炊飯器は、その名に反して、米を炊くだけではなく、いろいろな食べ物を調理するのにも便利です。高い炊飯器を買いたくなったり、いろいろな料理を試してみたくなったりするような実例をいくつかご紹介します。
考えてみると、炊飯器はスロークッカー(いったん調理をはじめたら放置しておける)と同じような調理器具です。調理に蒸気を使い、風味を閉じ込めることができます。炊飯器の中には「スロークック」機能があるものもあるため、代用できます。
「炊飯」と「保温」という基本機能しかない炊飯器でも、映画評論家・ロジャー・イーバート氏が推奨しているように、「うまく使って」米以外のものも調理できます。
朝食

朝食を作ろうと思ったとき、真っ先に思い浮かぶのは炊飯器ではないかもしれませんが、大体のものが作れます。
- ゆで卵:美味しいゆで卵を作るには星の数ほどのテクニックがありますが、炊飯器もその1つです。私は圧力鍋を使うほうが好きなのですが、炊飯器も同じように使えます。たとえば、殻のむきやすいゆで卵が一度にたくさん作れます。特に時間の節約にはなりませんが、コンロでゆで卵を作るのに比べて手がかかりません。技術的に見ると、卵をゆでるのではなくて、蒸していますが、卵はしっかりと半熟か固ゆでになります。
- フリタータ(イタリア風オムレツ):もしかしたら、ゆで卵よりフリタータの方がお好みかもしれませんね。フリタータに入れたい野菜や食材があれば、先に火を通しておきましょう(野菜は電子レンジにかければいいです)。それから、卵を何個か炊飯器の中で泡立て、そこに食材を加えましょう。普通に「炊飯」で調理して、できあがったら、炊飯器のサイズによりますが、少なくとも2人前の簡単な朝食が(あるいは夕食が)できあがります。料理サイト「Just Bento」のレシピはこちらです。
- オートミールとシリアルなど:クロックポットを使ったときのように、オートミールを炊飯器で作れます。オート麦を炊飯器の中に1晩浸けておき、朝になったらスイッチを入れると、30分で温かい朝食が出来上がります(あるいは、タイマーがあるなら、朝ベッドから這い出したときオートミールができているようにセットしましょう)。クロックポットに比べると、炊飯釜は洗いやすく、少なめに作っても鍋底にこびりつく心配をしないですみます。料理サイト「The Kitchn」では、オールド・ファッションド・オート麦1カップに対して水か牛乳を1と3/4カップ、スチール・カット・オート麦1カップに対して水か牛乳を2と1/2カップを入れて、「お粥」で低温調理することをすすめています。この方法では、ほかにも、大麦、粗びきトウモロコシ、ライスプディングなどの暖かい朝食用シリアルも調理できます。そこに新鮮な果物、シナモン、そのほかの香料を加えるのもいいでしょう。
- ジャイアント・パンケーキ:それから、炊飯器では大きなパンケーキを作れます。朝食をたっぷり食べたいときにぴったりのジャイアント・パンケーキです。
おかずいろいろ

炊飯器のもっとも優れている点の1つは、食材を釜の中で混ぜてしまえば、あとは基本的に放っておいても良いところです。
- 肉と野菜を蒸す:米を炊くとき、野菜や肉も同時に蒸さない手はありません。米の風味が引き立ちますし、料理全体の風味も良くなります。炊飯器には蒸し皿の使い方がついているはずですが(蒸し皿付きの場合)、料理関連サイト「Aroma Housewares」に載っている大体の蒸し時間は以下のとおりです。
炊飯器に、まず米を入れ、次に蒸し皿のふちに沿って野菜や肉を並べます。蒸し皿がない場合は、Amazonで買うか、炊飯器の製造元から直接購入することもできます。
スチーマーバスケットで野菜と、1匹丸ごと魚を蒸すと、それだけで1食できてしまいます。また、ザワークラウトとジャガイモを敷いた上に、あらかじめ火を通したソーセージを置いて蒸してみてください(調理時間は30~40分です)。
- ローストポーク:料理ブログ「Apartment Therapy」では、スロークッカーの代わりに炊飯器を使ってローストポークを作る実験をしました。
まず、食材を炊飯器にいれます。豚ロース、タマネギ、カレー、しょうゆ、チリソース、レモンジュース、ニンニク、そしてコリアンダーを含む数種類のスパイスを入れました。私の場合、分量は勘でやるのが普通です。
普通の「炊飯」で炊いたあと、「保温」で1時間そのままにしておきます。このやり方なら、ほとんどどんな肉でも炊飯器で調理できます。たとえば、鶏丸ごと一羽でも大丈夫です。
- マカロニ・チーズ:炊飯器は家庭でクリーミイなマカロニ・チーズを作るのに理想的な道具です。片づけが簡単なのが魅力です。また、パスタなども炊飯器で作れます。
- 豆類:豆はあらかじめ水に浸しておく必要があり、全体的な調理時間は30分から4時間の幅があります(大豆が一番長くかかります)。しかし、炊飯器を使えば、煮るときに鍋を見張らなくてもいいし、タイマー機能を使って、できていて欲しい時間にセットできます。炊飯器を持っているすべての人にお勧めしたい『The Ultimate Rice Cooker Cookbook(究極の炊飯器を使った料理本)』に載っている調理時間の表を確認してみてください。
- スープ、シチュー、チリ:基本的に、材料を炊飯器に入れておけば良いです。ロジャー・イーバート氏いわく、
- スープ:スープを作るには、食材をすべて炊飯器の中に入れてしまいます。それから、十分に水を入れて下さい。私の場合はまず調味料を入れて、それに新鮮な食材を加えます。しっかり蓋をし、「炊飯」で、スープが煮立つまで待ちます。そのあと「保温」で温めましょう。煮えるのに必要な時間を逆算して、食材を混ぜていくこともできますし、急いでいるなら、すべてまとめて煮ることもできます。あとは放っておくだけです。肉や鶏肉は、煮過ぎないように気をつけたほうが美味しいです。冷凍の豆やトウモロコシなど、最後に鍋に入れる食材にシャリシャリ感を残してもいいですね。しかし、こうしなければいけないというような決まりは何もありません。
- シチュー:水を少し少なめにするだけであとはスープと同じです。
デザート

