また、いつもの舗装された退屈な道を走るのですか? 美しい景色があり、小鳥がいて、いくつもの坂道を越え、ひょっとしたら熊に出くわしてしまうかもしれない野山を、自由に駆け巡ってみるのはいかがでしょう。

「トレイルランニング」はほんの少し準備をすれば、素敵な体験をもたらしてくれるはず。ロードランニングからトレイルランニングに切り替えるために必要なことを紹介します。

靴を買いなおす

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申し分のないランニングシューズをもう持っているなら、靴については心配ないと思っているかもしれません。でも、トレイルランニングをするなら、靴選びをもう一度初めからやり直して、トレイルランニング用の靴を選んでください。

嬉しいことに、ロードシューズの中にはトレイルランニング兼用の場合もありますから、お気に入りの靴があるなら、そこから始めるのが良いでしょう。(私は、「Nike Free」で両方をこなしています)。靴を選ぶときは次のことに留意してください。

・靴底が滑りにくいこと:今持っているロードシューズの底が平らで、凹凸が無く、固いなら、トレイルランニングには不向きです。濡れたところやでこぼこしたところでも滑らない靴を探してください。

・泥や水に耐えられること:湿地帯だったり春先だったりすると、ぬかるんだ地面や水たまりを走ることになるかもしれませんし、橋や飛び石の無い渓流を渡らなくてならないかもしれません。防水加工された靴なら少しはましですが、河川敷をたくさん走り抜けるなら、むしろ速乾性のあるメッシュシューズにした方がいいでしょう。

・緩衝性があること:岩の多い道を走るなら、足と地面の間にゴム製の厚い靴底があるといいです。一方で、最小限の装備をもつトレイルシューズが好きな人もいます。もし、あなたがそういう靴がいいと思いながらも、まだ試したことがないなら、自分の走る道に慣れて実際には岩がどれくらい多いかがわかるまでは、その中間的な厚さの靴底を選んでください。そうすれば、いつでもラクに最小限装備の靴に変えられます。

緩衝性の高いトレイルシューズを選ぶときのルールはロードシューズの場合と同じです。靴が自分の足のタイプに「合っている」かどうかより、履きやすさの方が大切です(「自分に合った」靴の選び方のルールは、ほとんどが間違いだと判明しています)。そして、自分の好みのものを見つけたらそれをずっと使いましょう。手始めに、緩衝性の高い靴に関してはこちらをチェックしてみてください。そして、ここにあるようなレビューや毎年発行される靴の手引書に注意しておきましましょう。

無理にペースを上げない

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走りながら自分のペースを記録しているなら(あるいはタイムを後で分析しているなら)、パラダイムシフトを体験することになります。舗装道では走る速度でどのぐらい自分が頑張っているかが測れますし、「何キロ走るか」と「普段のペース」がどのぐらいかわかっていれば走る時間の長さも計画できます。しかし自然道では、それが一切通用しません。

初めてトレイルランニングに挑戦したときは、いつもより時間がかかってしまって、ショックを受けたりがっかりしたりするかもしれません。でも、それが普通なのです。上り坂はきついです(そして、上り坂のときにロスした時間を下り坂で取り戻すことは絶対に不可能です)。そればかりでなく、岩や木の根っこをよけながら走ったり、滑りやすいところを走り続けるのに挑戦したりしてもペースが落ちます。さらに、障害物を避けて着実に足の運びを調整しようとして、多くの場合はいつもより筋肉を酷使しています。8キロのトレイルランニングをすると、舗装道を8キロ走るよりツラく感じますし、時間も長くかかるのは確実です。

この新たに直面する現実への対処法は以下の通りです。

・ペースを気にするのを止める:腕時計は自宅に置いてくるようにして、ランニングアプリのペース・アラートの電源を切りましょう。

・心拍計を使ってトレーニングする:もし、どうしても自分の頑張りを数字で計りたいならです。走るペースが遅くても心臓がドキドキしていたら、自分が頑張っているのがわかります。

・時々歩く:舗装道では途中で歩いたりせずに走り続けるのが理にかなった目標ですが、坂の多い自然道ではそれも無理なことが多いです。長距離のトレイルレースをする人と話すと、地形が荒いところを走っているときや、まだ何時間も走らなければならないとわかっているときには、走りに「歩き」も混ぜているはずです。足早に歩くことを練習しましょう。特に上り坂やでこぼこしたところでやってください。その方がゆっくりジョギングするより速くて効率が良いことが多いです。

自分の進歩を数字で見たいなら、毎月同じところをトレイルランニングしてタイムを計りましょう。あるいは、トレイルランニングの練習に頑張った結果として、走れる距離がどのぐらい伸びているかに着目しましょう。

安全性を確保する

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トレイルランに出ようとする際には、次のようなリスクがあることを覚えておいてください。

