フリーランスという言葉に憧れを抱く人は多いのではないでしょうか。では、現実はどうなのでしょう? デザイナーでありベストセラー作家、そしてフリーランスで成功するためのオンラインコースを運営しているPaul Jarvis氏が、現実を語ります。

Inc.:最近はフリーランスに興味のある人たちがたくさんいるようで、日々、彼らからフリーランスについてご質問をいただきます。そのやり取りの中で私が感じたのは、彼らがフリーランスという仕事を公園で散歩するぐらい簡単なことだと思っていることです。公園で散歩を毎日し続けることは、立派な重労働になると私は思います。

今回は、世間のフリーランスへの幻想を考え直してもらうために、フリーランスの現実を暴露します。とても現実味のあることも言いますが、私の話を読んでいただければと思います。

幻想1:自宅で下着姿のまま働ける

現実:確かに下着姿で働けます。しかし、下着姿で働く理由は、忙しくて服を着る時間もないからなのです(すでに4日間も同じ下着で働いています。ときどき母親がふらっと様子を見に来て気がつきますが、もう4日間も食器を洗っていなかったり、お風呂にも入っていないのです)。

幻想2:フリーランスは稼げる

現実:フリーランスはある程度稼ぐことができるのは確かです。しかし、稼いだお金の大半は、仕事の出費によってなくなってしまいます。MacBook、iMac、iPhone、Apple Watch、Apple製品以外(ソフトウェア、デスク、椅子、インターネット接続、ウェブサイトのホスト、メーリングリストなど)、数え始めたらきりがありません。さらに、保険、貯金、投資などもあります。せっかく一生懸命働いて稼いだお金を政府に持っていかれてしまいます。

幻想3:上司がいないからストレスもない

現実:私は毎回異なる企業と一緒に仕事をします。そのようなワークスタイルでお金を稼ぐことを考えてみてください。つまり、毎回新しい上司と仕事をする感覚に似ています。普通に働くと上司は1人でしたが、フリーランスになると何人もの上司と仕事をしないといけなくなります。その上司たち全員が、私のことを束縛します。彼らは、14件ものメールの返信をすぐに求めてくることさえあります。よく自分の上司は自分と言いますが、フリーランスの仕事では他に対応すべき相手はたくさんいるのです。

幻想4:いつでも好きなことができる

現実:私は水曜日を一日休暇にして、昼間から下着姿で酒を飲み、テレビを見ることができます。しかし、仕事をしないと1円も稼げません。ですので、多くのフリーランスは、週に40時間以上働きます。フリーランスは誰かのために週40時間働くのが嫌なので、それ以上の時間を自分のために働くのです。

幻想5:好きな仕事をしているので、仕事をしていないように感じる

現実:テレビを見ながら酒を飲む仕事でもない限り、フリーランスだとしても仕事は仕事です。特に独立したてのころは、かなり働かないといけません。なぜなら、目の前にある仕事をこなすだけでなく、新しい仕事を見つける必要もあるからです。しかし、予想以上に新しい仕事を見つけるには多くの時間が必要です。正直、酒を飲みながらテレビを見ることでお金を稼げる方法を誰かに考え出して欲しいです。

幻想6:組織のわずらわしさから解放される

現実:フリーランスは会社勤めでは不必要な管理の仕事を、1人でやらないといけません。給与計算、経理、法務、営業、マーケティング、プロジェクトマネジメント...本業をやりながら、そのすべてをこなす必要があるのです。

幻想7:常に一匹狼でいられる

現実:孤独を愛する人、内向的な人は、フリーランスに惹かれるかもしれません。そういった人たちは、朝から晩まで好きな音楽をかけ、1人で過ごす日々を妄想しているかもしれません。しかし残念ながら、クライアントはあなたに連絡をしてきます。さらに、フリーランスとしての自分の価値を認めてもらうためには、たくさんの人たちと出会い、仕事をもらうコネクションを築かなければなりません。ずっと家の中で引きこもり、孤高の人を気取っているだけではダメなんです。

幻想8:会社勤めが苦手な人はフリーランスに向いている

現実:他人やロボットのために働くのが嫌いで、フリーランスに惹かれるという気持ちは十分にわかります。しかし、組織の中で仕事ができないような頼りがいのない人は、フリーランスになるには頼りがいがなさすぎます。フリーランスの仕事では自分のことを監視しながら、進捗を確認してくれる人はいません。もし仕事の納期が遅れてしまったら、クライアントからお金をいただけないと思った方が良いです。

幻想9:ウェブサイトさえあれば大丈夫

現実:多くのフリーランスを目指す人は、ウェブサイトさえつくれば、自然とお金が入ってくるものだと思っています。つくったサイトを眺めているだけで良いなんてことは絶対にありえません。そのウェブサイトをきちんとクライアントに見てもらい、フリーランスとしての仕事の質を信用してもらう必要があります。また、フリーランスの仕事がクライアントの課題をどのように解決できるのかを理解してもらわないかぎり、サイトはただ埃をかぶっているだけでしかありません。

フリーランスの実状をお伝えしましたが、誤解しないでください。フリーランスになることは素晴らしいことであり、その選択は褒められるべきであります。ただし、フリーランスとしてきちんと評価をしていただくためには、幻想ではなく、現実をきちんと考えた行動をしなくてはなりません。

The 9 Realities of Working for Yourself|Inc.

Paul Jarvis(訳:堀込泰三)

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