「漠然と毎日を過ごしているだけで、一向に人生が好転する気配はない...」と感じているなら、それは成果を生まない悪習慣を続けているからかもしれない。
そう分析するのは、『一流の人はなぜそこまで、習慣にこだわるのか?』(小川晋平、俣野成敏著、クロスメディア・パブリッシング)の著者。加えて、悪習慣を「成果を生み出す習慣」に少しずつ変えていくことで、新しい視野が開けてくるとも指摘しています。そして本書で伝えたいのは、「習慣を変える方が楽ですよ」ということなのだとか。
一生続けられて成果が出ることだけを習慣として取り入れていく。そのとき、自分の好き嫌いを基準にするのではなく、好き嫌いの余地を入れないようにする。これを正しい要領で行うと、もはや道に迷うことはなくなります。(「はじめに」より)
「朝の習慣」「昼の習慣」「夜の習慣」「毎日の習慣」「毎週・毎月の習慣」「毎年の習慣」、そして「一生の習慣」と、習慣をさまざまな角度から捉えているのが特徴的。きょうは第4章「脳と体のキレを上げる『毎日の習慣』」から、3つのポイントを引き出してみたいと思います。
アイデアを考えるときのコツ
アイデアを考えるときは、うまく自分の仕事をコントロールしないと、多くの時間を取られてしまうことになります。たとえば本の企画を考えるとしたら、多くの人は「いい企画を出そう」と悩むもの。しかし、著者が「それは正しいゴール設定ではありません」と主張するのは、「いい企画とはなにか」が決まっていないから。そうである以上、「話にならない」と一蹴されてもおかしくないというわけです。
そういう意味でも、もっとも確実なゴール設定は「これを拒絶する人がいたらアホだ」と思えるアイデアを考えること。だとしたら、そのためには上司の考え(判断基準)を知る必要があるでしょう。しかも「いい企画」の定義は、会社の方針や部の戦略、上司の性格や考え方、あるいは市場環境によって変わるもの。だからこそ、せめて大枠くらいは決めておいた方がいい。それは「お弁当屋さんが新作メニューを考えるとき、弁当箱の大きさと予算と顧客ターゲットを決めてからメニューを考えるのと同じ」だと著者は説明しています。
そしてゴール設定ができたら、次は実際にアイデアを考える段階へ。アイデアを考える基本は「発散」と「収束」であり、ひたすら案を出すフェーズと、これぞというものを選ぶフェーズの2段階に分かれているそうです。さらに期限から逆算し、「いつまでに案を何本用意し、いつまでに何本に絞り込もう」とアイデア出しのフレームを決めておくことも重要。各フェーズで「出し切った!」という自信を持つことができれば、アイデア出しのワンサイクルが完結することになります。
とはいえ、その途中で完璧だと思えるアイデアが出たら儲けものですが、そうなる可能性はそうそう高くないもの。そこで、発散のフェーズでは数の多さにこだわりたいと著者はいいます。そして収束させるときは、最初に定めたゴール設定を基準にしつつ、ひたすら悩み抜くことが大切だそうです。(94ページより)
判断するときは対極軸を考える
自分が絶対に正しいと思ったことでも、その逆の意見は必ず存在するもの。著者はそれを「対極軸の発想を持つ」と表現しています。また、広い視座と高度な交渉術が求められるビジネスパーソンにとっては、真っ先に身につけておきたいスキルだとも。
たとえば会議の席で発言した際、誰かから反論が入るとします。そこで反論できないのは、対極軸を想定していなかった証拠。別な表現を用いるなら、対極軸にあることをあらかじめ考えておけば、反対意見をいわれても即座に反論できるわけです。
ただし忘れるべきでないのは、下した判断の「基準」がわかっていないと反論のしようもないということ。なぜなら人が判断を下すとき、必要になるのは基準だから。とはいえ難しいのは、「基準AだとX社、基準BならY社」というように、基準によって結果が別れる場合。こういうときこそ上司の出番で、つまり判断を下すという行為は、基準を考える行為でもあるということです。
なお、基準を用いた思考方法として、著者はマトリクス思考を勧めています。これは対極軸(基準)を2つ使う思考方法で、縦軸と横軸からなく4つの事象で物事を考えるということ。「やる」「やらない」などの物事を「よい」「悪い」で考えると、「悪い」の選択肢が消えることに。そして、そこにもうひとつ基準を足すと、消えた選択肢が復活。ひとつの基準では消えてしまう可能性のある領域が、基準をふたつに増やすことで無限大に選択肢が広がるというわけです。

一度消えてしまう領域が復活するということは、その領域を選ぶ人(競合)が少ないということ。新規ビジネスの設計であれば、独占市場を狙えるということになるという考え方です。(98ページより)
感情は解釈次第でいくらでも変わる
上司から怒られたとき、「理不尽だ」と感情をむき出しにするか、「自分は将来、部下にこんなことはいわないようにしよう」と前向きに状況を分析するか。どちらを選ぶかはとても重要。つまり感情の世界とは、解釈の世界に過ぎないということです。そして感情には反射と判断の2工程があり、最初の反射だけは抑えようがないのだとか。むかつくものはむかつくし、怖いものは怖いということ。
「うれしい」「楽しい」といったプラスの反射は、そのまま受け止めればいいだけ。しかし「怒り」や「哀しみ」などマイナスの反射を引きずったまま後工程の段階に入っていくと、マイナスの反射を増幅させる危険性が。それを防ぐには、いかにマイナスをプラスに変えるかしかないといいます。
「リフレーミング」という家族療法の用語があるように、「捉え方」を変えることによって、成果が出しやすい方向へと判断を変えていくことができるということ。そしてその捉え方とは、「自分はハッピーエンディングの物語の主人公であると信じること」だと著者は主張しています。そう考えることにより、なにが起きても「未来をどう明るくするか」しか考えないようになれるそうです。
たしかに、起こってしまったことは変えようがありませんし、きょうという日も変わらないもの。でも、明日からをいかにワクワクした気分で迎えられるかは、自分の意思で変えていけるという考え方です。そしてマイナスの反射をプラスに解釈するためには、ひとえに経験を積むしかないということ。(113ページより)
ひとつひとつの項目が理解しやすく、しかも「一生続けるほど重要なことではない」と感じる部分は読み飛ばしてもかまわないと著者。そんなこともあり、気負うことなく楽な気分で読み進めることができるはずです。
(印南敦史)