても、「どっちがどっちだっけ?」と困難してしまう人も多いのではないでしょうか?

アメリカのドルを相手に考えた場合、1ドルが100円から120円になったら円安。1ドルを手に入れるのに、いままでより多く支払うということは、ドルに対して円の価値が下がったということ。逆に1ドルが100円から80円になったら円高。1ドルを手に入れるのに、いままでより支払う金額が減るので、それだけ円の価値が上がったということです。

だとすれば、海外旅行に行く場合はどちらがお得なのでしょうか? いうまでもなく海外旅行の際には、円をドルなどその他の通貨に換えることになります。円でドルやその他の通貨を買うということなので、外貨が安い方が得。つまり、お得なのは円高。

たとえば1ドルが80円程度だった2012年ごろなら、ハワイで10ドルのパンケーキを食べたら代金は800円。ところが1ドルが120円になった2015年だと、同じハワイのパンケーキが1200円になってしまうわけです。

では、輸入の多い企業と輸出の多い企業では、円安と円高、どちらが得になるのでしょうか? 輸入とは、海外の商品を購入すること。通常は代金をドルで支払うので、少ない円でたくさんのドルを得られる方が有利。つまり海外旅行と同じで、ドル安円高が望ましいということになります。

逆に、輸出とは日本の商品を海外に販売すること。海外と取引する際は、多くの日本企業はその代金をドルで受け取ります。ドルをたくさんの円に換金できる方が有利なので、輸出の場合は円安の方が望ましいということになるわけです。(14ページより)

10%値引きと10%ポイント還元。消費者にとってお得なのはどっち?

買いものに利用できるポイントは、値引きしてもらうような感覚で使えるもの。お得感があるだけに利用している方も多いと思います。しかし実際のところ、10%値引きと10%ポイント還元では、消費者にとってどちらがお得なのでしょうか?

答えは10%値引き。10%値引きの場合は、値引き額10円÷100円=10%となり、10%の値引き。一方、10%ポイント還元の場合は、値引き額10円÷110円=約9%となるので、約9%の値引き。つまり計算上は、10%値引きの方が消費者にとってお得だということ。

しかし、だとすれば企業にとっては10%ポイント還元の方がお得だということになります。さらには、ポイントを使うためにお客さんが再び来店してくれる、ポイントがあるためにいつもよりたくさん買ってもらえるなど、プラスアルファの効果も見込めるわけです。これが、ポイント制度のカラクリなのでしょう。(18ページより)

1年間で50万円ほどの買いものをする近所のスーパー。現在の割引率は1%、あと1万円買いものをすれば来年から2%になる。1万円使う、使わない、お得なのはどっち?

1年間で50万円ほどの買いものをするスーパーで、割引率が1%から2%になったら、どのくらいお得なのでしょうか?

1%のときの割引率=50万円×1%=5000円

2%のときの割引率=50万円×2%=1万円

ですから、お得になるのは両者の差である5000円。だとすれば、5000円得するために1万円を使うのはもったいない。結局、5000円の無駄ということになります。

1万円払う価値があるとすれば、それは1%から3%にアップする場合や、そのスーパーで100万円以上の買いものをする場合のみ。「割引率1%アップ」という言葉に踊らされてはいけないということです。(22ページより)

「単利7.2%で運用」と「複利7.2%で運用」。お金が10年で2倍になるのはどっち?

100万円の定期預金を組むと、毎年(もしくは半年単位で)利息がつきます。元本に対する1年間の利息の割合が年利率。このとき、預け入れた元本100万円に対して利息を計算する方法が「単利」。受け取った利息も元本に組み入れて利息を計算する方法が「複利」。

つまり年利7.2%なら、10年分の利息総額はもともとの元本と同額になり、預けたお金が倍になることに。しかし単利7.2%の場合は、倍にはならないということです。

なお、利息を年10%と仮定してそれぞれの利息を計算してみると、次のようになるそうです。まず単利10%は、

・1年目の利息=100万円×10%=10万円

・2年目の利息=100万円×10%=10万円

・3年目の利息=100万円×10%=10万円

という計算。一方、複利10%は、

・1年目の利息=100万円×10%=10万円

・2年目の利息=(100万円+1年目の利息10万円)×10%=11万円

・3年目の利息=(100万円+1年目の利息10万円+2年目の利息11万円)×10%=12万1000円

利息が徐々に増えていき、10年で総額約15万円の利息となるわけです。このように、過去の利息を元本に組み込んで新たな利息を計算する方法が複利。複利2.2%のとき、10年でもともとの元本と同じ額の利息になり、預けたお金が倍になるのです。

ちなみに複利の場合、何年で倍になるかは「72の法則」を使って計算することが可能。72を複利の利率で除すと、倍になるまでの年数がわかるということ。複利7.2%の場合は、

72÷7.2%=10年

複利10%の場合には、

72÷10%=7.2年

となり、7.2年で倍になるということがわかるわけです。逆に5年で倍になる利率を知りたいなら、

72÷5年=14.4%

と計算することも可能だという考え方です。(25ページより)

売りたい人が多い商品と買いたい人が多い商品。一般的に価格が上がるのはどっち?

一般的に、価格が上がるのは「買いたい」という人が多い商品。理論上、競争市場にある商品の価格は、その商品の需要(買いたい)と供給(売りたい)との関係で決まるもの。需要が供給を上回る場合は商品が足りないので価格が上昇し、需要が供給を下回る場合には商品が余るため、価格が下落するということ。

逆に、価格が上がれば需要が減って、供給が増えると考えることも可能。値段が高いと買いたい人(買うことのできる人も含む)は減る一方で、高く売れるのであれば、売りたい人が増えるはずだからです。価格が下がれば、需要が増えて供給が減ると考えられるのです。

また、買う人の経済力や購買力も価格を左右する要因。商品を欲しいという人がどれだけたくさんいても、彼らがお金を持っていなければ、価格は上昇しない可能性があるということです。

そういう意味では企業にとって、商品の価格をいくらにするかという「値付け」はとても重要で難しい問題。利益を得る必要はあるけれど、売れない価格を設定しても無意味。そこで、その商品を仕入れて販売するためのコストがどのくらいかかるのか(コストアプローチ)、いくらであれば市場で売れるのか(マーケットアプローチ)という両面から適切な価格を模索する必要があるわけです。(29ページより)


このように初歩的なところからスタートし、以後は預金や住宅ローン、税金、社会保険などさまざまな問題についても解説されています。2択問題を用いているため、とてもわかりやすいはず。

なおタイトルについての答えも、巻末でわかりやすく解説されています。気になる人は、手にとってみてください。

(印南敦史)