Pick the Brain:かつての私は、恐怖と不安が自分の中にどれだけはびこっていたか、状況を打破するまで気が付いていませんでした。今思えば、私の人生のあらゆる領域を、恐怖と不安が無言で支配していました。まるで足かせをされているかのように、安全地帯の中で日々を過ごすだけの余地はあっても、そこから先へ足を延ばすことができない状況だったのです。
ありがたいことに、ここ数年で状況は変わりました。その過程で、私は5つの重要なことに気が付きました。今回はそれを紹介します。また、私と同じように恐怖と不安に悩まされている人のために、それを断ち切ってポジティブな方向に突き進むための4つのステップも紹介させてください。
恐怖と不安を克服する過程で得た5つの気づき
気づき その1
牙の鋭い動物や武装した怒れる人に追われている状況でもない限り(その場合すぐに逃げるしかありません)、恐怖は「感情のメッセンジャー」に過ぎません。それが教えてくれるのは、不確かな領域に足を踏み入れたことと、安全地帯を乗り越えるすばらしい機会が手に入ったことです。恐怖を感じるのは健全であり、正常なことなのです。
恐怖が健全で正常であることに気づいた人は、行動を起こす前に「恐怖のない状態」を待つ必要がなくなるので、解放されます。さらに、恐怖で気持ちがいっぱいでも行動を続けることは、自分にとっても状況にとっても間違っていないことを意味します。
シンプルに言うと、人は怖いもの知らずには作られていないのです。誰もが恐怖を利用して前に進む能力をもっていて、それらを乗り越えることが、成長につながるのです。
気づき その2
プライベートや仕事上の経験から、ほとんどの恐怖や不安は(すべてではありませんが)、X(人、物、出来事、境遇、可能性)に対する自らの考えによって生み出されたものであることを知りました。
恐怖や不安は、今この瞬間に目の前で起きていることに基づくものではありません。心の声に対する感情的な反応なのです。
気づき その3
ほとんどの恐怖や不安は(すべてではありませんが)未来志向によって生み出されたものでした。人は、これから(1秒後、1時間後、1日後、1週間後、1カ月後、1年後)起こるかもしれない何かに対して、恐怖や不安を抱くのです。
気づき その4
恐怖や不安の根源が思考にあるということ、中でも未来志向から生み出されることを論理的に理解できるようになれば、力の源を見つけられたも同然です。なぜなら、思考は変えられるし、未来はまだ来ておらず、あなたの現在では「現実」ではないからです。
これが力の源である理由は、意識的にその思考プロセスを抜け出し(その方法は後述します)、今この瞬間に目を向けるだけで、すぐにでもその恐怖と不安を解消できるからです。もちろん課題もあります。それは、ネガティブ思考にならないようにしなければならないことです。人の心は、習慣的な思考パターンとネガティブな未来志向に陥りやすい傾向があります。でも、そのような考え方は、訓練によって取り除くことができます。
気づき その5
自身の心を支配しているのか、それとも心に支配されているのか考えましょう。自分の心はコントロールできますし、思考を変えることも可能です。ただし、それには練習が必要です。練習すればするほど、うまくできるようになるでしょう。
あなたの「現実」は、自身の思考によって作られるものです。それは、あなたのパラダイム(認識や枠組み)に基づくものでもあります。パラダイムとは、個人的かつユニークに、人生を感じ、選別し、解釈するときに用いるレンズです。
ですから、忘れないでください。あなたが感じている恐怖と不安は、目の前の「もの」によって生じているわけではありません。それは、その「もの」に対するあなたの気持ちのゆがみから生じているのです。恐怖や不安は「状況」ではなく、自身の「認識」の中に発生しているに過ぎません。
そのネガティブなサイクルを断つには自分を内側から変え、まったく新しいポジティブな考えをもつ必要があります。私たちは、それができるはずなのです。
気づき 6
新しいポジティブな考えをもつために、自分自身は「心」ではなく、「思考」でもないことを知っておきましょう。あなたは、自分の思考を俯瞰できる「自覚のある意識」です。これを知っておくことが恐怖や不安を克服する糸口になります。この重要な区別ができるようになるまで、恐怖や不安が消えることはありません。心の中のノイズとは「距離」を置き、とらわれないことが大切です。
自分は心や思考ではなく「自覚のある意識」であることを、今すぐ体験するためのシンプルな方法をお伝えしましょう。
- 目を閉じて、2分間自分の思考に意識を集中し、それを観察してください。
- 2分たったら目を開けて、どんな思考だったかを教えてください。「このブログが本当に私の役に立つのかを考えていました」「夕飯何にしようと考えていました」「今朝ゴミを出し忘れたことを思い出していました」など。
