すごいアイデアが解決策がひらめいた時は、見えざる力に導かれたような、神がかり的瞬間だと感じることがあります。しかし多くの場合は、それとは逆に、もがき苦しみ、行き詰まり、それでも神が降りてくる気配がないものです。

当然ながら、そこには何のからくりもありません。Harvard Graduate School of Educationの研究者であるデイビット・パーキンズさんは、「苦悩と洞察が一緒になった時にひらめきが生まれる」と言っています。つまり、問題について苦悩することがなければ、洞察にたどり着くこともないということです。

言い方を変えるならば、ひらめきというのは、何度も行き詰まり、たくさんの間違ったアイデアを考えた先にあるということです。パーキンズさんは「過去のひらめきを考えてみると、大事なのは洞察力だけではないことがわかるでしょう。ひらめきは導かれることもあれば、後から付いてくることもあります。普通は多くの苦労を伴うものです」と言っています。

パーキンズさんは、著書『The Eureka Effect: The Art And Logic Of Breakthrough Thinking』の中で、ひらめく瞬間に起こっていることと、いち早くひらめく方法について語っています。

直面する問題には2種類ある

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普通、私たちが直面する問題は、技術的(物理的)な問題か本質的な問題のどちらかです。技術的な問題は、解決するまで一生懸命がんばるしかないというようなものです。楽ではありませんが、本質的だとは思わないでしょう。手すりにつかまって必死に山を登っているような感じです。

一方、本質的な問題は、掴みどころがないものです。山を登るために飛び越えなければならない崖がたくさんある感じです。

直面している問題がどちらのタイプなのかを見極めることは、問題の解決にとって重要なことではありません。パーキンズさん曰く「ほとんどの問題はその2つが混在している」のです。しかし、直面している問題がどのようなものかを把握しようとすることは、より論理的に問題を解決するための第一歩となるでしょう。

「行き詰まっている」のか「途方に暮れている」のか?

もしかしたら、すでに頭の中には解決策があるのに、それではうまくいかないような気がしているだけかもしれません。ただ、行き詰まっているように感じているのです。

または、どこから始めればいいのか、何をすればいいのか、問題を解決するための手がかりが何もないように感じているかもしれません。パーキンズさんは、本質的な問題に直面している人は、ほとんどの場合「行き詰まっている」か「途方に暮れている」と感じているのだと言っています。

行き詰まっている場合は、克服しなければならないものがあると思い込んでいることが多いです。そんな時は、一歩引いて、箱の外に出て考えてみると良いでしょう。

一方で、途方に暮れているというのは、雲をつかむような、道に迷っているような状態のことを指します。おそらく広大な可能性の荒野にいるような感覚になるでしょうが、自分の置かれた立場や現状を理解することで、直面している壁を超える方法が見えてくるはずです。

ひらめきを生むための4つのアプローチ

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もがき苦しむことも解決へのプロセスの一部だということを覚えておいてください。ひらめきというのは、基本的にはこれまであれこれと考えてきたことが急速に再構成された結果として生まれるアイデアです。つまり、ひらめきの瞬間とは、動きまわっていた断片を再編成して、最終的にひとつの場所にはめ込んだ時のことです。

問題を解決するための魔法の杖はありませんが、調査や経験によって早くひらめくようになると証明されている、いくつかの戦略があります。

1.より広範囲を探る

長い間、ブレインストーミングによって問題を解決できるものと思われてきました。しかし、それは運に左右されることでもあります。パーキンズさんは、多くのブレストは客観的に見ると機能していないと言います。しかし、研究によって、ブレストをきちんと機能させる特定のアプローチがあることが証明されました。

たとえば、グループでブレストをする時は、実行する前に各人が問題について考えてからブレストをするようにすると、一緒に考えなくてはいけないというような強迫観念的な縛りや、グループ特有のバイアスを避けることができ、良い結果に結びつきます。「アイデアを共有する前に、各々の参加者が1人ブレストするのが一番いいです」とパーキンズさんは言っています。

もうひとつ効果的なのが、ランダムな刺激を利用する方法です。本の適当なページを開き、目を閉じて言葉を指差します。どんな問題について考えていても、その言葉をヒントとして使うようにすると、新しい組み合わせや予想もしなかった解決法に発展することがあります。

2.問題の本質を見つめ直す

問題を見直すことをしないせいで、問題解決へのアプローチが行き詰まっていることがよくあります。「問題を狭く捉えていることが、洞察を欠いている一番の理由ということがあります」とパーキンズさんは言っています。

間違って設定した問題を解決しようとしている限り、正しい答えを見つけることができません。パーキンズさんが気に入っている戦略は、「本当の問題は何なのか?」とシンプルに自問自答することです。

これは、解決策ではなく、問題自体に対するブレインストーミングのようなものです。問題を新しい視点から見ることで、新しいアプローチを見つける機会ができます。「ここでの本当の問題は何か?」を常に自分に問い続けましょう。

3.異なる分野に目を向けてみる

行き詰まりを感じた時は、自分以外のものに目を向けてみましょう。専門家や友だちに聞いてみたり、関係のない本や記事を読んでみます。人間は基本的に、つながると面白いかもしれないもの、もしくは新しい何かが起こる可能性がある、新しい相互作用を求めているものです。

たとえば、あなたがプロダクトデザイナーだとして、デザイン上の問題に直面しているとしたら、他のデザイナーの友達と話したり、別の分野の建築家やビジュアルアーティストと話してみるということです。自分の業界や分野とは少し違う人の方が、型破りで従来の常識を覆す独創的ことを考えられます。

4.問題から少し離れる

直感的に、問題から離れるというのは、問題解決とは逆のアプローチではないかと思うかもしれませんが、ひらめく瞬間というのは、少し時間をおいた時によく訪れるものです。

時間をおいて、新しい環境に身を置くことで、新しいものや慣れないものとつながった結果、ひらめきも生まれます。また、時間をおくとエネルギーを回復したり、別のことを考える余裕ができます。「問題から離れることで、邪魔になっているバイアスを忘れることができます」とパーキンズさんは言っています。

これら4つのアプローチを試してみても、まだ行き詰まっているかもしれません。その時は、もう1度すべてのアプローチを試してみましょう。

問題を解決する魔法の杖はありません。しかし、矢を矢筒に入れて貯めておくことはできます。どこか違う場所に行ったら、筒から出して矢を放ちましょう。それによって問題を解決できる保証はありませんが、やってみるだけの価値はあります。

Jane Porter(原文/訳:的野裕子)

Image by Seamartini Graphics (Shutterstock). Additional photos by Emma Kate and Sebastien Wiertz (Flickr).