大学卒業後、就職先がすぐに決まって運が良かったと思います。やる気満々で社会人の仲間入りをしましたが、数ヶ月後、私は条件も給料もさらに良い仕事のオファーをもらいました。まったく嬉しくなかったわけではありませんが、どちらかというと不安になりました。
オファーは魅力的なもので、給与もその業界の適正範囲内でした。しかし、「うまくいかなかったらどうしよう?」「仕事にやりがいがなかったらどうしよう?」「すべて失ったらどうしよう?」と、安定した収入を失くす可能性に怯え、素晴らしい仕事をもう少しで逃すところでした。
不安もある程度は役に立ちます。はじめは、不安がやる気に火をつけ、経済的な目標を達成することができました。しかし、不安はだんだん私の行動を妨げるようになったのです。私が立ち向かった、経済的な不安とその克服方法をここで紹介します。
収入を失うことへの不安
お金に関して最大の不安は、仕事を失う、ひいては収入を失うことでした。お金がないせいで実家に戻りたくなかったのです。
ある意味、この不安な気持ちは私の役に立ったといえるでしょう。職業倫理を形成する助けになりました。誰だって、クビになる心配をしている時は、一生懸命働きます。とは言え、この当然の不安は、次第に私の足をひっぱりはじめました。たとえば、
- 収入がいいからという理由で、やりがいを感じない仕事に就きました。
- 昇給を要求しませんでした。なぜなら、上司が私を誤解してクビにされるかもしれないと怯えていたからです。
この不安を克服するために、自分を主張をすることを学び、リスクを負うことに慣れなければなりませんでした。
また、「安定した収入がないという恐怖」も克服しなければなりませんでした。そこで、緊急事態に備えて貯金をしました。それは多少不安を軽減し、リスクを負うことが少し楽になりました。
そして、リスクについて考えました。たとえば、転職を決意した時のために、貯金をし、計画を立てたのです。転職はリスクはあるものの、経済的にも気持ち的にもリターンが大きいからです。しっかりとした計画と緊急時のための安全策があることは、不安を克服する上で大きな役割を果たしました。
使って後悔したくないという不安
もう1つの不安は、お金の使いすぎです。一見、問題があるようには見えませんが、これも行動の妨げになるのです。
たとえば、フリーランスとして、パソコンを使って作業をする時間が多いのですが、ラップトップが壊れかけたときは大変でした。作業を終えるのにいつもより時間がかかるので、常にイライラしていました。新しいパソコンを買えるだけのお金は持っていましたが、そのお金を使うと後悔するかもしれないという気持ちを拭えずにいました。ごちゃごちゃ言わずに新しいパソコンを購入すれば、仕事がスムーズになることを認めるまでに、思っていたより時間がかかりました。
お金を使ったら後悔するという不安と、仕事を失うかもしれないという不安は、結局ひとつの結論に行き着きました。それは、「十分なお金がない心配」です。この不安を克服するには、恐怖の大元を知り、自分とお金の関係性を把握する必要がありました。コロンビアで心理学教授を務めるValerie Golden氏は以下のように説明しています。
皆さんがお金に関して、悲痛な感情を抱いているとしたら、それは金銭問題を客観的に見る力を失くし、将来どこかで問題にぶつかってしまうかもしれません。そうなる前に、若い頃はお金をどう考えていたか、両親はどのようにお金を扱っていたか、現在の皆さんにとってお金が「何」を意味するのか、それが人生の目標や皆さん自身に対してどう関係するのかということを考えてみましょう。
私はお金に対して、チャンスや自由ではなく、いつも足りないものというイメージを抱いていたので、むしろ心配の種でした。そこから、私の行動にお金はどんな影響を与えるか考え、金銭面での決断を下すときは、ものごとを客観的に見るようにしました。
お金を使うことに関しては、いまだに考えてしまいます。最近ではそれを「不安」とは呼びませんが、心配しすぎないよう、しかし、浪費にならないよう気をつけています。それは、自覚ある消費習慣を身につけるということです。たとえば、
- 使ってもいい金額制限を設定する。
- 予算よりも目標に焦点を置く。定年までに貯金目標額を達成できるならば、そのほかの支出に関しては考えすぎないようにする。
- 大きな買い物に関しては、「長時間使うものにお金をかける」という原則に縛られ過ぎないようにする。
自分の気持ちを知り、行動にお金がどう影響するのかを学び、消費をコントロールするためのガイドラインを設けることは、お金を使う恐怖を克服する助けとなりました。
投資に対する不安
投資は宝くじを買うようなものだと考える人が多いです。なので、誰もが投資を怖がります。私も同じように、投資は怖くてややこしく、手に負えないものだと思っていました。
私は常日頃からとても倹約家ですが、節約だけが富を築く唯一の方法ではありません。もし本気で富を築きたいのであれば、入ってくるお金を増やす必要があり、投資もその1つです。ローンの支払いと緊急用の貯金をしたあと、私は投資を無視できなくなりました。老後のための貯蓄は重要ですし、若いうちにお金を増やす必要がありましたが、それは投資なしではできませんでした。
- まず、個人年金制度の1つ「401(k)」を始めました。しかし、初めは何に投資をしていて、仕組みがどうなっているかは理解していませんでした。
- 続いて、インデックス・ファンド(投資信託)とIRA(個人年金制度)について学びました。
仕事を辞め、契約していた401(k)を乗り換えなければならなくなったので、IRAについて学ぶ必要ができたのです。その中で、インデックス・ファンドという言葉を知りました。最後には投資を分散させることを知り、ビギナー向けの簡単なポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を作成する方法を学びました。
- 最後に、投資と税金の仕組みを学びました。投資の中には、税金面で利点のあるものや課税対象になるものがあり、これらはどのような仕組みになっているか、それが自分の税金にどのような影響を与えるかということを知りました。
投資について学んだ内容は、ほぼ前述の3つに含まれていたため、投資はそれほど怖いものではないと気が付きました。実はとても単純だったのです。
不安な気持ちが役に立つこともあります。私は仕事を失うのが怖くて一生懸命働きました。浪費してお金を失うことが怖くて、せっせと貯金しました。しかし、目標を達成すると、不安は逆に行動の妨げとなりました。金銭的に何が1番不安かということを自覚すると、リスクを負うことができるようになりました。そしてそのリスクはどれも十分に価値のあるものだったのです。
Illustration by Tara Jacoby.