15年以上ランニングを続けていますが、オンライン、GPS機能付き腕時計、スマートフォン・アプリなどいろいろな手段で自分の進歩をトラッキングしてきました。最初はあらゆるデータに夢中になりましたが、今では始めた頃と同じ、腕時計とメモを使っています。
ランニングにおけるテクノロジーの進化
始めの頃は、腕時計と初心者用プログラムを印刷したものを持って走ったものです。家に着くと、冷たい飲み物をゴクゴク飲んで、素早くシャワーを浴び、オンラインにその日のランニング記録を残しました。
10年後、友人からすばらしいテクノロジーを教えてもらいました。今自分がどんなペースで走っているか教えてくれる大きな腕時計です。それは驚くほど良いものでした。その冬、私はマラソンのトレーニングを始め、同じような機能をもつ腕時計を手に入れました。それは最高の相棒でした。走行時間、走行距離、走行速度を教えてくれましたし、スプリットタイムやラップタイムもトラッキングしてくれました。毎回進捗を確認でき、1㎞ごとのタイムチャートを作ったり、どこでスピードを上げたり、落としたりしたか正確にグラフにしてくれました。
さらに時間がたつと、もっとすばらしいことが起こりました。上記のようなことが全部スマートフォンのアプリでできるようになってきたのです。もちろん、私はスマートフォンを手に入れました。そして、RunKeeperのようなアプリを使いました。それらは、1㎞ごとの走行速度と残りの走行距離を教えてくれましたし、インターバル走のプログラムをやるときには、スピードを速めたり遅くしたりするタイミングを教えてくれました。そして、1日の終わりには、腕時計と同じようにデータ作成ができました。
でも、ランニングに真剣になればなるほど、データに興味がなくなってきました。そうした数字のほとんどはトレーニングの役には立ちませんでした。無害なものもあれば、目標を変更するようにそそのかしてくるものもあったからです。たとえば、あるレースで完敗したのは、腕時計で「正しい」数字を見ることに集中していたからです。そのとき自分の体調にもっと注意を払うべきでした。
テクノロジーとの関わり方
数字があると、それを「向上」させたくなるものです。一部の人は、データを山のように集めても、大事なことだけ優先して残りは忘れるというように、賢く使います。しかし、そうでない人は自分に適した「ほどほどの点」を見つけられません。これが、「明日は絶対にカロリーを1000まで落としてみせる」と、数字にとらわれたり、「計算上は走れるはずだったのに、走れなかったのが悔しい」などというような失望につながったりします。
たとえば、アプリがランニングの終わりに提示する、平均ペースのことを考えてみましょう。それはアプリが、ランニングを概算するのに使う数字の1つなので、意味のある重要な数字だと思い込んでしまいます。毎回ランニングをするたびに、その数字を下げたいと思うし、少なくとも時間をかければ下げられると思ってしまうのではないでしょうか。しかしその考え方は、長期的にはまったく良くありません。スローランはゆっくりであるべきですし、ファストランは、ウォームアップや回復時間を含むトータルの時間では計れません。
ランニングは1回ごとに設定した目標で計るべきであり、たとえその目標が数量化できるものではなくても、同様です。私は、イージーランならリラックスしながら走ることと走行距離が増えることに集中します。インターバルなら、それぞれの区間の感じをつかみつつ、一定の速度で着実に走ります。実は、ランニングから得られるフィードバックの多くは、時計で計れる数字ではなく、感覚的なものなのです。
そこに、グラフやチャートがあると役に立ちます。出来の良い日や悪い日、ケガをしている日、元気な日の記録がひと目でわかるからです。しかし、進歩することを望んでいるからこそ、データのせいで失望するときがあります。走るのがどれだけ「遅い」かをつきつけられたり、それ以外のダメな点に気づいてしまったりするのです。裏を返せば、数字で進歩がわかるとうれしくなるということですが、それは現実を把握しない限り意味のないことです。そういう数字だけに注目するのは本当に正しいのでしょうか。
私のローテク・ツール 1:紙と鉛筆
私はテクノロジーを完全に捨て去ったわけではありませんが、以前に比べて依存度は、はるかに低くなりました。最終的に私の選んだ測定ツールは、ストップウォッチ機能の付いた腕時計と紙のノートと鉛筆です。
トレーニングは、まず目標を設定して、どの数字がトラッキングする価値があるか決めるところから始まります。目標と進捗をチェックしておかなければ、何をトラッキングしても意味がありません。目標を1週間ごと、ランニングごとに細分化して紙に記入します。いろいろなフォーマットを試しましたが、下の画像にあるものが気に入っています。

