体重を減らしたいときには、体重計に乗ってダイエットのはかどり具合を確認しますよね。でも実際のところ、あなたが減らすべきなのは脂肪です。その一方で、体脂肪率を測る方法はたくさんありますが、測定値の正確さは方法によってさまざまです。
体脂肪率を把握しておけば、ダイエット成果の確認に役立つだけではありません。BMI(肥満度指数)だけではわからないところまでチェックできるようになります。BMIは、医師などが太りすぎを判断する際に使っている指標ですが、およそ18%の人では体脂肪率との食い違いが見られます。筋肉が多い人の場合、あまり脂肪はないのに、体重だけを見て肥満と判定されるかもしれません。逆に、筋肉が少ない人の場合、BMIチャートでは「標準」でも、体脂肪率は高いという可能性があります。
結局、体脂肪率はどのように測定するのが一番いいのでしょうか? 今回は、現実的に自分でやれるなかで、一番正確に体脂肪率を計測できる方法は何なのかを検討していきたいと思います。
絶対確実な測定法は存在しない
実を言うと、一番正確な体脂肪測定方法を受けられる人は、めったにいません。一番正確な方法とは、死体解剖のことです。科学者たちは、解剖の結果を利用して、さまざまな体脂肪測定方法を研究していったのです。
逆に言えば、絶対に正確な方法は存在しないということです。非常に正確な方法はいくつかありますが、そうした方法でも、測定結果が大きく食い違ってしまうことがあります。体脂肪測定の精度に関する研究のほとんどは、アスリートではない白人男性を対象に実施されたものなので、それに該当しない人は、その点にも注意する必要があります。
水中体重法(水中体重測定法)
古くから使われてきた方法で、研究で用いられているさらに複雑な方法の基礎にもなっています。アルキメデスの原理を応用し、陸上での体重、水中での体重、身体に押しのけられた水の量を計算式に代入すると、体脂肪率が導き出されます。運が良ければ、10ドルほどで水中での体重を測れるかもしれませんが、たいていは50〜100ドルほどの費用がかかります。
この方法が成り立つのは、脂肪が筋肉や骨よりも軽いからですが、これらの組織の密度は、人によって違います。専門誌『Canadian Journal of Applied Sport Science』に発表された研究では、エリート級のサッカー選手の体重を水中で測り、標準的な計算式にあてはめたところ、一部の選手で体脂肪率がマイナスになってしまいました。原因はおそらく、その選手の筋肉と骨の密度が、計算式で想定している値よりも高かったからでしょう。年齢や性別、人種によっても組織の密度は変わります。
二重エネルギーX線吸収法(DXA)
水中体重法よりも新しく、標準的になっている手法です。医療では骨密度の測定に使われることの多い手法ですが、体脂肪の測定にも利用されています。被験者が検査台に横たわっているあいだに、機械で低線量のX線を照射して身体の画像を撮影し、それをもとに測定を行います。この方法では、骨や筋肉の密度を正確に推定できるので、それらの値を差し引くことで体脂肪率もわかります。費用は100ドルからで、病院によっては数百ドルになることもあります(米国では、保険は適用されません)。
ここで問題があります。水中体重法とDXAの測定値のあいだには、平均して約7%の誤差があると指摘するレビューが、専門誌『European Journal of Clinical Nutrition』に掲載されたのです。誤差はそれよりも小さいという研究もありますが、どちらが「正しいか」を決める方法はありません。ですから、精度についてははっきりしていないと思っておく必要はあるでしょう。
ボドポッド(BodPod/空気置換法)
エアープレチスモグラフィを用いた密度ベースの測定法で、水中体重法と同じ原理で機能します。身体の占めるスペースの大きさを測り、それを体重と比べることで、身体の中でどのくらいの割合を、密度の高い筋肉や骨が占めていて、密度の低い脂肪はどのくらいを占めているのか算出します。注意点は、水中体重法同様に、人によっては、体内組織の密度が計算式で想定されている値と違うことがある、ということです。費用はケースによって異なりますが、だいたい50ドルほどを見ておくと良いでしょう。
こうした測定法に、お金を払う価値はあるでしょうか? 個人的な意見を言えば、できるだけ正確な体脂肪率をどうしても知りたくて、かつその数値が本当に正確かどうかはわからないという事実を受け入れられる人なら、試してみる価値はあるでしょう。正直に言いましょう、これが現実なのです。
もう少し実践しやすい方法
