フィジーという国がどこにあるかご存知でしょうか?
南太平洋上(オーストラリアの東、ニュージーランドの北)にあり、日本からは約7000km離れています。330ほどの島からなり、国土面積は日本の四国くらい、人口は約85万人(佐賀県や東京都世田谷区と同じくらい)の小さい国です。
僕はそんなフィジー共和国に移住して、今年で9年目になりました。今はフィジーで英語の語学学校(Free Bird Institute)のマネージャーをしています。移住のキッカケは「脱サラ世界1周」でした。
サラリーマンを始めて3年目、「日本も好きだけど、それ以上に好きな国があるかもしれない」という考えが頭に浮かび、会社を退職し、移住先を選定する世界1週の旅に出ました。
旅中、たまたま出会ったフィジー人たち。
「真顔が笑顔」なのかと思うほど常に笑顔。ゆっくり音を刻むメトロノームのようにのんびりとマイペース。一緒にいると自然と心が癒される「歩くパワースポット」のような彼らに魅了されました。
これまで100カ国を旅してきましたが、「日本よりも住みたい」と感じた国は、フィジー以外には見つかっていません。
今回は、そんなフィジーについてご紹介させていただきます。
1.フィジーは世界幸福度ランキング1位

以下、統計的数値からフィジーという国を説明してみましょう。
★平均寿命:119位[194カ国中](日本1位)【世界保健統計2015】
★1人あたりのGDP:102位[187カ国中](日本27位)【IMF】
★乳児死亡率(1歳未満の乳児1000人あたりの死亡数):(死亡率が低い順に)84位[194カ国中](日本1位)【WHO「World Health Statistics 2013」】
★民主主義指数:119位[167カ国中](日本22位)【Economist Intelligence Unit「Democracy index 2010」】
★報道自由度:107位[180カ国中](日本59位)【国境なき記者団「Worldwide Press Freedom Index2014」】
これらのデータを見ていると、フィジーは世界の国々の中でも「中の下」ぐらいの印象です。ところが、フィジーは2011年と2014年の「世界幸福度ランキング」で1位に輝いています。
なぜ、人口100万人にも満たないミニ国家がこんな偉業をなし得ることができるんでしょう?
2.幸福度調査の方法とは?

「世界幸福度ランキング」とは何なのか。まずは、幸福度調査について知っておく必要があります。
幸福度調査にはざっくり言って、2種類あります。「主観系」と「客観系」です。主観系は、シンプルに幸せかどうかを質問するタイプです。
たとえば、2011年にフィジーが1位に選ばれた「レジェ・マーケティング(カナダの世論調査会社)」による幸福度調査がそれにあたります。
これは、58カ国の男女約5万3000人に対して、対面、電話、インターネットで調査し、「幸福を感じる人」の比率から「不幸を感じる人」の比率を差し引く「純粋幸福度」を国別に比較して作られています。純粋幸福度の世界平均は40。フィジーはその2倍以上の85でした。日本は58カ国中、23位と真ん中ぐらいです。
詳しい順位を述べると、1位フィジー(85)、2位ナイジェリア(84)、3位オランダ(77)、4位スイス(76)、5位ガーナ(72)、6位コロンビア(71)、7位フィンランド(70)、8位ドイツ(68)、9位アイスランド(66)、10位デンマーク(64)、23位日本(47)、58位ルーマニア(-10)...といったところです。
主観系とは違って客観系は、いろんな指標データをもとに総合的に幸福度を測るタイプです。たとえば、「人間開発指数」による幸福度調査がそれにあたります。「平均寿命」「成人識字率」「就学率」「1人あたりのGDP」を指標にして、その国の人たちの生活の質を測る指数です。
2014年、国連開発計画(UNDP)から発表された「人間開発報告書」によると、フィジーの人間開発指数は187カ国中88位。ちなみに、1位は5年連続でノルウェー、2位はオーストラリア、日本は17位。日本は、こういう「客観系」の幸福度調査に強いのです。
3.主観的幸福 ≠ 客観的幸福

