パートナーとケンカして、どうして気持ちを察してくれないのかと思ったことがあるでしょう。でも、あなたの気持ちがわかっていたら、最初からケンカにならなかったはずです。これが、「愛を伝える言語」というコンセプトの背景にあるアイデアです。愛情の表現方法や感じ方は人それぞれ。その違いを理解することが、2人の関係を支えてくれます。このシンプルな方法で、関係が大きく改善するのです。

この言葉は、長期的人間関係のカウンセラーであるゲーリー・チャップマンによって作られました。彼の著書『愛を伝える5つの方法』に書かれていることは、わかりきったことばかりかもしれません。全体的にふわついた(かつ、一部古風な)本ではありますが、これが流行したのは、内容が非常に理にかなっており、かつ効果的だからでしょう。コンセプトは非常にシンプルなので、理解するだけなら、本を読む必要はありません。この記事を読み終えるころには、コンセプトを理解できているでしょう。

『愛を伝える5つの方法』の概要

チャップマン氏は著書において、5つの愛の言語について次のように説明しています。

感情的な愛を表現する言語は、基本的に5つあります。これが30年間におよぶ結婚カウンセリングを通して私のたどり着いた結論です。これは、人々が感情的な愛を語り、また理解する方法が5通りある、ということです。言語学の世界においては、1つの言語の中に数多くの方言や言語変異が存在します。(中略)問題は、あなたが結婚相手の愛の言語を語っているか、ということです。

5つの言語について、それぞれの意味を簡単に紹介します。

  • 肯定的な言葉:愛情、称賛、感謝を言葉で表現する。
  • サービス行為:言葉よりも行動で愛情を示したり受け止めたりする。
  • 贈り物:愛や好意の象徴として贈り物をする。
  • クオリティ・タイム:中断や邪魔の入らない上質な時間で愛情を示す。
  • 身体的なタッチ:セックスや手を握るなど、身体的な接触を通じて愛情を感じる。

ほとんどの人にとって、重要なものは1つか2つに絞られるはずです。そして、その組み合わせは人それぞれ。科学的研究に裏付けされた理論ではありませんが、経験に関連付けられるため、多くの人にとってわかりやすい内容になっています。人によって愛情表現が異なることは誰の目から見ても明らか。これら5つの「言語」は、愛情表現を分類したものでが、知っておくことで他人を少しだけ深く理解することができます。

パートナーが何を大切にしているかを知ることは、大きな驚きです。たとえば、筆者は長年、恋人に小さなプレゼントをあげてきました。それらの贈り物にはたくさんの思いがつまっていて、サプライズで渡すのが好きでした。ところが彼はいつも、「おーいいね。ありがとう」と言ってその辺に置くだけ。期待していた反応が返ってきたことはありませんでした。私はプレゼントをあげることで「あなたのことを気にかけている」と伝えたかったのに、「おーいいね。ありがとう」という反応では十分でなかったのです。

でも、彼の愛の言語が「贈り物」でないことに気づいてから、すべてつじつまが合うようになりました。そして、彼への愛情は口に出さなければ届かないことを知りました。逆に、私が贈り物をするときは愛情の表現であることを彼も学んでくれたので、彼は以前よりもその意味を重視してくれるようになりました

自分にとって大切なこと

逆に、自分にとって愛情を意味しない言語を知っておくのも便利です。私の場合、「サービス行為」は重要ではないことがわかりました。たとえば、友人が空港まで車で送ってくれたとします。それは私にとってそれほど大きなことではないため、軽く扱ってしまうことが多いのです。同様に、友人のために何かをすることが得意ではありません。なぜなら、私自身が他人への奉仕に価値を感じていないから、他人にとっても価値がないと思っているのです。

このコンセプトによる人間関係の変化

パートナーが何を大切にしているかを知ることで、相手の気持ちに共感しやすくなりケンカの原因もわかるようになるでしょう。原因がわかれば、解決策も見つけやすくなるはずです。

