みなさんの中には、物覚えが悪いと悩んでいる方もいるでしょう。でもそれは、単に戦略が間違っているだけかもしれません。記憶力がちゃんと働いている事例に目を向ければ、自分が物を覚える道筋がわかり、戦略もそれに合わせて改良できるはずです。たとえば、しょっちゅう車のキーを置き忘れるからといって、その人がもともと忘れっぽい性質だという話にはなりません。この人は、自分の心の動きについて間違った認識を持っているだけです。
この問題については、世界記憶力グランドマスターであり、『Unlimited Memory: How to Use Advanced Learning Strategies to Learn Faster, Remember More and Be More Productive』(無限の記憶力:記憶速度を速め、記憶量を増やし、生産性を上げるワンランク上の学習戦略)という本の著者でもあるKevin Horsley氏が、Q&Aサイト「Quora」で解説しています。それによると、こうした人の問題は、自分が何かを忘れたという事実にばかり目を向けている点にあるというのです:
記憶力がうまく働かないのは全体の時間のうちたった5%であったとしても、こうしたケースばかりを気にして、「物覚えが悪い人クラブ」のメンバーに加わりたがる人が後を絶ちません。物覚えが悪いと思っている人は、どこで記憶違いを起こしたかを覚えているわけですから、実は優れた記憶の持ち主と言えるのです。
自分の記憶の中に、どれだけのデータが蓄えられているかを考えてみてください。あなたの記憶力は、実際には多くの場面できちんと機能しているのです。ですからむしろ、「私の記憶力はどのくらい役立っているだろう? 今日はどれだけ役立っただろうか?」と問いかけてみてください。
あらためて考えると、会話の中で得た情報はかなり思い出せるとか、ある映画のセリフならいつでもそらで言える、といった例が思い当たるでしょう。
このように、記憶がちゃんと役に立った事例を挙げてみれば、自分がどんなふうに物を覚えているか、その仕組みについても、パズルを解くように明らかになってくるはずです。加えて、自分で物覚えが悪いと思い込んでいたけれど、そんなことは全然なかったと気づくメリットもあります。
もう少し自分の記憶力に自信を持てれば、今後の記憶力の向上にも、きっと悪くない効果があるはずです。
Kevin Horsley's answer to "What is the fastest and best way to improve my memory..." | Quora via Inc.
Patrick Allan(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)
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