Crew Blog:リモートワーク(遠隔地勤務)を始めたばかりのころに比べると、私の仕事はだいぶ生産的になりました。仕事を手早く終えられるようになり、優先順位づけもうまくなりました。自分なりの働き方も確立し、生産性が高まる時間もわかってきました。
リモートワークは、誰にでも向いているわけではありません。この記事では、柔軟性と自主性をこよなく愛する人のために、リモートワークに最適な環境(場所、時間、理由、働き方)の見つけ方をお教えします。
働く場所:集中が必要なら静かなオフィスがいい
リモートワーカーには、毎日の働く場所を選べるという利点があります。
つまり、どこで働くのがベストか、何が自分の仕事に悪影響を及ぼすのかを把握しておく必要があります。それを知るには実験が必要ですが、以下を参考にしてみてください。
騒音レベル
クリエイティブな仕事をしているなら、環境雑音がある方が仕事がはかどると言われています。つまり、カフェやコワーキングスペースが最適です。
一方、集中力が必要なタスクに取り組むときは、静寂が必要です。
では、BGMをかけるのはどんなときでしょうか? それは、単純作業をするとき。メールの処理、請求書の作成、スケジュールの計画などをするときは、あまり邪魔にならない程度に、好きな音楽をかけるといいでしょう。
中断
働く場所によって、中断が入る頻度が変わります。在宅勤務の場合、家族による中断が入るでしょう。強制的に休憩を入れるにはもってこいですが、集中して仕事を終わらせる必要があるときには望ましくありません。
作家Austin Kleon氏は、最新刊『Show Your Work』の執筆中、自宅で作業をしていて集中できなかったと言います。
赤ちゃんの声が聞こえないよう、ロフトに上る階段の最上段でヘッドホンをしながら『Show Your Work』を書きました。でもね、ヘッドホンはドアを閉める代わりにはなりませんでした。
コワーキングスペースも同じです。オープンな空間で、たくさんの人が雑談、電話、食事、出入りしている状態です。集中できる静かな空間を必要とする人にとって、その環境がどんな影響を及ぼすか、想像できますよね。
でも、コワーキングスペースには考え方の似ている人と出会うチャンスがあり、人脈作りに最適です。リモートワーカーは、社内で働く社員と違い、他者との偶然の交流が生まれません。たとえ交流がなくとも、行き交う人々を見ているだけで気分がよくなることがあるので、働く場所を決めるうえでこの点を過小評価するわけにはいきません。
バランスが必要なら、これからやろうとしている仕事の内容に応じて、働く場所を変えるといいでしょう。簡単な仕事や、ちょくちょく休憩を入れながら細切れでやりたい仕事は、コワーキングスペースがいいかもしれません。静かな場所でじっくりやりたい仕事は、カフェか自宅オフィスがいいでしょう。
地理
あまり面白くない話題かもしれませんが、通勤時間や通勤コストも大事です。毎朝満員電車に揺られるのが好きな人はいませんし、職場の近くに住み、通勤時間が短いほど、幸福度が上がることが研究でもわかっています。
シェアオフィスやレンタルオフィスの場合、コストも考慮しなければなりません。賃料だけでなく、機器を持ち込む労力や、自宅とオフィスの2カ所に機器を買う費用などがかかります。
人間工学
働く場所は、健康にも影響します。健康を目指すなら、バランスボール、トレッドミルデスク、スタンディングデスク、人間工学設計のイスやキーボード、ラップトップスタンド、セカンドスクリーンなど、さまざまな手段があります。いろいろ試して、自分に合ったものを見つけましょう。
iOSデベロッパーのDavid Smith氏は、自身のポッドキャスト『Developing Perspective』において、大学に入学したばかりのころに教授に言われたヒントを披露しています。それは、「人間工学でもっとも大事なことは、水分補給である」という内容。
ちょっとヘンなアドバイスですよね。でも、いっぱい水分をとれば、トイレに行く回数が増えます。それは、身体にとって素晴らしいことなのです。トイレに行くという行為は、スクリーンを見っぱなしの目にとっては休憩であり、座りっぱなしの身体にとっては運動です。席に戻るたびに、姿勢をリセットできるのも利点です。
デスクに水筒を置いておけば、無意識のうちに水を飲む機会が増えるので、意識せずとも定期的な休憩を取れるのでオススメです。
働く時間:必ずしも朝がいいとは限らない
