Inc.:ご存知のように、マルチタスクは有害です。頻繁に繰り返すと脳が収縮し、IQが下がるとも言われています。それだけではありません。時間節約にならないばかりか、生産性が40%も低下するのです。
この恐ろしい数値は、「Only Connect Consulting」のCEO。Devora Zackさんが発表したものです。『Singletasking: Get More Done--One Thing at a Time』の著者でもあるZackさんは、マルチタスクほど有害なものはないと述べています。会議に出席しながら、レポートを書いて、さらに家族にメールなんてことを同時にやっていたら、脳は複数の行動の間をノンストップで行ったり来たりしなければなりません。これでは効率が下がり、脳細胞にも悪影響です。
困ったことに、マルチタスクは有害にもかかわらず、快感をもたらします。タスクを切り替えるたびに、新しさを感じた脳が、ドーパミンという名の麻薬にも似た脳内化学物質を分泌するのです。
でも、安心してください。Zackさんによれば、マルチタスクのループから抜け出す方法はいくつかあるそうです。以下を参考に、失われた効率とIQを取り戻しましょう。
1. ひとつのタスクを選び、集中する
「シングルタスクは、1度にひとつのことをして、その間は他の要求を排除することです。つまり、譲らない姿勢で、自分が選んだことに集中する必要があります」
だからといって、ひとつのタスクが終わるまで、ずっと執着している必要はありません。そんな時間の使い方が許される人はそうそういないはずですから。それよりも、あるタスクに対して特定の時間を充てて、その時間内はほかのことをしないようにするといいでしょう。
このアプローチのコンセプトは、有名なポモドーロテクニックと同じです。ポモドーロの場合、25分間ひとつのタスクに取り組み、5分間の休憩をはさみます。ポモドーロを使うかどうかを問わず、1回にひとつのタスクに集中することは、物事に取り組むうえでとても有効です。この方法は、難儀な仕事ほど効果を発揮するでしょう。
2. ひらめきを即座にメモできる場所を確保する
あるクライアントへのメールを書いているときに、別のクライアントに売り込むための名案を思い付いたとします。マルチタスカーの場合、アイデアを忘れないうちに新規メールを作成して、新しいメールを書き始めるでしょう。
それよりも、もっと賢明な方法があります。それは、すぐにメモを残せる手近な場所を決めておくこと。そうすれば、ひらめいたアイデアを忘れることなく、今やっているタスクを続けることが可能です。アイデアをひらめいたら、別の画面に切り替えて(もしくはメモ帳を取り出して)、あとで思い出せるように数行程度のメモを残し、元の仕事に戻るのが理想形。Zackさんの場合、これにはスマートフォンを使っているそうです。筆者はEvernoteです。どんな方法を選ぶにせよ、手軽で手近で直感的なものを選びましょう。そうすることで、中断時間をできるだけ短くできるのです。
3. 集中できる環境を作る
「環境は自分でコントロールできます。騒音やポップアップなど、集中力を削ぐものをシャットアウトできるかどうかは、自分次第なのです」とZackさん。他人のせいにするのはもってのほか(同僚がうるさいとか、在宅仕事であれば同居人がうるさいとか)。また、メールやFacebookの通知、電話など、テクノロジーのせいにするのも感心できません。
たいていの場合、これらの雑念をもたらすものは、自分でコントロールできます。オフィスにドアがあるなら、会議中や何かのプロジェクトに取り組んでいるときなど、ひとつのタスクに集中する必要があるとき(つまり、ほとんどの時間)には、ドアを閉めておけばいいのです。電話、メール、その他の通知などは、止めることができます。
4. 関連するタスクをまとめてこなす
受信と同時にメールに返信していると、集中力が削がれ、脳内でドーパミンが分泌されます。そのような誘惑を避けるためにも、一部のタスクは1日の決まった時間に処理するようにしましょう。たとえば、メールの送受信専用の時間帯を、朝出社してすぐ、昼休み明け、帰宅直前の3回と定めることをZackさんは勧めています。そうすれば、その他の時間帯にメールで仕事を中断されることはありません。
また、タスクを話題ごとに分類すれば、集中力を高めることができます。複数のプロジェクトに関するメールを受信したのであれば、受信した順ではなく、プロジェクトごとに対応するのです。そうすることで、各話題に集中しやすくなるでしょう。
5. 静かな時間を用意して、集中力を持続させる
人間の集中力は平均8秒と言われています。Zackさんによると、「これは金魚よりも1秒短い」のだそう。現代人は起きている間ずっと雑念に囲まれているため、ひとりで静かに考える時間が少ないのです。
ですから、内省のための静かな時間を、1日数分でいいので確保するようにしてください。いわゆる瞑想もひとつの手段ですし、シンプルな5分間エクササイズでもいいでしょう。ほんの数分でいいので、空想の時間を取ってください。
6. Noの達人になる
Noと言うのが好きな人はいません。誰もが、あと少しだったら仕事やボランティアをしても大丈夫だと考えてしまうのです。でも、それは災難へのレシピだとZackさんは警鐘を鳴らします。それよりも、潔くNoと言うことを学ぶべきなのです。
「すべてのリクエストに即答する必要はありません。それどころか、即答しないことが責任を果たすことですらあるのです」とZackさん。それに、Noと言うことはワガママではありません。「『今はできません』と答えることは、『一生やる気はありません』と答えるのとは異なります。今は今やるべきことに集中しているのであって、もし将来的にリクエストを受け入れるときが来たら、そちらにも同じように集中することができることを伝えられるのです。
7. 周囲に協力を求める
「古い習慣からは、なかなか逃れられません。ときどき、昔のやり方に戻ってしまい、ついマルチタスクをしてしまうことがあるでしょう。ですから、家族、友人、同僚に、指摘してくれるように頼んでおいてください」とZackさん。
そうすることで、ひとつのタスクに集中できるのはもちろん、さらなるメリットがあります。それは、周囲が協力してくれるようになること。あなたに雑念が近づかないように、皆でいろいろと考えてくれるようになるでしょう。彼ら自身も、集中しているあなたの邪魔をしなくなるかもしれません。
Stop This One Bad Habit and You'll Increase Productivity 40 Percent | Inc.
Minda Zetlin(訳:堀込泰三)