オーブンが温まるのを待つのが嫌なら(あるいは手ごろなオーブンがないならば)、炊飯器はデザート作りの友となります。
- フムス:自家製フムスはおもてなし料理の1つです。調理は簡単で、炊飯器でヒヨコ豆を煮て、(30分ぐらいかかります)、その煮えたヒヨコマメを残りの材料と一緒に裏ごしするだけです。
- 果物を煮る:果物を煮ると風味がでます。梨をワインで煮たり、ざくろを煮て梨で風味をつけたりする料理などが、例としてあげられますが、炊飯器を使えば、もっと簡単にいろいろ作れます。
- タピオカ・プディング:多くの炊飯器には(さまざまな機能がついているという前提ですが)プディング設定があります。それを使ってタピオカ・プディングを作ってはどうでしょう。炊飯器の中にタピオカを入れて、果物と、ココナッツミルクを混ぜ合わせます。炊飯器を使うと、これ以上無いほど簡単です。調理方法は「お粥」で炊きましょう。
- チーズケーキ:炊飯器は、オーブンと同じように焼き菓子を作れます。チーズケーキが食べたくてたまらなくなったら、材料(クリームチーズ、卵、砂糖、レモンジュース、ヘビークリーム、小麦粉)を炊飯器の内釜の中で混ぜ合わせ、「炊飯」のスイッチを押します。これは、チーズケーキを作る一番簡単な方法かもしれません。
- チョコレートケーキ:これも炊飯器でチーズケーキと同じように作れます。この場合、卵や牛乳を入れる必要が無く(そのため、アレルギーのある人にぴったりです)、材料を炊飯器の中で混ぜて1時間ぐらい待つだけです。
- バナナブレッド:1時間半ぐらいでバナナブレッドが作れます。材料を混ぜ合わせ、軽く炊飯器の内釜に油を敷き、生地を流しいれます。調理方法は普通の「炊飯」です。レシピによっては、2回「炊飯」を繰り返すものもあります。
その他の料理
米は穀物ですから、炊飯器でほかの穀物が調理できるのは、それほど驚くことではないかもしれません。キノア、米のピラフ、リゾット、ポレンタ、粗びきトウモロコシはもちろん、パエリアもどき(ソーセージ、鶏肉、そのほかの材料を米と一緒に炊飯器に入れるだけです)まで作れます。ブリトーだって炊飯器で作れます。米、トマト、ピーマンを米と一緒に炊き、最後に卵を割り入れます。10分間「保温」にして卵に火が通ったら、中身をすくってトルティーヤに入れます。
しかし、きっとほとんどの人は炊飯器を米を炊く以外のことには使っていないでしょう。
炊飯器だけで1食作ったり、もっといろいろな料理を作るには、調理時間と機能設定をいろいろ試さなければならないでしょう。しかし、作りたいものは何でも調理できるはずです。もっとアイデアが欲しいですか? Aroma Housewaresにはクラムチャウダーやメキシコ料理のエンチラーダなど、炊飯器で作れるレシピが、275も載っています。
炊飯器は調理器具のなかで、もっとも素晴らしいものなのかもしれませんね。
訂正[2015/08/05]チーズケーキの画像の引用元を追記、画像を正しいものに訂正しました。
Melanie Pinola(原文/訳:春野ユリ)
Illustration by Tina Mailhot-Roberge.