敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ第91回。前回の「Credit Karma」CEOのケン・リン(Ken Lin)氏に続く今回は、ポッドキャスト「New Tech City」でホスト兼編集長を務めるマヌーシュ・ゾモロディ(Manoush Zomorodi)さんにインタビューしました。

New Tech City」は、ニューヨーク市営ラジオ局「WNYC」が運営するポッドキャスト。私たちのデータを追跡しているユビキタスサーベイランスから宇宙旅行の最新情報まで、さまざまなテクノロジーと私たちの生活の関係を取り上げています。

同局は今年、「Bored and Brilliant」(退屈で頭脳明晰)プロジェクトと呼ばれる実験を行いました。頻繁なスマホチェックをやめてデジタルワールドから離れることで、認知感覚とクリエイティビティを伸ばそうという試みです。果たして、成果はあったのでしょうか?

編集長のゾモロディさんに、プロジェクトの成果のほか、ご自身の仕事術などを聞きました。

氏名: マヌーシュ・ゾモロディ(Manoush Zomorodi)

居住地:ブルックリンの自宅とマンハッタンの職場を行ったり来たり。

現在の職業:WYC「New Tech City」ホスト兼編集長。2児の母

現在のコンピューター:MacBook Airの大きい方。それを持って地下鉄で通勤するのが嫌なので、小さい方がほしいと思うこともあります。iPad用のキーボードも持ってますが、似て非なるものですね。

現在のモバイル端末:iPhone5

仕事スタイル:モーレツに

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

「iTunes」「Stitcher」「Overcast」、WNYC独自のアプリなど、オンデマンドの音楽アプリです。これらがないと、家に引き込もって、ジョギングにも行かないでしょう。まあ、ポッドキャストがもっと寒天に見つかってシェアしやすくなるといいなあ、とも思います。

カレンダーアプリも欠かせません(当たり前ですね。でも、子どもたち、同僚、仕事関係など、9つのスケジュールを管理しているので)。

Yahooメールのアカウントを使ってGoogle Docsにログインしているので、少し混乱ぎみです。(同僚からのプレッシャーで)Gmailを使うことにしたのはいいんですが、新しいGoogle IDを持つことになってしまって。今やGoogleは、私を2人の人間と見なしているようです。そうやってGoogleのデータをもてあそんでいる感覚は好きなのですが、同じブラウザで同時にYahooメールとGmailにログインできなくなってしまっているのが問題です。今、考えているのは、私の古いメールをすべて移行して、アーカイブしてくれて、トラッキングをせず、新しいアドレスを皆に教えた途端につぶれてしまわない有料サービスです。この難問への解決策を求めて、いつも米Lifehackerをチェックしています。今のところ、既存サービスに満足している人はいないようですね。私は、アラン・ヘンリーさん(米Lifehackerライター)を信頼しています。

読み物には、クレイジーなほどに「Pocket」を使っています。なぜなら、あきれるほどたくさんのニュースレターを購読していて、それらすべてに目を通したいと思っているので。Pocketから送られてきたメールによると、私は昨年、トップ0.1%に入るヘビーユーザーだったそうです。ひょっとしたら全員にそう送っているのかもしれませんが。でも、彼らが本当にユーザーに伝えるべきなのは、保存した記事のうち、実際に呼んだ本数ではないかと思います。そうすると、私の数字はかなり低くなると思います。その理由のひとつは、Pocketの整理方法が難しいから。私には、昔ながらのフォルダがあれば十分です。

ホストとしてアイデアを見つけるために、たくさんの記事を読みます。さらに、インタビューの準備としてもたくさん読みます。週に1つのエピソードを放送していますが、1エピソードにつき2~3回のインタビューを行なっています。私はビジュアルを重視するタイプなので、タグだけでは満足できません(だからGmailが合わないのかも)。それに、KindleではPocketを使えないので、いまだに電子書籍リーダーを買ったことがありません。このところ、後で読みたいPocketの記事をEvernoteに送信するシステムをセットアップしようとしています。どういうわけか、Evernoteと私はフィーリングが合ったためしがありません。他人がEvernoteを使っている記事を読むのは好きなのですが、私にはPocketとの違いがわかりません。Evernoteと私はただの知り合いで、Pocketと私は恋人なんです。

