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現代生活の問題点は、仕事をこなしたり、旅行をしたり、SNSや実生活でたくさんの友人と交流したりするために、あまりにも自分を急き立てすぎて、生活を楽しむことができなくなっていることです。ある調査によって、50年前に比べて現代人の平均労働時間は減っていることがわかっています。それなのに、いまだかつて、これほど急かされているような気がする時代はありません。
これは、おかしなことです。職場で、あるいは友人や家族と楽しく過ごすためには、生活を味わう時間をもつ必要があります。そのことについて、TED Talksの中で、さまざまな芸術家や修道僧やジャーナリストが語っていますが、とりわけ、旅行ライターPico Iyer氏による「人生の歩みを緩める方法」は際立っています。こうした語り手たちの言わんとすることを、いくつか抜粋してご紹介します。
1. 生活を楽しむには、何もせず静かに座ることも必要
旅行ライターのPico Iyer氏ほど、場所に応じて視野を変えることに精通している人はいません。彼は『The Art of Stillness(静止するワザ)』と題するトークの中で、お気に入りの題材を掘り下げています。それは、日に数分、あるいは年に数日、人生で数年、何もしない時間を作り、静かに座って静寂に身を置くことによってのみ、知識を吸収したり処理したり、多忙な人生の中で得られるあらゆる洞察、印象、教訓を味わえるというものです。
旅をして最初に学ぶことは、正しい目をもたないと、どこにも魔法は見つからないということです。旅に怒りを抱いている人を連れて出かけても、食事について文句を言い始めるだけです。
結局、落ち着いて静かに座ることが、正しい目をもつための最善の方法であることに気づいたと彼は言います。
そのため、Iyer氏は年に何度か3日間の休みを設けて、都会の喧騒から離れるようにしています。「気の毒な妻を置き去りにして、上司から来た緊急に見えるメールをすべて無視して、友人の誕生日パーティも逃してしまうかもしれないことに、罪悪感を覚える気持ちはまだあります」と彼は言います。「しかし、真に静寂な場所に着くやいなや、ここに来ることでしか、妻や上司や友人たちと分かち合える、クリエイティブで喜ばしい視点が手に入れられないのだと悟ります」
2. 時には速度を落とすことも必要
「私たちの動きは、昔と比べてスピードが上がってしまいました」と作家のCarl Honore氏は「ゆっくり生きることと考え深さ」について語っています。
昔と比べ、読書が速読になりました。歩くのが早足になり、デートの時間までスピードアップしました。
こうしたことは、「健康のためにも、社会生活のためにも、家族のためにも良くない」とHonore氏は説明しています。彼は、幼い息子を寝かしつけようとしておとぎ話を読んでいるときに、つい速読をしている自分に気づいて、これを実感しました。それ以来、彼は自分の「内面にいる亀」と交信してきました。そして、「ゆっくり生きること」の伝道者になりました。その結果、幸福感が高まり、健康が促進して、驚くべきことに、今までにないほど生産的になったそうです。
そして、父と息子は寝る前のおとぎ話を以前よりずっと楽しんでいます。
3. 今、この瞬間に10分を使う
これを実行するのは大変です。ほとんどの人が、自分が丸々10分間、何もせずいたのはいつのことだったか、思い出すのに時間がかかるでしょう。それは、残念なことです、とマインドフルネスの専門家であるAndy Puddicombe氏は言います。彼はヒマラヤで何年も修行僧として暮らして、「今、目の前の瞬間をもっと大切にして理解すること」を学びました。「おかげで、もの思いにふけったり、気が散ったり、抑圧感に苛まれたりせず、今ここに存在するために必要なことやマインドフルでいる方法に価値を置くようになりました」と、彼は述べています。
自力でこれを学ぶために、修行する必要はないと彼は付け加えます。毎日の10分間から始めてください。
4 Lessons From TED Talks on How to Find Inner Calm and Happiness|Inc.
MINDA ZETLIN(原文/訳:春野ユリ)
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