みなさん、はじめまして! この春からシンガポールに移住する小川麻奈と申します。それがきっかけで、ライフハッカーでシンガポールに関する記事を執筆することになりました。

私は生まれも育ちも日本。海外旅行こそたくさんしてきましたが、留学を含めて海外に住んだ経験は一度もありません。そんな私が、2015年4月からシンガポールに生活と仕事の拠点を移しています。今回は、私がなぜシンガポールに移ることにしたのか、ということを踏まえて、シンガポールに感じた魅力を5つのポイントに絞って紹介していきます。

人の可能性を支援する仕事をしていました

自己紹介をかねて、これまでのことを簡単に。私は大学卒業後から現在まで約8年間、日本の人材業界で主に転職支援のビジネスに携わってきました。新卒で入社したのは株式会社インテリジェンス。大手人材紹介会社の転職支援事業部で約4年間、金融業界の企業担当として金融機関の中途採用支援を担当。インテリジェンスを退職後は、金融業界専門のエグゼクティブサーチファームに身を移し、ヘッドハンターとして約4年間従事。中途採用で即戦力を求める企業・金融機関と、さまざまな理由から転職やさらなる活躍の場を検討されている個人の方々との間に立ち、双方を支援するのが、これまでの私の主な役割でした。

学生時代に「人の可能性を支援することを仕事・ビジネスにしたい」と考え、それを実現するための手段として転職支援のビジネスに取り組んでいました。ですが、実際にたくさんの転職事例を経験する中で、「転職以外」のかたちでも人が自己実現をする仕組みがあっても良いのではないか、そんな思いが芽生えました。

そこで、2011年9月に私自身が立ち上げたのがソーシャルコミュニティ「Girls Bee」です。Girls Beeは『あなたの"なりたい"がかなう』をテーマとして、主に社会人の女性を対象に、「なりたい自分」や「やりたい仕事」を実現させていくためのきっかけを提供する機会を企画し、運営しています。現在4年目、これまでにのべ700名ほどの方にご参加いただきました。年齢は10代から60代まで、業界もさまざま。独身、既婚、お子さんのいらっしゃる女性まで幅広く、コンセプトに共感してくださった方々にご参加いただきながら運営を続けています。

海外経験のない私が、思い切ってシンガポールに移住した理由

シンガポールへの移住を決めたのは、大きく2つの気持ちがあったからです。

まずは、年齢のこと。2015年の1月、私は30歳になりました。20代後半の女性にとって「30歳」というのはひとつ大きな節目。30歳を超え、今後の中長期的な理想の人生を今一度思い描いた時に、いずれは結婚もして、子どもも産みたい。そう考えると、自分だけの判断で、自分の人生を自由に考え、行動できる時期はそう長くないはず。小さい頃からの夢であり目標だった「いつか一度は海外で仕事がしてみたい」を実現するタイミングは今しかないな と考えました。

そして、新しい働き方をより実践したいと考えたこと。言い換えると「より自由に、国籍、場所にとらわれない働き方」です。今回、私はある米国系企業のシンガポール法人に転職しました。そこはクライアントに、彼らがビジネスを進めるにあたって必要な情報や知識をもつ専門家をプロジェクトベースでつなげていく...そんなビジネスをしている会社です。情報を提供する専門家は、専門知識を持つ研究者や大学教授などをはじめ、経営者、フリーランス、会社員として仕事をしている方であっても参画していただける仕組みです。会社全体では、ニューヨークを本社に、ロンドン、シンガポール、香港、上海に拠点があり、シンガポールはアジアパシフィック地域を統括する位置づけ。私はそこで、主に日本企業からの依頼を担当します。

シンガポールオフィスで一緒に仕事をする仲間は、シンガポール人、日本人に限らず、中国人、インドネシア人、韓国人などさまざまな国籍やバックグラウンドを持つ人たちになります。そして、日々の案件はシンガポールだけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジアそれぞれの拠点にいるメンバーと世界各国からの依頼を連携して対応します。

そのような環境の中で、私自身が日本で生まれ育った一人の社会人として、国籍、場所にとらわれず仕事ができるようになること。さらには、仕事を通じて周りの人、そして日本の労働市場に対しても、「より自由に、国籍、場所にとらわれない働き方」を啓蒙、促進できると考えました。日本においても、「同時に複数の企業との間で仕事をする」といった分野が、近い将来当たり前の世界になると私は考えています。こうした新しい働き方を促進していく分野に大きな可能性を感じ、私自身のキャリアを構築する会社として、参画することに決めました。

この2点が、30年間日本で生まれ育った私が、今シンガポールで新たにチャレンジする理由です。そして、この挑戦する心を支えてくれるのに、現在のシンガポールを取り巻くビジネスの環境は、とても魅力的に映ります。たとえば、以下の5つの魅力が挙げられます。

