自分のことを生産性の教祖であり、無限の叡智の泉であり、問いかけてくる人にも問いかけてこない人にも、いつでも助言できる人間だと思っている人はたくさんいます。そういう人たちの、それぞれが持っている秘訣は正しいかもしれませんが、世間に出回っている、生産性に関するありがちな通説は、間違っていることが多いです。
こうした通説は、すでに生産的である人たちさえも惑わすことがあり、人の進歩を阻むものでしかありません。
その正体を知り、回避すれば、生産性の低下の渦から逃れられるはずです。ここにご紹介する10の間違った通説を理解すると、すぐにでも効果が出ますし、これらに遭遇したときは気をつけてやり過ごさなければいけません。
1.長時間働く
職場に長くいればいるほど、たくさんの仕事ができると思ったことがいままでにありますか。きっとその答えは「何度もあった」ではないでしょうか。額面通り受け取ると、作業にたくさんの時間をあてるほど、完成度が高くなるというのが常識です。しかし、これは必ずしも真実ではありません。すでに長い1日をさらに長く働くと、心身は消耗し、仕事はまったくはかどらないでしょう。確かに、仕事量は増えるかもしれませんが、次の日にやれば、同じ時間でもっと多くの仕事ができるのではないでしょうか。時間配分についてよく考え、働き過ぎないように注意しなくてはいけません。
2. プレッシャーがあるほうが良い仕事ができる
プレッシャーがあるほうが良い仕事ができると思い込み、自らにプレッシャーをかける人がいます。これは、短期的には何らかの利点があるかもしれませんが、総合的には、とても愚かなやり方です。業務中にプレッシャーを増やすと、ストレスレベルも高くなります。ストレスは仕事にも健康にも悪影響を与えるため、最小限に留めておくべきです。ほんの少しのプレッシャーならモチベーションを保つのに良いかもしれませんが、度を越すと、あらゆることに悪影響を及ぼすことになるでしょう。
3. マルチタスクは効率を高める
これも極めて単純な考え方です。1つの作業でたくさんのことができるなら、2つ以上の作業を同時にすると、どれだけ多くのことができるかということです。しかし、現実には、マルチタスクは悲惨な結果になるとわかっています。注意力や思考力を2つの作業に分散せざるを得ないわけで、結果、能力の半分ずつしか使えません。どんなに完璧なシステムでも、生産性の純増加はゼロになります。しかも、あっちをやったりこっちをやったりして、頭を切り替えなければならないので、実際には効率がずいぶんと落ちます。これは『The Myth of Multitasking(マルチタスキングの間違った通説)』という記事で解説されています。
4. 忙しいのは生産的なのと同じ
これは真実ではありません。無益で時間ばかり食う作業を忙しくするのは、これ以上無いほど効率を悪くします。それより、目の前にある本題に集中しましょう。それに該当することが何もないときは、他人の仕事を手伝ってはどうでしょうか。
5. 給料を高くするほど、熱心に働いてもらえる
この言葉の裏にある理屈は、労働者は報いられると、給料が増えた分だけそれに見合う仕事をしようとするということです。しかし、実際は違います。もし、すでに相応しい給料をもらっているのなら、能力を最大限に発揮して仕事をしているはずで、給料が上がってもそれは変わりません。結局のところ、能力の限界は誰にでもあるのです。給料を上げると喜ばれはしますが、さらなる生産性が高まるきっかけにはならないでしょう。
6. 休憩は時間の無駄だ
しっかりと休憩時間をスケジュールすることは、どんな仕事にも大変重要です。休憩はストレス解消に役立ちますし、時間の無駄だと言う人は、誰であろうと間違っています。誰もが、今よりも長い休憩を取りたいと思っています。情報サイト「FastCompany」によれば、Draugiem Group社が最適な休憩時間について、自社の社員を対象に調査を行った結果、仕事を52分間したあとに17分間の休憩を取るのが最適なスケジュールであることが明らかになりました。これと同じような形で休憩するのが成功への鍵かもしれません。
7. 同じ生産性システムが誰にでも効果がある
人はそれぞれ異なります。職業から性格まで、誰もが他人とは根本的に異なるのです。だから、ある具体的な体制で、誰もが生産的になれるわけではありません。実験や試行を繰り返して、自分に向くものを見つけるほうが堅実です。これが君には1番合っていると他人に言わせているようではダメです。それは自分にしかわかりません。自身に向いた生産システムを決めるのは自分だけなのです。
8. リモートワークは効率的でない
この通説は数年前なら正しかったかもしれませんが、現代では違います。現代のデジタルテクノロジーにより、オフィス環境でする必要があった作業が、どんどん自宅でもできるようになっています。邪魔の入らない環境である限りは、21世紀においてはどこでも仕事をする場所になりうるのです。
9. 職場を片付けておくと頭の中も整頓される
整理整頓された職場が、頭のなかを整理するために必要ということはありません。散らかっていてもきちんとした仕事はできますし、その逆もあります。これも、すべて人それぞれですし、個人のニーズにもよります。きちんと整理整頓されているのが好きなら、そうしてください。しかし、それほどこだわらないのなら、わざわざそのために何かするまでもありません。
10. 人に助けてもらうより自分で全部やった方が良い
作業を行うのに、できるだけのことをするのは当然ですが、万が一他人の助けが必要なときは、お願いするのを恐れないようにしましょう。ほとんどの職場では、ひとりで何かを抱え込んで下手なやりかたでされるよりも、誰かに助けを求めるほうが好まれます。逆に、助けの欲しい人が近寄ってきたらぜひ助けてあげましょう。自分にできることを知り、その限界を越えないようにしましょう。そうでなければ、生産性は向上しません。
ここに挙げた通説が間違いであることをはっきりさせておくのは、高い生産性を確保するのに不可欠です。一見、理に適っているように見えるアドバイスに惑わされず、それに従ったらどうなるか警戒しましょう。知識で我が身を武装して、生産性に関する間違った10の通説から身を守ってください。
The 10 Biggest Productivity Myths | pickthebrain.com
DANAIL DONCHEV(訳:春野ユリ)