私がしていることは、
- その週の目標を右上に書きます。たいていは大ざっぱに、「10㎞以上走ること」とか「休暇中も週に2回はワークアウトをすること」といったシンプルなことです。
- ページの下の方に曜日を書いて、予定しているランニングを、少なくとも重要なものについては、書き込みます。それぞれの行間を空けておきます。
- ランニングをするたびに、予定とは違っていても、実際にしたことを書きます。また、重要と思われる数字や走ったときの感じなど、意味のあるデータを書き込みます。たとえば、くるぶしに若干問題を抱えているのなら、痛みの感じ方を記録します。
- 左の欄には、ランニングごとに走った距離を書き出して、週の終わりに走行距離のトータルを出します。
- ランニングごとに目印をつけると、現在の状態がわかりやすくなります。良くない印が増えているなら、やる気がなくなってきているのかもしれません。
項目の少なさに注目してください。ペース平均値も地図も書いてませんし、タイムも、特定のペースで走ると決めたときだけ記録します。とはいえ、計画の現状を確認するために時間を使います。その逆はしません。
ここで使う数字は、目標を達成するのに必要なものだけです。たとえば、私の1週間の目標には以下のようなものがあります。
- ランニングの回数を着実に維持すること。週の走行距離を着実に保つか少し増やすこと。
- インターバルランニングをして、短距離の速度を高める。
- ランニングに満足して継続するモチベーションを維持する。
ここから、トラッキングすべきことは、週の走行距離、インターバルランニングのスピード、ランニング中の体調、ランニングをした回数だとわかりました。
私のローテク・ツール 2:腕時計
私にはもう1つローテク・ツールがあります。それはストップウォッチ機能の付いた腕時計です。たとえば、インターバルランニングやレースの前にタイムトライアルなどをするときなど、タイムを計るのに使います。
腕時計は、ほとんどのランニングで十分働いてくれますが、特にいくつかのことに優れています。1つは超短距離のインターバルランニングです。30秒-20秒-10秒を使ったランニングをするときには、ストップウォッチ機能のある腕時計を使います。毎分0秒からジョギングを始めて、30秒でスピードを上げ、50秒で全速力を出します。アプリでは、これほど短い時間のセットをするのは難しいようです。
シンプルな腕時計は、本気で時間を気にしなければならないときに1番使えます。長時間を計るときにはそうでもないですが、2、3分を計りたいときにはとても役立ちます。
腕時計にはできないことは、ワークアウト全体の価値を左右するラップタイムを記憶することです。私は、携帯電話のメモにラップタイムを書き留めるか、予想したタイムより早いか遅いかだけを記録しています。たとえば、「5秒速過ぎる、8秒遅すぎる、10秒遅すぎる」と書くだけで、タイムが遅くなっていることがわかります。
それでもランニングするときは携帯電話を持参する理由
ランニングするときにも携帯電話を持っていきますが、データを残すためではありません。何に使うかと言えば、
- 安全とナビ:GoogleのPinpoint Location Sharingを使って、緊急時に夫が私の居場所がわかるようにしています。ほかにも、困ったときに電話で助けを呼ぶこともできますし、GoogleMapやPDFで保存してあるトレールマップの助けを借りて道を調べることもできます。
- 音楽:退屈なランニングをいくぶんマシにしてくれます。
- 具体的なデータを記録する:新しいルートを走るときは、アプリを使って距離をトラッキングします。
アプリで距離を測るときは、通知をオフにしてランニングが終わるまで忘れるようにしています。それから、重要な数字だけをメモに書き留めます。
GPSやランニング・ウォッチは、通信速度が重くなったりして、使い勝手が良くないときがあります。ほかにも距離の測り方を知っておくと良いでしょう。車か自転車でそのルートを走ってみる、ひもを使って地図上で計るなどの方法があります。
結局、トラッキングは目標達成のためのものでしかありません。だから、必要のないことはしなくても良いのです。アプリを使わない、あるいはデータを厳選して使うようにすると、集中してトレーニングできるでしょう。
Beth Skwarecki(原文/訳:春野ユリ)
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