Inc.:この記事は、Q&Aサイト「Quora(クオラ)」に寄せられた「走ることから学べる最も重要なライフレッスンは何ですか?」という質問からの引用です。

今回、回答をしているのは、多くのマラソンと(最高タイム3時間24分)、さらに多くのハーフマラソン(最高タイム1時間31分)を走り、50マイル(約80キロ)のウルトラマラソンも一度走破しているザビエル・アマトリアン氏です。

5〜6年前、私はタバコを吸い、体重もオーバー気味で、運動はたまにやる程度でした。そんなある日、人生をガラリと変えてしまうのが好きな私は、ある日、一週間の流動食ダイエットを始めることにしました。そして、タバコをやめ、ランニングを始め、地元のハーフマラソンに出ることを目標と定めました。この決断が、これほど人生を変えてしまうとは思いもしませんでした。今日までで、6本のフルマラソンと、17本のハーフマラソン、1本のウルトラマラソンを走っています。また、12人のチームでリレーする199マイル(約320キロ)のマラソンにも3度参加しています。こちらで私の実績が見られます。

しかし、なによりも、個人的、あるいは職業上の成功を、ランナーであることから得てきたと思っています。

ランニングを始めた当初、私はさまざまな問題を抱えていました。ひとつはひざの古傷です。16歳のときにACLの手術を受けていて、それ以来、右ひざに異常があったのです。ひざが痛み始めたとき、何人かの医師のところへ行きました。スポーツ専門医にもかかりました。その全員が、ランニングはあきらめるようにと言いました。もう一生マラソンは走れないと言い切る医師もいました。私はランニングを再開するために、何カ所ものカイロプラクターに通い、何ヶ月もエクササイズを続けました。そして、ついにはこのハードルを乗り越え、一回どころか何度もマラソンを完走できるまでになったのです。レッスン1. 始めるのは難しい:何でも新しいことを始めるときは困難が伴うものです。たくさんのエネルギーを投資せねばならず、ときには挫けそうにもなります。その変化が重要で大きなものであるほど、それだけ困難も大きくなります。

カリフォルニア州サンタクルーズで最初のマラソンをゴールしたとき、ずっと問題がなかった右ひさが再び痛み出しました。スタート地点ではなんともなかったのに...。もう二度と走れなくなる可能性もありました。しかし、そうはなりませんでした。私は回復に集中しました。そしてしばらくして、路上に戻ることができたのです。

レッスン2. 上り坂もあれば下り坂もある:新しいことを始めるという、最初のハードルを乗り越えられたら、あとはスムーズにいくだろうと思うかもしれません。しかし、人生は、多くのランニングコースと同じく、上り坂もあれば下り坂もあるのです。

早朝ランニングのために6時に起床するのは大変なことです。前日のトレーニングで足が痛いとなれば、ベットから出るのにもひと苦労です。雨降りや極寒のときに外に出て走り出すのは勇気がいります。マラソンで、20マイルの壁にぶつかったとき、そこでやめずに走り続けるのは簡単ではありません。こうした、日々の小さな決断の積み重ねが、結果を大きく変えます。

レッスン3. 小さな決断の重要性:毎日の小さな決断が、性格形成に大きな役割を果たします。小さな決断が、長期的な成功を左右し、人生の方向性を決めるのです。

ベストの状態でないときは、そうした小さな決断と向き合うことさえ苦しくなります。怪我をしてダウンしているとき、自分の力だけで再起するのは困難なことです。ですので、ランニングへの情熱を共有できる友人たちの存在がとても重要となります。幸運なことに、私には背中を押してくれて、落ち込んだときに引き上げてくれる友人がたくさんいます。

レッスン4. あなたはひとりじゃない。社会的な影響力、そして、仲間の力:人生で新しい冒険に踏み出すときは、あなたを理解して、支えてくれる人たちの存在が重要です。情熱を分かち合える仲間がいるかどうかで大きな違いが生まれます。

友人や仲間のランナーのサポートには本当に感謝しています。しかし、それと同じくらい、自分ひとりで決断せねばならないプレッシャーも感じてきました。先ほど言ったたくさんの小さな決断(雨の日にベッドから出るなど)において、自分以外の誰かが代わりに決めてくれたりはしないのです。トレーニング中もよく孤独を感じます。マラソンの20マイル地点で、周囲を見渡せば、(それぞれがベストを尽くしているのだとしても)見知らぬ人ばかりだと気づきます。つまり、続けていくためには、自分自身が強くなる必要があるということです。

