はじめまして、ファイナンシャル・プランナー(FP)の吉武です。FPを始めて約3年で、これまで500人ほどの方のプランニングをしてきました。
お客さまは20代の方も多いのですが、比較的東京は貯蓄をされていない人が多いという印象があります。私も20代なので、「若いうちは沢山お金を使いたい」という気持ちはわかります。誰もが貯蓄すべきかどうかはさておき、たくさんの方々にお会いしてきた経験上、お金は「使い方が上手な人の所に集まっている」という印象があります。
お金の使い方が上手な人は、自分のお金を安売りしていません。経営者や投資家の中でも、お金持ちほどシビアです。よく「金は天下の回りもの」「若いうちは投資するべき」という言葉のもとにバンバンお金を使われる方もいますが、お金は「投票券」です。良いも悪いもすべてダイレクトに自分に跳ね返ってきます。
「なかなかお金が貯まらない」という人に意識してほしいのは、「貯め方」を考える前に、そもそもの「使い方」を見直すのが大切だということ。「オシャレなオフィスで起業したい」「ハワイで豪勢な結婚式がしたい」「海が見える庭付きマイホームが欲しい」「子どもに留学させたい」「親孝行したい」などなど、使いたい事とその期限が明確な人は、貯め方も上手です。
この記事では、20代のうちから意識しておきたいお金に対する考え方と、貯蓄する上で重要な、生活費をコストカットするためのアイデアをお伝えします。

「いついくら使いたいか」。逆算思考が支出管理のコツ
25歳の方が28歳で「300万円の挙式・披露宴」をやりたいのであれば、彼女と併せて毎月約8.3万円を貯める必要があります。さらにオプションをつけていくと、どんどん予算は高くなります。35歳で3000万円の家を買いたければ、頭金を2割入れるとして600万円、10年間で毎年60万円の貯金が必要となります。
このように「いついくら使いたいか」を決めれば、あとは[収入-支出=貯蓄]ではなく、[収入-貯蓄=支出]と考えることができるようになります。その上で、「貯蓄するために今の支出からなにが削れるのか」を考えてみてください。
ではここで、「一年後に車の頭金60万円を貯めたい」という編集部の開發さんの月の収支を例に、支出を減らすためのヒントを説明します。

現在の毎月のキャッシュフローが+3万4900円ですので、この金額をすべて貯蓄に回した場合、1年後に貯まる金額は41万8800円になります。
1年後に60万円にするためには毎月5万円の貯蓄が必要ですので、現在の収支から1万5100円分の支出を削減出来れば、目標達成という事になりますね。
では、現在の支出のうち削れるものはどれでしょうか。
○合計:25万2600円
○家賃:6万600円
○食費:4万円
○光熱費:8500円
○交際費:3万5000円
○雑費:5000円
○通信費:8500円
(内訳)
・携帯代→4500円
・ポケットWi-Fi→4000円
○ウェブサービス:3000円
(内訳)
・動画サービスⅠ:500円
・動画サービスⅡ:1000円
・ゲームアプリ:500円
・漫画アプリ:1000円
・奨学金の返済:3万5000円
・社会保険など給料からの天引き:5万7000円
節約のポイントは、まず「何に対して払ってるのかよく分からないお金をなくす」ということです。
たとえば携帯電話代。携帯電話は基本料金や通話料、端末代やオプション等、さまざまな内訳で構成されているので、不要なものはすべて省いたプランにしましょう。
開發さんは現在スマホを契約しており、電話はほとんどされないということなので、MNPでauのフィーチャー・フォンへ乗り換えます。「プランEシンプル」「毎月割」を利用すれば、余分な料金を省いた上で特別割り引きだけを残す事ができ、1カ月たったの2円で使用できます。乗り換え前のスマホはWi-Fiルーターを利用して無料で使用できますので、フィーチャーフォンとスマホを持つ事によって、役割を分けて安くできました。1カ月4498円、年間5万3976円の節約です。
次に電気代です。電気料金にプランがある事をご存知でしょうか。生活に合ったプランを設定する事で、電気代を節約することができます。開發さんの場合、平日昼間はほとんど家におらず、休日も外出している事が多いようなので、「深夜電力」というプランを利用することで、毎月約1000円安くなりました。これで年間1万2000円の節約です。(2016年3月31日に深夜電力プランは終了しました。)
続いて食費です。食費の中の内訳を見ると特に、自動販売機で購入する飲料代が大きい様でした。開發さんは毎日ペットボトルや缶ジュースを2本買われていたので、水筒を持参する事で1カ月9000円、年間10万8000円の節約です。
次にウェブサービスです。ウェブサービスの会員費はクレジットカードなどで契約されているものが多いので、何にいくら払っているのか把握できなくなっている方が非常に多いです。開發さんも見直してみると、現在は利用していない「動画サービスⅡ」が契約したままになっていました。こちらを解約することで1カ月1000円、年間1万2000円の節約です。
合計で1カ月1万5498円、年間18万5976円の節約です。
浮いたお金とあわせて毎月5万円は、別のお金に使わない様に、給料が入ったら定期預金など自動で貯蓄に回るような仕組みを利用しましょう。
これらはあくまでコストカットの一例ですが、このように毎月の生活費を見直すことで、必ず無駄な部分、削れる部分が見つかるはずです。
※ここで紹介したサービスの金額は、あくまで目安となります。
貯蓄できるタイミングとは?

たとえば将来結婚して子どもが生まれると、当然、教育費がかかります。子どもが高校、大学と進学していくのであれば、徐々に固定費は上がっていくでしょう。
子どもが生まれる前までが、貯金のゴールデンタイムです。この期間を逃してしまうと、どんどん日常生活へシワ寄せが来ます。
また、親の介護という問題に遭遇する可能性もあります。いずれは自分の子ども、親、配偶者の親の生活までも支える必要が出てくるかもしれません。先のことはわからないからこそ、何にお金を使っていくべきかよく考える必要があるのです。
先に将来のビジョンを考えておくと、その後打てる手がかなり増えていきます。逆に行き当たりばったりの生活をしていると、どんどん選択肢は狭まってきてしまうかもしれません。
さまざまなリスクを考慮した上で、コストカットを実行し、理想の状態に近づけていくという点で、家計も会社経営も同じです。会社の経費が何に使われているのか、従業員に説明できないような会社は危険ですよね。「今、何にお金を使っているのか?」「これから、何のためにお金を使うのか?」をしっかりと考えてみてください。
(吉武亮)
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