Crew Blog:ブログをやめようというブログを書くのはいささか滑稽ではありますが、マーケティングの状況は常に変化しています。その変化に適応できなければ、勝ち残ることはできません。
ブログは、忠実なファンの獲得や企業PRにうってつけの方法ですが、そこから結果を引き出す手段を持ちません。
多くの企業が、「ブログを始めなきゃ」と思い立ち、何も書かないよりは何か書いたほうがいいだろうという理由で、「○○のための10の方法」みたいな記事を書き始めるという罠にはまっています。
はっきり言って、これには何の意味もありません。
読者や潜在顧客が価値を置き、シェアしてくれるような記事をリサーチして書くには、かなりの時間を要します。しかし、多くのスタートアップにとって、時間は1秒を争うほどに貴重なリソースでしょう。
じゃあ、どうしたらいいのでしょうか?
多くのブランドが、広告は「押しつけがましい」と考えています。ウェブ業界の大物、ジェフリー・ゼルドマン氏も、こう言っています。
誰しも広告が大嫌いなので、サイトの上または右にあるサイドバーは見ないよう、訓練を積んでいます。
それでも、自分を目立たせて認知度を高め、正しい顧客を引き込むことは必要です。
つまり、マーケティングと思われないマーケティングが求められているのです。
顧客にシャベルを
先に価値を生み出してしまえば、人々からの注目が集まります。
このことは、研究でも明らかになっています。2人の研究者が、New York Timesの記事でシェアが多かった記事について調べました。
その結果、実用性のある記事(すぐに使えるアドバイスやヒント)が、単に面白い記事や驚きの記事よりもシェアされていることがわかりました。
実用的価値のあるストーリーにこのレベルの影響力があるなら、記事よりももっと便利なものに、この実用性を適用したらどうなるのでしょうか?
実際に、お客様が定期的に使えるツールを提供するとどうなるでしょう?
New York Timesのベストセラー『Youtility』の著者、Jay Baer氏はこう言います。
便利なマーケティングを作れば、人はそれにお金を払うだろう。
穴を掘る方法を教えるだけでなく、実際にシャベルを渡してしまえば、相手があなたを忘れることはないでしょう。
本人もマーケティングだと気づいていないのが最高のマーケティング
実用的なツールがマーケティングの鉄則と言われる一方で、「サイドプロジェクト」に取り組むことは、いまだに評判がよくありません。
次のような自問をして、諦めてしまう人が多いのではないでしょうか。
「ひょっとして、注意力散漫に見える?」
「マーケティングの努力を離れて、完全に無関係なサイドプロジェクトに時間をかける意味などあるのだろうか?」
しかし、マーケティングの背景において、私たちは「サイドプロジェクト」と定義されるものを、もう一度考え直す必要があります。
自社に価値を生み出すプロジェクトに取り組んでいるなら、価値を生むほかのプロジェクト(ブログなど)に取り組んでいるのと何ら変わりはありません。ウェブサイトやアプリのようなサイドプロジェクトは、マーケティングの新たな形であると言ってもいいでしょう。
アイデアを捨てる前に、目的について考えたほうがよさそうです。
それでは、SNSやすでに利用できる手段やネットワークを利用するのはどうでしょうか?
もちろん、それらも素晴らしい方法です。しかし、Baer氏が指摘しているように、SNSのような手段に依存すると、ほかのブランドやコンテンツだけでなく、顧客に近い人々との戦いを強いられます。あなたの会社のメッセージは、友人や家族の写真、近況などに紛れてしまうのです。
あなたの会社は群衆の一部となり、ノイズの一部となってしまうでしょう。
サイドプロジェクトなら、その群衆の中で目立つことができます。
当社「Crew」では、「Unsplash」「How Much to Make an App」「Moodboard」などのサイドプロジェクトそれぞれが、SNSや広告をすべて合わせた数よりも多くの顧客獲得につながっています。
実際、Crewへの1カ月のトラフィックの半数以上が、当社のサイドプロジェクトから飛んできたものです。
サイドプロジェクトのROIは、疑う余地がありません。「もしも」がなくなり、「いくら」という質問があるだけなのです。
最も効果的なサイドプロジェクトを作るには
最初に浮かんだサイドプロジェクトのアイデアに興奮して、すぐに飛びつかないようにしてください。便利なものを作るために、すべてのアイデアに時間と努力を投じる価値があるとは限らないのです。
そのツールは、一緒に働きたい人々が持つ問題を解決できるか?