レッスン5. とはいえ、あなたはひとり:友人たちがどれほど助けてくれるのだとしても、重要な決定は自分ひとりでしなければならないし、自分の体は自分で運ばねばなりません。

「反復が熟達を導く」というのは誰もが知っていることです。体の強さや耐久力を要求する活動には、ことさら当てはまります。走り、また走ることのほかに、良いランナーになる秘訣はありません。一マイルでも多く走ることがゴールです。そうすれば結果はついてきます。

レッスン6. 反復、反復、また反復:人生で何かに熟達したいなら、反復が鍵となります。何かに上達したいと思うなら、どうすればそのことに多くの時間を投資できるかを考えてください。(マルコム・グラッドウェル『天才! 成功する人々の法則』に書かれている1万時間ルールを参照)

前進するには、反復と同じくらい「目標」が不可欠です。ランニングを通して、具体的な目標にいかにパワーがあるかを知りました。あまり簡単には到達できない、長期的な目標を定めてください。進歩するにつれ、目標も少しずつ高くなっていきます。私の現在の目標はマラソンで3時間15分、ハーフマラソンで1時間30分を切ることです。どちらの目標も達成可能ではありますが、決して簡単ではありません。この目標があるおかげで、日々努力し、集中力を保つことができるのです。

レッスン7. 目標を設定する:野心的で、達成可能な目標は、前進する力と集中力を与えてくれる。

走り始めたころを思い返すと、どれだけ多くの間違いをしていたかに気づきます。これまでに、実にたくさんのことを学びました。本を読み、映画やオンライン動画を見て、自分より多くを知る人たちと語らってきました。また、体に耳を澄ますことも覚えました。これほどランニングを愛せて、学ぶ過程をこれほど楽しんでこれたのはありがたいことだと思います。

レッスン8. データと知識:人生をより良くするために、周りにあるすべての情報を活用してください。自分についてのデータは、どうすればもっと向上できるかの洞察を与えてくれます。決断を下すとき、外部のソースから得られた情報が、重要な役割を果たすでしょう。

始めるのは大変(レッスン1)だと言いましたが、ランニングを始める人がよく陥る過ちは、やり過ぎてしまうことです。例えば、走行距離を伸ばすのと、タイムを縮めるのを同時にやろうとします。たいていは、怪我をしたり、フラストレーションを抱える結果になります。走り始めるときに最も重要なのは、自分の限界を理解しておくことです。たとえ理解していても、足が痛くても走り続けたり、短い期間にレースを詰め込み過ぎるなど、ついやり過ぎる誘惑にかられるものです。誰にでも限界はあります。強引にそれを越えようとすると、結果的には問題を抱えるはめになります。

レッスン9. 誰にでも限界はある:自分の背中を押すことは悪いことではありません。しかし、押しすぎてはいけません。限界を広げるには、まず、限界がどこにあるのかを理解することです。そして、少しずつ、少しずつ伸ばしていきましょう。

どんなに困難に見えても、どんなに時間がかかっても、心に描いたことは必ず実現できます。私はランニングに有利な条件はひとつも持っていませんでした。今でもそうです。今後も自分が「偉大な」ランナーになれるとは思っていません。とはいえ、3年前に手が届かないと思えた標が、ハーフマラソンを完走することなのを思い返すと、笑いがこみ上げてきます。私のように、有利な条件も持たず、家族と仕事に責任があり、おまけに時間も限られている人間でも、やればできるのです。

レッスン10. とはいえ、あなたにもできる:あなたがどんなに低いところにいても、どれほどゴールが遠く見えても、やってみればできるものです。これまでも、あなたと同じような人たちが、たくさん達成してきた事実を見てください(アメリカ人の0.1〜0.5%がマラソンを完走している) どうしてあなたにできないと言えるでしょうか?

最後に強調したいのは、走ることは誰にでもできるのだとしても、ランニングは決して簡単でも、努力が要らないものでもないということです。ラニングとは困難なものであり、それを価値あるものにするには、長期的な努力が必要となることは、疑いようのない事実です。人生で最良のものがすべてそうであるように。

レッスン11. すべての良きことは困難だ:このことについて少し考えてみてください。人生で価値あるものはすべて、努力と決断を要求します。健康であること、幸福であること、キャリアや家庭を持つこと、これらはすべて、エネルギーと長期的な投資を必要とします。このことを胸に、あなたの旅を心から楽しんでください。

11 of the Best Life Lessons You Can Learn While Running|Inc.

Xavier Amatriain(訳:伊藤貴之)

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