でも、正確な測定値にこだわる必要はありません。測定値が正確でなくとも、同じ方法を何回か繰り返して結果を比較すれば、体脂肪率の変化を追うことは可能なのですから。体重が変わらず、一方で体脂肪が減っているのなら、正確な体脂肪率がわからなくても問題はありません。ここで大切なのは、体脂肪がうまく減っているということなのですから。
というわけで、もっとも実用的な測定法は、身体組成の変化を読み取ることができ、費用は安く抑えてあって、手軽に利用できるものということになります。毎日測定したいですからね。利用しやすい測定方法をいくつか紹介していきます。
皮下脂肪厚法(キャリパー法)
一番おすすめの測定方法です。ただし、測定値の一貫性は、測定を行う人の慣れに左右されます。毎回、皮膚のぴったり同じ場所をつまみ、同じ圧力をかける必要があります。うまくこなせるようになるまでには、50〜100回は実際に測ってみる必要があるでしょう。行きつけのジムでこの測定サービスを提供していて、いつも同じ担当者に頼めるのなら、ぜひともそれを利用してください。
自分で測定するのはおすすめしません。というのも、自分の身体をつまみながら、皮下脂肪厚計の目盛りを見るのは難しいからです。自己測定用の安価なキャリパーも販売されていますが、プロに測ってもらうほどの信頼性はないでしょう。
また、どの部位で測定するかを決める必要もありますし、測定が終わったら、数値を処理しなければいけません。体脂肪率の計算式はさまざまで、3カ所(胸部、腹部、太腿)を測定するだけのものもあれば、7カ所以上の測定が求められる計算式もあります。上半身と下半身では脂肪の量が大きく異なることがあるため、特に若いアスリートの場合は、太腿とふくらはぎの測定を必ず含めるとよいという研究もあります。
計算式を使って測定値から体脂肪率を推定するのではなく、単純にキャリパーの測定値から体脂肪の推移を追う方法がおすすめです。数値が上がったり下がったりすれば、脂肪の量が変わっていることがわかります。この場合も、それが「正確な」体脂肪率を表しているかどうかを気にする必要はありません。生体インピーダンス法(市販の体脂肪計を利用した計測法)
市販の体脂肪計は、脂肪の電気抵抗がほかの組織と異なる点に着目し、弱い電流を身体に流して体脂肪を測定しています。理論的には悪くないのですが、現実にはさまざまな要因のせいで、日によって数値が変動してしまいます。
たとえば、水分摂取の状況によっても、生体電気インピーダンスの値が変化することがあります。つまり、ワークアウトのはじめと終わりで、体脂肪の数値が変化する可能性があるというわけです。女性の場合、月経周期によっても測定値が変わります。この方法に頼るのなら、測定のタイミングは毎回、月経周期の同じ時期、1日の同じ時間とし、いつも同じ条件で(たとえば、月経の初日、朝食後、ワークアウトを始める前といった条件で)測定する必要があります。
使う装置のタイプも測定値に影響を与えます。フットパッドのついた体脂肪計では、電流は脚にしか流れません。手で持つタイプの装置の場合、測定に使うのは上半身だけです。また、いつも同じように装置を使っていても、なお測定値が変動することもあります。ですから、ダイエットで脂肪を減らしている手応えはあるのに、体脂肪計の数値があまり変わらないとしても、がっかりしないようにしましょう。
巻尺測定法
では、身体の各部位のサイズをもとに、体脂肪を計算します。この方法でもやはり、今までと同じ注意事項があてはまります。計算式が、自分とは違うタイプの人をもとにつくられている可能性があり、体型の違いによって結果が大きく変わることもあります。また、巻尺では筋肉と脂肪を区別できません。たとえば、太腿が何cmか太くなっていても、それが良いこと(筋肉の増加)なのか悪いこと(脂肪の増加)なのかはわかりません。キャリパーの場合は、皮膚をつまむと脂肪と筋肉がわかれるので、この点は問題になりません。
まとめ
一番正確なのは、専門機関で実施するいくつかの測定法ですが、費用が高額です。しかも、体脂肪率を正確に測れるとはかぎりません。費用のかからない方法で体脂肪の推移を追いたいのなら、手軽な割にそこそこ正確なので、キャリパー法がベストな妥協点といえるでしょう。でも、ダイエットのはかどり具合を知るためなら、昔ながらの手軽な方法もお忘れなく。服がゆるくなったとか、きつくなったかとかには、いつも注意しておきましょう。
Beth Skwarecki(原文/訳:梅田智世/ガリレオ)
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