まず、道に迷うかもしれません。たとえ、標識が見づらい自然道とわかりにくいジグザグ道のせいで、私はGPSから目が離せなくなったことがあります。どうやら3本の主要幹線道路に囲まれた小さな三角形の森の中にいたようです。しかし、自分の周りの地面からは、主要幹線道路にも通じるはっきりした道があるようには見えませんでした。自然道を辿っていくしかなかったのですが、Google マップに自然道は載っていません。しかもそのとき、太陽が沈もうとしていて携帯電話は電源切れ直前でした。

長いトレイルランニングやハイキングに出かけるときは必ず以下のものを携帯しましょう。

  • 懐中電灯(たとえ暗くなる前に家に戻れると思っていてもです)
  • 携帯電話のポータブル充電器
  • できれば自然道の地図
  • 自分で必要と思う以上の食べ物と水
  • 悪天候になったり、野宿する必要が出た場合用に、極薄素材で作られた防風・防寒用・防水のスペースブランケットか非常用装備

上記は私の必需品ですが、より詳しくは「安全なハイキングのためのチェックリスト」をご覧ください。当たり前のことですが、近所の公園でたった5キロほど走るのに、こんな完全装備はいりません。しかし、もっと長時間走る場合や、不慣れな土地へ出かける場合は、小さなバックパックあたりを持って行った方がいいでしょう。

道に迷う可能性を低くするためにまずするべきことは

道に迷ったその夜に、私は自分のいる場所の緯度と経度を夫にメールしました(今の私ならしょっちゅう使っているGoogleのcommute sharing機能がまだ無いときだったのです)。彼は私が残していった自然道ガイドブックを手に取り、Google上の地形やサテライトビューと照らし合わせて、携帯の電源が切れる前にもっとも早く大通りに出られる道を教えてくれました。これが、トレイルランニングの安全性を保つもう1つの方法です。

自分で緊急事態に備えた安全装備をしていくことに加えて、自分がどこへ行くつもりでいつ戻ってくる予定かを誰かに伝えておくことです。そして、何かあったらその人が道を探すのを手伝ったり、捜索の人を差し向けられるように十分な情報を伝えておきましょう。

・自然道の目印を読めるようになってください。普通は木や岩にペンキで長方形が描いてあります。目印の付いた道を歩き続けるようにしてください。

・初めて挑戦する自然道の場合は、その土地を良く知っている人と一緒に行ってください。多くの地域ではハイカーやランナーがFacebookにアップしていたり。別のグループがいたりするかも知れないので、そういう人たちに連絡を取ることが可能です。グループでのランニングに参加するのは、自然道を安全に学ぶ最高の方法かもしれません。

・標識がわかりにくい自然道を見失わないためのコツはこちら。そして、取り返しがつかなくなるほど本格的に迷ってしまう前に引き返すことを考えてください。まだ来た道を戻れるだけの時間と光があるうちにです。

怪我は、また別の大きなリスクです。舗装道を走っているときは、つまづいて転ぶことはほとんどありませんが、定期的に自然道を走ると、そのうちけつまずくこともあるでしょう。膝をすりむくよりも深刻なことになった場合は、どうやって家に帰るか考えてください。足首を挫いてしまい、自分の車から5キロも離れたところにいるとしたらどうしますか?

道に迷ったときのためにセットアップしておいたコミュニケーションラインがここでも役に立ちます。携帯電話を使う、自分の行先を誰かに言っておく、などです。道が険しいときや携帯電話がつながるか不安なところを走るときは友達と一緒に走るのが安全です。あとは、身分証明書を財布か荷札かRoad IDのようなブレスレットに入れて携帯することを考えてください。

楽しんで走る

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ちょっとした危険はあるものの、トレイルランニングは楽しくて病みつきになります。素晴らしい景色が見える山頂や尾根に辿りついたとき、そこからの風景は特にこたえられません。野生動物が好きならトレイルランニングは最適です。トウヒチョウハシボソキツツキアカフウキンチョウなどはトレイルランニングでしか見たことがありません。

トレイルランニングに十分な時間を費やすと、丘の上にいる獣みたいになって、どうしてロードランニングをしている友人たちは行く手が険しくなるとみんなフウフウ息を切らせているんだろうと思うようになるでしょう。足首と膝から下の筋肉が強くなり、フットワークが以前より軽快になっているはずです(それが役立つスポーツをするといいですね)。次にキャンプに行くときは、普通のハイカーよりずっと早く目的地の風景を見ることができるでしょう。

楽しそうだと思うなら、トレイル・レースを選んでそれに向けて練習をしてみてください(トレイルランニングは病みつきになるので多くのレースはウルトラ・マラソン級の距離です)。そのときは、正しい靴を選び、腕時計を捨てて、安全装備をしてください。

楽しく走れますように!

Beth Skwarecki(原文/訳:春野ユリ)

Photos by Toby Adams, Mark Tighe, Ferris Buller, kcxd, and Scott Wylie.