Inc.:「それ」を本当に理解している人はほとんどおらず、うまく使えている人はさらに少ないです。「それ」は、孤立しているチームリーダーや家庭崩壊している家族に欠けているものです。
「それ」とは何でしょうか。そう、「共感の質」のことです。
オックスフォード英語大辞典における「共感」の定義は「相手の感情を理解して共有する能力」です。共感の価値についてはしばしば耳にしますが、それに関する話題は、日常生活ではまだ珍しいため、ニュースなどで事例が流れると急速に拡散されます。
では、なぜ「共感」はそれほど珍しいのでしょうか。理由の1つとして、その特性が誤解されていることがあります。
共感は、それと密接に関連している「同情」と混同されることが多いです。同情は、相手を救いたいという思いやりに近く、それを示すのは良いことだとみんなが知っています。たとえば、同僚が愛する人を亡くしたら、さまざまなやり方で自分の気持ちを示すでしょう。
しかし、それで終わりです。同情は限定されていて、日常生活に影響を与えません。
共感はそうではありません。上述の状況で考えると、自分が親しい人を亡くしたときどんな気分だったか(あるいはそういう経験をしたことがない人なら、もしそういう状況を経験するとどんな気持ちがするかを)じっくりと思い出そうとするときに共感が生まれます。この出来事が、仕事や人間関係にどのような影響を及ぼすかを考えられるようになります。
そして、そこで終わりではありません。真の共感を示すには、その同僚が現在どんな気持ちなのか想像しなければいけません。そうすると、彼がこれから、独自のやり方でトラウマと折り合いをつけていくことに気が付きます。だから、彼がメールの返信に普段より時間がかかったり、仕事の業績が落ち込んだりしても、現在の状況を思い出し、しばらくはいろいろなことを大目に見て、心を癒やす余裕をあげられるでしょう。共感は、自身の行動に影響を与えるのです。
共感は「私の心であなたの痛みを感じる」と表現されてきました。
ここで、実用的な共感の使い方をいくつかご紹介しましょう。
- あなたがマネージャーなら、社員が問題や愚痴を抱えてやってきたら、「またか。今度は何だ?」という態度にならないようにしましょう。覚えておいてください。あなたも自分の抱えている問題に取り組んでいるときは同じように感じてきたはずです。「状況をマシにするために何ができるだろう」と自分に問いかけましょう。
- その問題がよく理解できないなら、わかるまでもう少し深く考えてみてください。不満のあるチームメンバーの側で、しばらく働いてみるのがいいかもしれません。この方法で共感を示すには時間がかかりますが、助けたいと思っている人にモチベーションを与えることになるでしょう。誠実にそれを実行すれば、相手の忠誠心を得ることができます。
- あなたが上司は理不尽だと感じている社員なら、なぜ上司がそうなるのか理解しようとしてみてください。その上司の仕事ぶりを褒めたたえる機会を探しましょう。真に迫ってくださいね。人に共感を示すと、相手にはそれに気づきます。そのうちに、相手は心を動かされて、あなたがしたのと同じことを相手もあなたにしようとするでしょう。
チームで仕事をするときは、さまざまな考え方が混在します。もちろん、誰もが自分の考え方が正しく、重要だと思っています。自分が抱えている問題は他人よりも深刻だと、困ったことにみんながそう思っているのです。
自分の考え方を伝えるために、けんかをするのではなく、積極的に共感を示してみませんか? 「ごめんね。ちょっとよくわからない。君が何を言いたいのか教えてくれる?」というような言葉を伝えるほうが、長い目で見れば良いのです。相手を理解するために努力すると、自然と相手も同じことをしてくれるはずです。
なぜならば、結局はどちらの考えも正しいからです。視点が違うだけなのです。そして、そこにこそ共感への鍵があるのです。
他人が自分に共感してくれるようにするには、まず自分が相手に共感することを学ばなければいけません。
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JUSTIN BARISO(訳:春野ユリ)
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