Ira Glass氏が昨年のHow I Workでも言っていたように、私の番組は「Google Docsでも放送されて」います。各番組の「Scripts」フォルダに、すべてのリンク、インタビューの書き起こし、メモ、アイデアを記したドキュメントファイルがあります。おかげで、書き始めるときにはすぐにすべてを閲覧できます。

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何よりも好きなのが、ホワイトボードとポストイット。1年前、トヨタの効率化に関する大御所による生産性改革研修を受けました。そのときに、目の前にアイデアを見えるようにして、進んでいるのか遅れているのかをわかるようにする必要があることを学びました。それから、アイデアを可視化するための大きなホワイトボードと、ワークフローを可視化するためのカレンダーを入手して、1番組につき1枚のポストイットを使って進捗管理しています。オンエアが終わると、ポストイットは「Wall of Satisfaction」(満足の壁)に移動して、めでたしとなります。ですから、大きなポストイットも好きですね。私は、ほとんどのオフィス用品を愛しています。

── 仕事場はどんな感じですか?

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私たちのチームは、局内に3つのデスクからなる「ポッド」を作っています。ラジオ関係者はおしゃべりな人が多いので、うるさくてオフィスで書き物はできません。ですから、番組の台本は、たいてい週末に書いています。場所は、コーヒーが飲めて、Wi-Fiが強力で、買い物と仕事を一緒にできてしまうホールフーズ・マーケットか、日当たりのよい我が家の寝室で、大きなソファで丸まって書くかのどっちかですね。そうそう、ある日、パソコンを打つ手を止めて外を眺めてたんです。そしたら、木にたくさんのオウムがいて、凍りかけのベリーを食べていて。一瞬、彼らと顔を見合わせてから、仕事に戻りました。

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── お気に入りの時間節約術は何ですか?

ニュースレターでのやり取りが非常に多いので、それ以外の時間はほとんどインターネットを見ません。「This」「Pocket」「Mediabistro」「Today In Tabs」「MediaREDEF」「NiemanLab」「The Conversation」「Everything Changes」「Caitlin Dewey」「HotPod」「WNYC」「Next City」「Gary's Guide」「#AwesomeWomen」「The Ann Friedman Weekly」「Real Future」などなど(大事なものが漏れていたらごめんなさい)。これらだけで、十分に情報収集ができています

── 愛用中のToDoリストマネージャーは何ですか?

私の頭の中は、ToDoリストマネージャーのことでいっぱいです。ここ何年も、「リマインダー」と「Omnifocus」の間にあるスイートスポットにぴったりのアプリを探しています。「Wunderlist」の見た目が大好きなので、それを愛用したかったのですが、機能が十分ではありませんでした。一方で、機能が充実していても、見た目が悪いものがたくさんあります。そのあたり、Lifehackerの記事をたくさん読んでいます。10個以上は試したかな。今のところ、「Todoist」に落ち着いています。あまり圧迫感のないGTDであり、賢すぎないところが魅力でもあり。タスクの優先順位づけと繰り返しができて、それから、翌月あるいは好きなときに延期できるのが気に入っています。1週間のタスクを一覧にしたり、簡単に動かせるのもいいですね。子どもができてから、ずいぶん忘れっぽくなりました。リマインダーを書いてリュックに入れておかなければ、子どもたちが図書館で借りた本を返せないかもしれません。

── 携帯電話とPC以外で「これは必須」というガジェットはありますか?

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ほかのガジェットは使ってません。できるだけ、シンプルライフを送りたいので。子どもたちの手元は、両家の祖父母からもらったオモチャであふれているし、私と夫はあきれるほどの本と雑誌を読むので、それ以上のものは必要ないですね。

── Bored and Brilliantプロジェクトは、長い目で見てあなたのガジェットへのアプローチに影響を与えたと思いますか?

はい。できるだけポケットにスマホを持ち歩き(それがChallenge#1でした)、退屈だからという理由や強制的なメールチェックではなく、目的を持って見るようにしています。「2Dots」はスマホから消しました。疲れたりストレスを感じると、ついそれにすがってしまうからです。再インストールはしてませんが、代わりに「Pinterest」にはまっています。1日中書いたり聴いたりしていると、視覚的な刺激に飢えてきます。やっぱり、また何かの雑誌を購読しようかな。

── 日常のことで「これは他の人よりうまい」ということは何ですか?

