「あぁ、ハワイでおいしかったガーリックシュリンプが食べたい...」

その願い、どんな検索エンジンよりもスパッと叶えられるかもしれません。

今春リリースされたグルメサービス『SARAH』は、お店ではなく「食べたメニュー」を投稿する口コミサービス。食べログ、ぐるなび、Rettyなど従来のグルメ口コミサイトが「お店」を基準にしていたのに対し、SARHAは「レストラン・ライフハッカーのアラビアータ」といったように、メニューを基準とするのが特長です。

この特長により、SARAHは大きく2つの機能を持っています。「メニュー選びのサポート」「味覚の学習によるレコメンド」です。

1.食べたいメニューを軸にレストランを検索

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SARAHのメイン画面。「メニュー名」「お店」「エリア」からメニューを検索できる

従来のグルメ口コミサイトで「渋谷 オムライス」と検索した時に表示されるのは、「オムライスを提供してくれる渋谷にあるお店の一覧」でした。一方、『SARAH』の場合は「渋谷で食べられるオムライスの一覧」が表示されます。また、投稿には「温かいもの」「胃に優しい」「辛い」「がっつり」「こってり」「美肌」「低カロリー」など、細かなタグをつけることも可能なため、自分の気分に合わせた直感的な検索がしやすくなっています。

「今日なに食べたい?」と聞いて「うーん、昨日飲み過ぎたから胃に優しいものがいいな...」と言われてもツッコミを入れずにメニューを提案できるわけですね。

株式会社SARAHの高橋洋太代表取締役は、『SARAH』が生まれたきっかけをこう話します。

高橋:前職のニューヨーク出張で食べた「ハニースペアリブ」が、どうしても食べたくなった日があったんです。でも、たとえば「渋谷」×「スペアリブ」で検索しても、お店のランキングばかりが表示され、結局見つけられなかった。それが、SARAHを思いついたきっかけになりました。特に、海外で食べたものを検索できないという悩みは、周りに聞いても結構あるようでしたから。

食べたいものがはっきりしている時はもちろん、記事冒頭のように「カクテルシュリンプ」「魯肉飯」「クスクス」など、"大好物なのだけれど見つけられないマニアックな料理"を探しやすいのはSARAHの大きな魅力といえそうです。株式会社SARAHでCTOを務める林健一さんは「みんながまだ気づいていない、食べたいメニューで探す、という体験を根付かせたい」と意気込みます。

また、ユーザーにより「栄養素や素材などのメニュー情報」が付与されることで、アレルギー食品を外したい人、ダイエットを気にする人などにも役立つでしょう。

2.ユーザーの味覚を学習して投稿を表示する

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初回起動時の画面。ファーストステップは、SARHAに好き嫌いを感じてもらうところから

SARAHには「ユーザーの味覚を学習する機能」もあります。初回起動時には「この料理が好きか嫌いか」という選択肢が複数表れ、まずは基本的な味覚データベースを作成します。メニューの投稿や、その際に付与したタグ(機能公開予定)、他のユーザーが投稿した料理への「LIKE」、気になる料理をまとめておける「CLIP」といった機能を使えば使うほど、SARHAはユーザーの味覚を学習していきます。

その学習は、表示されるメニューのランキングや、他のユーザーをレコメンドする結果に表れていきます。イメージとしては、SARHAが「この人は酸っぱいものが苦手」と判断すれば酸味の強い料理を勧めなくなりますし、「薄味が好み」なら同じく薄味を好むユーザーの投稿を優先する...といったように、学習結果からユーザーの味覚を推測してコンテンツを表示するのです。

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投稿画面。評点のメジャーは0.5点刻み

既存のグルメ口コミサービスは「あらゆる味覚を持つ人たちによる店舗への平均点」か、「専門家や美食家などのユーザー単位による店舗に対する評価」を基準としていました。SARHAも個人ベースでの評価には変わりありませんが、仮に「3.5点」という評価がメニューになされていた場合も、自分の味覚と近い人の「3.5点」であるため信頼性が高まるといえます。ゆくゆくは友達の味覚も掛けあわせ、「一緒に行くならこの店もいいよ」とSARAHが勧めてくれるといった機能も検討中とのこと。

「みんなの好きより、わたしの大好き」でメニューを選ぶ

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SARAHからFacebookに投稿すると、ちょっとリッチなフレーム付きで投稿されるのもユニーク

「レストラン選びはほぼIT化されているけれど、メニュー選びをサポートするサイトはあまりない」と、高橋さんと林さんはSARAHの今後に大きな期待を抱いています。そこで、いくつかの疑問を投げかけてみました。

── 期間限定メニューなど、投稿した料理がいつもあるメニュー以外のものはどうする?

「現状考えている対策は2つあります。1つは、"期間限定"や"日替わり"の投稿に関して別画面を設けるなどの機能実装を予定しています。もう1つはなくなったメニューは削除するなどといった、店舗に協力してもらう方法です。現状では店舗運営者が情報を修正する機能はありませんが、こちらも徐々に実装していきたいと考えています。CGM(消費者がコンテンツを生成していくメディア)ということで100%正確な情報は望めませんが、いまは店舗運営者側のITリテラシーもかなり上がっています。決済やPRにもウェブを活用している事例も増えてきたいまだからこそ、馴染みやすいサービスだと考えています」

── 「あそこは店主が交代して味が変わった」という話も耳にしますが、そういった状況にはどう対応しますか。

「多くの人に食べてもらっていくうちに、次第に修正されていくと考えています。データベースとしては、最新情報を優先していくことでそれを支援します」

── 店舗評価型の口コミサービスで、異常に評価が低いと思ったら、ほとんど店員への愚痴で料理については触れていない...というケースも見受けられます。SARHAについてはこのような意見をどう取り扱いますか。

「ガイドラインを設けていて、悪意をもった投稿や、単なる悪意はNGで弾いています。主観の"おいしい/まずい"はデータベースの1つなのでOKですが、個人への誹謗中傷や店員を名指しで怒るといった事実が確認できないものについてはNGです。また、現状はスタッフを常駐し、投稿はオールチェックしています」

現在はウェブ版、iOSアプリ版での提供ですが、Android版については2015年内のリリースを予定。ベータ版から数えてすでに累計7万件の投稿があったそうですが、好みの情報に出会える機会がまだ少ないかもしれません。しかし、今後、ユーザーからの投稿数が増えるに連れて、より使いやすいサービスになっていくはずです。グルメ好きだけでなく、日常の意思決定をサポートするツールとして、付き合っていけそうな価値を感じます。

SARAHのキャッチフレーズにもある「みんなの好きより、わたしの大好き」を軸に、アプリを使ってメニューを選ぶ時代はそう遠くない未来になるかもしれません。

SARAH[サラ]-メニュー単位で探せるグルメスナップサイト

(長谷川賢人)