主観系と客観系、なぜこんなに結果が異なるのか? 次は、これについて考えてみたいと思います。
客観系の調査に使われている指標は、「幸せの構成要素と信じられているもの」です。このスコアが良ければ、幸せなはずです。「人間開発指数」でいえば、「平均寿命」「成人識字率」「就学率」「1人あたりのGDP」がそれにあたります。
人間開発指数以外の客観系の調査では、こういう指標があります。「自殺率」「失業率」「医師率」「乳児死亡率」「平和度」「男女格差指数」「離婚率」「民主主義指数」「報道自由度」「政治的安定度」「腐敗認識指数」...等々。
冒頭で示したように、フィジーの場合これらの「幸せの構成要素と信じられているもの」は、決して良い状態とは言えません。しかし、客観的に「幸せの構成要素と信じられているもの」は、主観的な「幸せの構成要素」とは限らないということです。フィジー人は自分自身を幸せだと感じられる国民であると言えるでしょう。
4.本当の「幸せの構成要素」とは?

では、本当の「幸せの構成要素」とは何なんでしょう? フィジー人の思考・行動特性の中から、「幸せの構成要素」となっていそうなものを4つ、挙げてみます。
1.「共有」指数:「俺のモノはみんなのモノ、お前のモノもみんなのモノ」というシェア度
フィジー人には「私有」という感覚があまりありません。なんでも「共有」します。フィジー人と共同生活をしていると、僕のTシャツが無断で着られます。車を誰かが買えば、近所の人たちで共有します。子供の多い夫婦が、子供ができない夫婦と子供を共有します。お金も、土地も、家族も、なんでも共有します。

2.「現在フォーカス」指数:過去を振り返らない、未来を案じない、今この瞬間への注力度
フィジー人は「今ここ」を生きています。だから仕事でミスをしても反省しません。もう過去のことだからです。未来のことも気にしません。だから貯金もしませんし、健康も気にしません。口癖は「先のことは心配するな」です。結果、貧困で不健康(肥満)ですが、みんなめっちゃ幸せそうです。

3.「テキトー」指数:細かいことは気にしない大雑把度
完璧主義なところがある日本人にとって、フィジー人のテキトーさは際立ってみえるでしょう。たとえば、レストランでオーダーしたメニューがその通りに出てくることは少ないですし、お会計の金額も間違っていることが多いです。お釣りも少なかったり多かったり。パスポートを作成しても、名前や誕生日が間違って発行されたりします。コカイン所持容疑のコロンビア人男性への取り調べ(尋問)を、スペイン語を数単語知っているだけの僕に任せたりします。テキトーなので、ストレスフリーです。

4.「フレンドリー」指数:「人類みな兄弟」を地でいく社交度
フィジー人は見知らぬ人同士でも話しかけ合い、すぐに家族のようになります。町を歩いていると、知らない人からよく呼び止められます。5分くらい雑談すると、「今からウチでランチはどう?」と招待されます。裁判所の傍聴席に座っていたら、隣に座ったフィジー人男性が突然、「俺、いま、離婚調停中やねん」って相談してきます。仕事や家事は超スローなのに、人間関係の構築スピードは光速です。

5.まとめ
これまで挙げたことは数値化できないものばかりです。フィジーに8年間滞在した感覚値ですが、フィジー人はこの4つの指数が極めて高いんです。
「共有」「現在フォーカス」「テキトー」「フレンドリー」。この4要素を意識して高めれば、フィジー人のようにハッピーになれるはず。フィジー人に囲まれて8年も過ごした結果、僕は意識せずともそれらを実践できるようになりました。
日本でのサラリーマン時代と比較すると、主観的幸福度は圧倒的に上がったと思います。当時を振り返ると、納期に追われ、会社に泊まり込み、人間関係に神経をすり減らし、有給休暇を消化することにも罪悪感を覚えていた日々...。いつか報われる未来を信じて。
生きづらさや孤独を感じている人は、一度フィジーに来てみて、新しい価値観を体感してみてはいかがでしょうか。きっと、目からウロコな体験をするはずです。フィジー流を自分にインストールして、幸福への感度を高めてみませんか。フィジー旅は、「最幸のエデュケーション・ツール」であり、「自由で幸せになるための最短経路」だと思います。
世界1周の旅をしていた時、地球上には2種類の国民がいると感じていました。1つは、「旅人に無関心な先進国の人たち」。もう1つは、「旅人に金目当てで話しかけてくる途上国の人たち」。フィジー人はそのどちらでもなく、「旅人に目的なく話しかけてくる人たち」でした。
今日もフィジー人たちはいろんな場所で旅人にフレンドリーに話しかけ、「今」という時間を共有していることでしょう。損得勘定なく。