容赦ないほどに効率的になれます。それがいいときもあれば(誕生日パーティの計画や旅行の計画など)、悪いときもあります(会話や複雑なアイデアの説明など)。テレビニュースのプロデューサーを何年もやっているうちに、極限まで無理をすることと人よりも多くの仕事をこなすことができるようになりました。残念ながら、これはバーンアウト(燃え尽き症候群)にもつながるのですが。自分のエネルギー管理がいかに重要かを、身をもって学んでいます。

── 仕事中、どんな音楽を聴いていますか?

Spotifyで「Focus」プレイリストを聴くこともありますが、たいていの場合、私がヘッドホンをしているのは「邪魔しないで」というサインのためか、生のインタビューを聴きながら編集しているときかのどちらかです。WNYCの生放送でBrian LehrerLeonard Lopateの代理を務めるときは、前日に番組を聴き込み、彼らのリズムやペースを思い出します。熱くなりすぎて、リスナーを怖がらせたくないですからね。

── 現在、何を読んでいますか?

もう長いこと、Appleのデザイナーであるジョナサン・アイブに関するNew Yorkerの記事を読んでいます。1万7000ワードもあるので、読み切らなくてもいいと自分に許可を与えていますが、ジャーナリストのIan Parkerの書く穏やかな世界観が美しくて、また読みたくなってしまうのです。Nick Carrの著書『The Shallows』、Clive Thompsonの著書『Smarter Than You Think』も読み直しています。あとは...たしか、空港で買ってまだ読んでない女性向けフィットネスマガジンもあったかな。もっとタンパク質を取らなきゃと思っていて、その雑誌が役に立つかなと思って買ったんですが、25歳の頃、ジムに通い過ぎていたことを思い出しただけでした。

── あなたは外向的ですか、内向的ですか?

パーティに行くぐらいだったら家族4人での夕食を優先します。人脈作りのための飲み会は苦手です。私の秘密兵器は夫。彼は私よりもずっと社交的で、世間話が得意です。よくしゃべる子どもが2人いて、仕事でも話しているので、私の内に秘めた内向性はいつも奪われているような気がしています。時には、内向的な自分に静かな時間をあげることも必要です。そうでもしなければ、外向的な側面が激しくなりすぎてしまいますから。

── 何で充電していますか?

去年の夏から、7年ぶりにトレーニングを再開しました。二の腕の力こぶも気に入ってますが、気分をリセットできるのがいいですね。子どもが生まれるまでは、週末といえばソファで昼寝をするか新聞を読むかのどちらかでした。今やそんな生活は幻想でしかなく、週末は掃除機をかけています。

── 睡眠習慣はどのような感じですか?

夜10時に寝て、朝6時に起きるように心がけていて、週に4日はそれができています。寝る前は新聞を読みます。就寝前1時間はスクリーンを見ないことにしているのですが、夫と私が大好きなテレビ番組「High Maintenance」をやっている時間なので、とてもつらいです。朝起きて最初にすることは、ケータイを見ること。それは、視覚的なエスプレッソのようなもので、ブルーライトが私の目を覚ましてくれます。怠け者なので、本物のコーヒーを作りに行くことはしません。

── 仕事関連でもそれ以外でも、夜中に考え事で目が覚めてしまうことってありますよね。あなたを午前3時に目覚めさせる考え事って何ですか?

実存主義です。死という恐怖は、誰にでも訪れます。そのことが、午前3時に私を目覚めさせるのです。30代に家族を持ち、40代は自分のアイデンティティを見つける時期だとしたら、50代は人生と非永続性の期間にしたいと思っています。

── あなたが受けたものと同じ質問をしてみたい相手はいますか?

ロックシンガーのデビッド・ボウイです。

── これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

BBCの海外ニュース担当の偉い人に、こう言われたことがあります。「上司に問題を持ち込むな。解決策を持ち込むんだ」と。自営業なら、このアドバイスは2倍効いてきます。

── その他、読者に伝えたいことがあればどうぞ。

何かに落ち込んだり打ちひしがれたとき、必ず聴く曲があります。それは、Arctic Monkeysの『Why'd You Only Call Me When You're High?』です。この曲は、今よりももっと自由があって、クールで少し危なっかしく生きていたころのことを思い出させてくれるんです。2分41秒間のタイムトラベルみたいなものですね。これ、地下鉄の駅からうちまで歩く時間とぴったり同じなんです。タイムトラベルから戻ったら、夕飯を作ります。

Andy Orin(原文/訳:堀込泰三)