Inc.:ビジネスでもアートの世界でも、クオリティ(質)とクオンティティ(量)は別物で、反比例の関係にあると教えるスクールがあります。つまり、創造する量が多くなれば、作品の質にこだわる時間がなくなり、創造する量が少なくなれば、完璧な作品に近づける時間がたくさんできるという考えです。

上記のような白黒はっきりさせる考え方に説得力があるのはなぜでしょうか? それは、考え方がシンプルでたいていの場面に当てはまるからです。しかし、実際には、クオリティが求められる仕事の創作プロセスは、クリエーターやプロジェクトによってさまざまです。クオリティとクオンティティが対抗するものであると結論づけるのは簡単ですが、実はそんな考え方をする必要がないことは明らかなのです。

作家のスティーヴン・キング氏は先日、New York Timesに発表したエッセイの中でこのことについて言及しました。

まず彼は、500冊以上の著作を持っているにもかかわらず、作品の多くが容易に忘れられてしまう作家数人の名前(もしくはペンネーム)を挙げました。そして、この法則に関する例外を示しました。まずアレクサンドル・デュマです。彼は『モンテ・クリスト伯』および『三銃士』の著者として有名ですが、しかし、これらは250にのぼる彼の作品のうち、たった2冊に過ぎません。また、 SF作品界のレジェンドであるアイザック・アシモフは、有名な著作がたくさんありますが、全体では500冊を超える本を書いています。

キング氏は言います。

クオンティティがクオリティを保証するなんて正気で論じる者はいないが、クオンティティはクオリティを生み出さないと言うのも、無意味かつ不適当だと思われる。

アートの世界ではクオリティは非常に主観的です。ビジネス上でも、イノベーション・プロジェクト(革新的な企画)の初期段階などで、主観に相当するものが存在します。あなたが、今後世界がどう変わるのか考えながらたくさんのアイデアを投げているとき、それらのクオリティは、最終的にどのように評価されるのかわからないのです。

イノベーションが生まれる過程にある、クオリティとクオンティティの関係と関連性には探求する価値があります。

Harvard Business Reviewの記事で、コンサルタントのGary Hamel氏とNancy Tennant氏は、イノベーションについて考えるときには、クオンティティの基準である「インプット」と「スループット(処理能力)」の両方を追跡検証すべきだと議論しています。

「インプット」は、イノベーションに費やされた月ごとの金額および従業員の労働時間で、これには整理前のアイデアが生まれるまでのトータルのクオンティティも含みます。「スループット」には、アイデアが軌道に乗ったあとのクオンティティとそのクオリティが含まれます。

Stephen King: Why Quantity Matters for Creativity|Inc.

ILAN MOCHARI(訳:コニャック

Photo by Shutterstock.