役に立つブログ記事を何度も読み返すより、役に立つ商品を何度も使う可能性のほうが高いでしょう。
つまり、最初の質問は、「このツールでどんな問題を解決できるのか?」でなければなりません。
そして、「誰がそれを使うのか」。
Glitchのチームが「Slack」の初期バージョンを作ったときは、社内のチームコミュニケーションの課題解決が目的でした。
同様に、当社が「Unsplash」を作ったときは、良質で高解像度、かつ無料で使える写真を見つけるという、自分たちの問題を解決することが目的でした。
これらのプロジェクトの価値は、初期段階から明らかでした。なぜなら、自分たちが使いたいツールを作ったのだから。
構想中のサイドプロジェクトを自分が使いたいと思えるなら、顧客もそれを使ってくれるチャンスは高いでしょう。
自分のアイデアを、自分で試してみてください。
小さなことから始めよう
優れたツールはすべて、従来よりもずっとシンプルな方法で問題を解決します。
Unsplashの初期バージョンは、19ドルのTumblrテーマと、撮影会の残り写真を使って立ち上げたものでした。
2年後、Unsplashの写真は月に3億5000万回も閲覧されるようになり、Crewの参照元第1位になりました。
そもそもCrew自体が、「Wufoo」フォームと「Mailchimp」ニュースレターから始まったものです。
多くのリソースを投じる前に、最小限の方法で、アイデアを試してみてください。
シンプルに始めることです。
すでにあるものを使えるか?
サイドプロジェクトは、真新しい必要はありません。むしろ、まったく新しくないことだって十分に考えられます。
既存のツールにすでに盛り込んでいるリサーチとインサイトの方向性を変えるだけで、アイデアを実行に移せるのです。
ツールのMVPとして、ブログ記事を使って始めてはいかがですか?
貴社のコミュニティで反響の大きかったコンテンツはありますか?
それを使って、より深い価値をもたらすツールを作ることはできないでしょうか?
「How Much to Make an App」が成功したことで、私たちは潜在顧客が持つ同様の問題を探すようになりました。
そして、「How Much does a Website Cost」「App vs. Website」を立ち上げました。さらに、同様のプロジェクトが現在進行中です。
既存のフレームワークがあるので、これらのツールの立ち上げにはほとんどリソースを必要としませんでした。だから、やらない理由はありません。
これまでにやってきた仕事を、最大限に利用してください。
定期的なアップデートは必要か?
あなたの目的は、プロジェクトを動かすことのはず。ですから、今後のアップデートはまったく不要か、そんなに多くはいりません。それでも、価値を提供し続けることはできるのです。
自社のマーケティングプロジェクトをアップデートしたいと思ったら、まずはこう自問してみてください。
これを改良するのと新しく立ち上げるのでは、どっちが価値があるだろうか?
プロジェクトを立ち上げて反響が悪かったなら、それはそのままにして、また新しいことを始めればいいのです。
だって、サイドプロジェクトは、あくまでもサイドなのですから。
最近のマーケティングは、顧客にとって便利かどうかで決まります。そして、ハードルは上がり続けています。
ブログやインフォグラフィックス、ウェビナーなどは、かつてマーケティングの鉄則でした。しかし、ウェブサイト、アプリ、ツールなどがそれに取って変わろうとしています。
他人の真似は考えないでください。それをしても、よくてナンバー2にしかなれません。
顧客のために、どんな真の価値を生み出すことができるのか。
シャベルを渡して、掘る様子を観察してみましょう。
Kill your blog: Why side projects are the future of marketing | Crew Blog
Jory Mackay(訳:堀込泰三)
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