- 次に、この質問に答えてください。「あなたの思考を観察していたのは、誰、あるいは何でしたか?」
- 思考は、自分を見ることはできません。心は、自分を観察することはできません。あなたの思考を観察して言葉にできたのは、思考でも心でもない何かが存在したからです。つまり、そこにはあなたの知らない側面が存在しているのです。
- あなたの思考を観察していた「もうひとつの側面」こそが、あなたの「自覚のある意識」です。
頭の中のノイズがすべて(a)自分自身であり、(b)現実のものであると考えてしまうと、閉じたループにはまり、抜け出せなくなってしまいます。傷のついたCDのように、同じことを何度も何度も繰り返すしかありません。しかし、それ以外の選択だってできるはずなのです。
あなたは、自分が「思考を俯瞰できる自覚のある意識である」と気づいたその瞬間、思考を遮断して、状況を描き直す力をもてるようになります。そのためには、以下の方法で、自覚のある意識を利用してください。
恐怖と不安を断つ4つのステップ
これは、「ファクトvsフィクション(事実と虚構)エクササイズ」と呼ばれる方法です。これをすれば、自覚のある意識を強化し、未来志向の考えを断ち、心の方向性を前向きに変えることができます。
恐怖や不安を経験するたびに、これらを効果的に使えるよう練習しましょう。何度でも繰り返すことで、より大きな効果が得られるようになるでしょう。
ノートやジャーナルを常に持ち歩いてください。心の中にある恐怖や不安の声を観察しましょう。それに気づいたら、以下のステップに従います。
ステップ1
空欄を埋めてください。「今、私が特に恐怖または不安を感じているのは、__です」。空欄を埋める際、あなたの恐怖または不安に焦点を絞った正確なシナリオを挙げてください。あなたは今、頭の中で何をリハーサルしていますか? この不安をもたらしているのは、どんな想像が心に浮かんだからですか? できるだけ詳細に、頭の中を巡っている、すべての思考に対する答えを出しましょう。
ステップ2
次に、それを分析していきます。先ほどの記述に関する絶対的な事実を書き出しましょう。残酷なまでに、自分に正直になってください。たとえば、「今、私が特に恐怖や不安を感じているのは、失業中であり、楽しめるようないい仕事を見つけられないことを恐れています。すぐに仕事を見つけられないと経歴に穴が開くし、生活費を支払えないことが心配です」と書いたなら、この記述における絶対的な事実は、「現時点で失業中である」ことだけで、そのほかはすべて事実ではありません。
ステップ3
今度は、事実の上に重ねていた解釈を書き出してください。すなわち、1.で書いた内容のうち、2.で判明した絶対的な事実を除くすべてです。これから起こるかもしれないという予測や、事実に関してあなたが考え出した「ストーリー」など。それこそが、あなたが心の中に閉じ込めていた恐怖や不安のもとです。
ステップ4
ファクトとフィクションを分離したことで、現実と勝手な思考を見分けられるようになりました。これで、心が予想することは、自分のためにならないことがわかったと思います。それが、恐怖や不安の原因です。しかし、予想は、自分にとって有効であると感じているかもしれません。ネガティブな考えは、今は事実ではなくても、今後起こる可能性は非常に高いと主張したくなるかもしれません。でも、それこそが問題なのです。どんな問題にも、可能性は無限にあります。あまりにも多すぎるのでいちいち気にしていたら、打ちのめされてしまうでしょう。
今、あなたの心は、自分を小さく閉じ込めるシナリオを選び、恐怖と不安のサイクルを繰り返しています。ポジティブな選択ができる状況でも、ついネガティブな面を見てしまうのです。それは、あらゆる可能性に悪影響を与えてしまうかもしれません。今こそ、あなたの心に新しいことを教えるときです。パワフルになるための思考パターンを生み出すように、心にリーダーシップを与えるのです。自覚のある意識を利用して、ポジティブな考えをもてるように、この状況であなたが選択できるあらゆる視点を書き出してください。そうすることで、前向きな思考を生み出し、新しい未来予想を描くことができるでしょう。恐怖や不安であふれていたストーリーを、新しいストーリーで上書きするのです。
思考パターンの詳細分析を行い、ポジティブな新しい視点でそれらを上書きすると、パラダイムシフトが起こり、今よりももっと自由になれるでしょう。それは、人生を見つめるレンズを変えていく作業なのです。
4 Steps for Overcoming Fear and Anxiety | Pick the Brain
Bernadette Logue(訳:堀込泰三)
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