私は朝型人間です。早起きが好きで、夕方6時には集中力が切れてしまいます。
つまり、私には一般的な9時~5時勤務が向いているようです。でも、そうでない人ももちろんいます。もっと遅くに起きて、少しずつ調子が上がってくる人もいるのです。
リモートワークなら、どんな体内時計を持っていても大丈夫。夜型人間は遅くまで働いて、自分にとってベストな時間に寝ればいいので、健康的なうえに仕事もはかどるのです。
勤務時間を決めるためには、もっとも生産的な時間を選ぶのはもちろん、それ以外にもたくさんのことを考慮する必要があります。家族がいれば一緒に過ごす時間を確保して、約束があれば守ってください。それから、世界中の人と仕事をする場合、同僚との時差も知っておきましょう。
私の会社「Buffer」のチームは完全にリモートなので、メンバーが世界中に散らばっています。各メンバーは、同僚とリアルタイムで話す必要があるときや一緒に仕事をするときは、相手の時間を考慮しなければなりません。そこで、その必要がないように、できるだけ非同期的なコミュニケーション手段を用いています。たとえば、共同作業ドキュメント、メール、Trelloのタスクボードなどです。
「Zapier」ブログに書いたこちらの記事は、世界中に散らばるメンバーの多様な仕事習慣を示しています。
Zapierチームのメンバーは、大音量で音楽を流しながら足を踏み鳴らしている人がいれば、静寂の中で働く人もいます。オフィスで一緒に働く場合、誰もが多少なりとも自分の特異性をあきらめなければなりませんが、リモートワークではそれをあきらめずに済むのです。
私は、独り言をつぶやきながらコーディングをする癖があります。そうすると問題をすぐに見つけられるし、十分に考えることができるのです。それができない場所でコーディングをすると、自分の思考をうまく処理できず、まったくはかどりません。今いちばん近くにいるチームメートが音楽をかけながら仕事をしているので、私の声がかき消されるのはラッキーでした。
働き方:交流が必要な人もいる
自分に適した働き方を知ることで、働く場所や時間を決めやすくなります。でも、それを知るのは一筋縄ではいかないので、試行錯誤を繰り返すしかありません。
なんとなく目指す方向性が見えてきたら、自分に向いている働き方と、そうでない働き方を見分けやすくなるでしょう。
エネルギーレベル
先日、これから初めてリモートで働くという人に、助言を求められました。そこで私は、自分が内向的か外向的かを注意深く考える必要があると答えました。
外向的な人は、人と一緒にいるときにエネルギーをためられます。逆に、内向的な人は、ひとりでいるときにエネルギーがたまります。
リモートワークをしていると、必要なエネルギーを自分で確保することができます。それと同時に、その責任をすべて担っているとも言えます。
極めて外向的な人にとってリモートワークは、必要なエネルギーレベルを保てるだけの交流が期待できません。そんな時こそ、カフェやコワーキングスペースの出番です。また、誰かといっしょにランチしたり、ミーティングや電話をするのもいいでしょう。
働く時間と場所を選ぶときには、エネルギーを保つために、人と交流できる手段、あるいはひとりでいられる時間を確保してください。
コミュニケーション
リモートワーク最大の課題がコミュニケーションです。面と向かってのコミュニケーションでは、自分たちも気づかないうちに、言葉以外のたくさんの情報を伝えています。リモートではそれがありません。特に、非同期式のコミュニケーションに依存している場合はなおさらです。
このギャップを埋めるには、かなりの努力が必要です。全員の最新情報を確認できるシステムを導入し、足並みをそろえるのがはじめの一歩。Zapierのチームでは、「Slack」を使って、メンバーに最新情報を伝えています。「Stripe」と「Buffer」では、社内のメールをチーム全体で共有しています。
非同期コミュニケーションで不足しがちなニュアンスや個性を表すには、絵文字やGIFアニメ、顔文字を使うと良いでしょう。チームメイトとの親密さを築き、お互いのメッセージをよりよく理解するためには、それが重要です。
リアルタイムのコミュニケーションに代わるものはありません。私の経験上、チームメイトと顔をあわせたコミュニケーションを定期的にとることで、仕事がかなり楽になります。何日も私を悩ませていた混乱や不満が、上司や同僚とのビデオ電話であっさり解決したことが何度もあります。
モチベーション
