Inc.:ウェブ解析サービスの新興企業であるCrazy Eggの共同創設者Neil Patel氏に、サービス開始前に知っていればよかったことは何かと尋ねたところ、彼は次のように回答しました。
「価格設定の方法を知っていればよかったと思います。最初に製品をリリースした際、私たちは収入および採算を最大化できるよう最適化した金額ではなく、自分たちが請求したいと思う金額に基づいて価格を設定してしまいました」
おそらく、こういった後悔をしている起業家はPatel氏だけではないでしょう。商売や経営の初心者にとって価格設定は非常に重要であり、かなり大変な作業でもあります。消費者は買い物に関してさまざまな偏見や予想外の傾向を持つことが知られていますが、製品に適正価格をつけることで、大金を損することを避けられるでしょう。
限られた時間の中で、価格設定に関するすべての資料をいちいち読んで値段をチェックせずとも、Patel氏のような後悔をしないで済むにはどうしたらよいのでしょうか? こういった場合、価格設定の心理学に関する膨大な資料が役に立つかもしれません。
心理学に詳しいマーケターのNick Kolenda氏がまとめた、消費者の気まぐれとそれを利用した戦略についての資料の中には、価格設定をマスターするのに役立つアイデアが29個もあります。その中からいくつかご紹介します。
魅力的な価格設定
価格に99で終わる数字を使用するという方法は、有名なもののひとつです。これはKolenda氏の考えた広義のカテゴリー「魅力的な価格設定」に分類される最も一般的な戦術です。 しかし、奇妙なほど、そして非合理なほどに消費者にとって魅惑的な価格は、これだけではありません。Kolenda氏はその他にも多くの戦術を紹介していて、たとえば衝動買いを起こすには99で終わる数字は避け、整数を使用すべき、などといったものもあります。「整数価格(例:1万円)は消費者の脳内ですらすらっと処理されますが、9499円だとそうはいきません。研究者は、価格設定に関するある選択が、より多くの売上を生む場合があると考えています。Wadhwa氏とZhang氏は2015年、整数価格はスムーズに処理できるため、衝動買いには効果的であることを発見しました。消費者が価格を素早く処理できると、その価格は『正しい』と感じられるのです」と彼は結論づけています(その記事は大きく注意も促していますが)。
その他の戦術として、発音するのに音節の少ない価格を選びましょう。「私たちの脳は音声学的に、長い価格を処理するには脳のリソースをたくさん使用します。だから、長い価格は高いに違いないという、間違った推測を行ってしまうのです」と彼は述べています。
「『私は値段を見るとき声に出して読みません。心の中で読むだけですよ』と反対されるかもしれませんが、私も同じです。しかし、調査によればそれは関係ないのです」と彼は読者に保証しています。
価格を再設定する
消費者は価格の文脈にも大いに影響を受けます。これは、無数にある価格設定のテクニックの中から、Kolenda氏が探し当てた事実です。たとえば、送料および取扱手数料は常に別々に書いた方が良いでしょう。
「『分割価格設定』を用いる場合(例:総コストを複数要素に分割する)、消費者には本当の総コストではなく基準価格を提示しましょう。人々は基準価格を競合商品との比較対照にする可能性が高いのです」
また、価格を日割りしてみましょう(例:87円/日)。しかしこの場合は、通常の価格を最優先に表示しましょう。通常の価格の横に小さめのフォントを使用して表示すると、比較的安いと考えさせる効果があります。
The Ultimate Guide to the Psychology of Pricing | Inc.com
Jessica Stillman(訳:コニャック)
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