愛の言語のコンセプトには、ケンカを減らすだけでなく、良好な関係を維持する効果もあります。たとえば、私たちは2人ともクオリティ・タイムに愛情を感じるので、そのための時間を確保することで、強い関係を築くことができますもし私たちが遠距離恋愛になってしまったら、「クオリティ・タイム」を言語としていない人よりもずっと、苦しい時間が待っているに違いありません。一緒に過ごす時間がないと、相手に無頓着になり、関係がよどんでしまうでしょう。

パートナーの愛の言語を知っておくことで、再充電が驚くほど簡単になります。それはまるで、2人の関係を改善するための裏技のようなものなのです。

当然、自分の言語を知っておくことで、うまく愛情表現できるようになります。私は、婚約者の誕生日には、めいっぱい思いを込めた贈り物をしていました。でも、彼にとってはクオリティ・タイムのほうが大切なことを知った今、そちらを重視するようにしています。何を買おうかとあれこれ考えるよりも、たとえば誕生日旅行の計画にエネルギーを注いでいるのです。

愛の言語は恋愛以外にも使える

愛の言語のコンセプトは、恋人どうしではない人間関係にも使えます。相手が何に重きを置いているかを知ることは、どんなシチュエーションにおいても重要なのです。

たとえば、弟がぜんぜん連絡をよこさないことに、私はずっと腹を立てていました。でも、家族の行事で顔を合わせると、長く有意義な会話が続くため、すべてうまくいっていることがわかりました。それに、弟は私が大切であると言ってくれるので、安心します。でも、再びそれぞれの生活に戻ると、相変わらず連絡をよこさなくなるので、私の気持ちは傷ついてしまうのでした。

でも、ようやくわかったんです。彼にとっての愛の言葉は、100%「肯定的な言葉」であり、「クオリティ・タイム」や「サービス行為」はゼロであったことに。私にはあまり理解できませんが、彼にとっては言葉こそが重要なのです。それがわかってから、弟が電話をかけてこなくても安心できるようになりました。

また、先日こんなエピソードがありました。父が、弟があまりにも連絡をよこさないことに不満を述べたのです。でも、弟はなぜそんなことを言われるのかがわかりません。

弟「電話で話すのが好きじゃないからしないだけだよ。なんでそんなことで傷つくんだろ」

私「連絡がないと、愛されていないと感じるからじゃない?」

と私が冗談交じりに言うと、彼はなるほどと笑いました。それ以降、少しは連絡をするようになったみたいです。

愛の言語が人によって違うことは、知っておく価値があります。また、同じ人物でも、相手によって変わることも。弟は、家族に対する言語と違う言語で、恋人には話しているかもしれません。私の場合も、家族や恋人とはクオリティ・タイムが必要ですが、友人には必ずしもそれを求めません。きっと、友人も私にそれを求めていないでしょう。

このコンセプトは、ビジネスにおいても有効です。ビジネス戦略家のMarie Forleoさんは、愛の言語のコンセプトが、ハッピーなチームを維持するための秘密兵器だと言います。リーダーとして、チームのメンバー各人が「評価されている」という自覚を持てる方法を見極めることで、それぞれのモチベーションを高めているそうです。

チャップマン氏は、職場にこのコンセプトを適用した続編『The 5 Languages of Appreciation in the Workplace』も執筆しています。ほぼ同じ内容ですが、説明が恋愛関係ではなく仕事での人間関係に置き換えられています。でも、この本を読まなくても、上記の5つの言語を職場環境に置き換えて、人間関係に対応することはさほど難しくないでしょう。


他人のことを理解し、共感し、一緒に仕事をするためには、相手にとって何が大切かを知ることがすべてです。人は、それぞれに違います。それぞれに異なる人生経験があり、それぞれに異なる背景を持っているのです。ですから、相手によってコミュニケーションの方法を変える必要があるのは当然でしょう。

愛の言語は、万能なわけではありません。たとえば、2人の間のお金の問題や親族間の問題、パートナーとの家事シェアの問題を解決することはできないでしょう。それでも、よりよいコミュニケーションには効果てきめんです。相手にとって大切なことを知り、素敵な人間関係を築いてください。

Kristin Wong(原文/訳:堀込泰三)

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