私は外からモチベーションを得て、ストレスをため込んでしまう傾向があります。つまり私は、たくさんのフィードバックとモチベーションを外から得る必要があるのです。それと、タスクリストに圧倒されてしまわないよう、定期的な計画も。
誰もが私のように働いているわけではありません。それぞれに、適したやり方があるはずです。タスクを終えたときの達成感が好きなら、紙のToDoリストを使えば、終わった項目を横線で消す瞬間を楽しむことができるでしょう。あるいは、「iDoneThis」のようなツールを使えば、終わったタスクをチームと共有できます。
私のように、仕事がたまっていくと穏やかでいられない人は、前の晩に翌日のタスクを計画しておくといいかもしれません。それか、ポモドーロテクニックを使って、1度に1つのタスクに集中するのもいいでしょう。
フィードバック
外的なモチベーションが必要な人がいるのと同じように、上司からのフィードバックが必要な人がいます。私もそのひとり。自分の進んでいる方向が正しいのか、常に気になっているので、フィードバックは多ければ多いほどいいのです。つまり私は、上司や編集者に直接、私の仕事ぶりと改善点を聞く必要があります。
「Buffer」チームでは、毎日シンクアップ(同期)プロセスというものを実施しています。メンバー2人が1週間ペアを組み、毎日ビデオ電話をして、仕事と生活の進み具合を共有するのです。これにより、メンバーどうしが直接つながってアイデアを交換できるだけでなく、お互いに健全な習慣を支え合うことができます。
Zapierでは、全メンバーが毎月1回、Wade Foster CEOとの1対1面談を行います。議題は3つ。
- メンバーの仕事改善を手助けするためにWadeにできることは何か。
- 自分の仕事を改善するために、メンバーができることは何か。
- 全員を改善するために、会社ができることは何か。
このような面談を定期的に続けているので、直面している課題や会社全体を良くするアイデアを提案しやすくなっています。
リモートを選ぶ理由:誰もが向いているわけではない
ひとりでパソコンに向かうぐらいだったら、オフィスに通勤してチームメイトとデスクを並べて仕事をしたいという人もいるでしょう。リモートワークは誰にでも向いているわけではありませんが、従来の働き方と比べて、明らかな利点があります。
自由
リモートで働くと、1日を自分で組み立てられるので、生活の中に仕事を組み込みやすくなります。仕事の合間に病院に行くことや、午後に会議を入れることが、オフィス勤めよりもずっと簡単です。でも、働く時間を選べる分、仕事をすぐに先延ばしして、週末も仕事をしてしまうことがしばしば。
私はときどき、共同創設者のJoshとブランチに行きます。都合がつきやすいので平日に行くのですが、カフェは週末よりも静かです。リモートで働いていると、たとえ思い付きでも、このようなプランに合わせて勤務時間を変更できるのです。
成果がすべて
オフィス勤務の場合、労働時間の長短を無視することは難しく、成果そのものへの注目が集まりにくくなります。リモートであれば、上司に常に監視されているわけではないので、必然的に労働時間ではなく成果がすべてになります。
自主性
上司に見張られていないもう一つのメリットが、自主性です。多くの場合、リモートチームは積極的で実行力のある人たちの集まりです。創設者は、いちいち細かく管理できないので、チームメンバーがそれぞれにベストな方法で仕事をこなしてくれることを信じるしかありません。
また、チームメンバーには、やるべきことに集中する能力と、自分で判断を下す能力が必要です。あなたが仕事をしているとき、上司は寝ているかもしれないのですから。
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以上、最適なリモートワーク環境を構築するヒントをお伝えしました。
リモートワーク未経験のあなたにとっては、この記事が、リモートワークを想像する材料になったなら幸いです。
経験者のあなたにとっては、自分に合った環境作りのお役に立てたでしょうか。自分の働き方に注目して、それをヒントに、働く場所と時間を決めるといいでしょう。
とにもかくにも、失敗を恐れないでください。未知の世界を歩くには、トライアンドエラーが最良の友達なのです。
How to find the perfect remote working setup for you | Crew Blog
Bell Beth Cooper(訳:堀込泰三)