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シンガポールの海沿いのオフィス街
ここには多くの金融系企業のアジアパシフィックの本社が集まっています

シンガポールの魅力1:アジアのハブ。日本を含めたアジア諸国の情報が集まり、アクセスしやすい立地

シンガポールは今年で独立50年、まだまだ歴史の新しい国。一方、ここ数年の同国の経済発展はめざましく、東京23区とほぼ同じ大きさの国土にも関わらず、2007年にはGDPが日本を抜いてアジアでトップに。これはシンガポールが、周辺アジア諸国にアクセスしやすい立地を生かし、外資企業の積極的な誘致と、アジアヘッドクオーターとしてのブランディングに成功したともいえる結果です。

隣国のマレーシア、タイ、インドネシアといった国々へは1~2時間前後でアクセスが可能。また日本との時差も1時間のため、日本に所在している企業とのやりとりもしやすい環境にあります。

私自身にとってこの立地メリットはとても大きいです。時差がほとんどないことから日本とのビジネスが継続できること、ここシンガポールにいるだけででアジア全体の情報、世界の情報が幅広く日々キャッチできること、そして周辺諸国へのアクセスの良さはGirls Beeをアジアや中東諸国で展開していきたいという構想を進めていくにあたり、非常に都合のよい場所ということも、シンガポールを選んだ大きな理由のひとつです。

シンガポールの魅力2:英語圏の国。ビジネスの実践の場として優れる

多民族国家であるシンガポールの公用語は、英語、マレー語、中国語(北京語)、タミル語。現地のシンガポール人は、英語での教育を中心としながらも、もう1つ自分の民族の母語となる言語を学ぶことが義務づけられ、国民のほとんどがバイリンガルで、3つの言語を操るトリリンガルも多くいます。また、特に若い世代はより英語教育中心に育ってきていることもあり、ビジネスや行政などの場で使われるのは主に英語です。シンガポールとよく比較をされる国として香港が挙げられますが、香港はどちらかというと中国語圏で、外国人の割合も香港が約8%なのに対し、シンガポールは約28%(永住者を除く)となっています。

世界を舞台に仕事をしようとした時に「英語が使える」ということはビジネスマンとして必要とされる必須条件。私自身は、帰国子女でもなくまた留学経験もありませんでしたが、日本での仕事上、英語を使う場に恵まれ、ほぼ独学でビジネス英語を使う術をなんとか身につけてきました。

一方、より高度な英語での交渉やプレゼンテーションといったことが当たり前のように出来るためには、英語圏の環境に住み、暮らし、仕事をする必要があると考えました。シンガポールは英語圏の国ですから、うってつけでした。

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金曜日の夜のオフィス街の近くにあるBar
ここで働く、さまざまな人種がいるシンガポールでよく見かける光景

シンガポールの魅力3:多民族国家であり、みんな"違う"のが当たり前

シンガポールは小さな国土に多種多様な人種が共存しているのも特徴的です。国民の内訳は中華系、マレー系、インド系を中心に、駐在している欧米系や日本人、また永住権を持った外国人などです。歴史的にもさまざまなバックグラウンドの人が混在してこの国を作っているので、見た目だけで「何人か」を判断するのは難しいほどです。私自身引っ越して間もないですが、住んでいる地域のローカルなスーパーで買い物をしようとしていると中華系シンガポール人だと思われているのか、中国語で突然話かけられることが多々あります。そんな風にどんな外見であっても、ローカルなのか、外国人なのかわからないぐらいいろいろな民族が共存しているのが、シンガポールなのです。

それぞれの民族に歴史や文化があり、ことなる背景から生まれる価値観があります。また、宗教的な価値観の違いも人生や生活に大きな影響を与える要素のひとつです。

日本で暮らしていると、このような「違い」への意識を持つことなく、また持つ必要にせまられることもあまりありません。一方、国際社会を舞台に生きていきたいと考える場合には「みんな違って当たり前。みんなが"違う"中から、どうやってみんなが納得する結論を見出していくのか」といったスキルがとても重要です。多民族国家であるシンガポールは、そのようなスキルや感覚を身につけるのに最適な場所。ここで暮らし、仕事をする中で、私自身もその感覚とスキルを磨いていきたいと考えています。

シンガポールの魅力4:女性が自然体で仕事ができる環境

昨今、日本でも「女性活躍」という言葉をよく耳にするようになりました。一方、「女性活躍」という言葉が使われるほど、日本がまだまだ「女性が活躍しずらい国」であるということを実感せざるを得ません。

シンガポールの女性の就職率は57.7%、日本の46.2%に比較をして10%ほど高くなっており、25~39歳の出産・育児にあたる年齢層の就業率は、シンガポールが日本を13%以上も上回っています。国際労働機関(ILO)の報告によると、アジアでの女性管理職比率はシンガポール31.4%、日本は16.8%。上場企業における女性の最高経営責任者(CEO)の割合は全体の4.6%、EUの2.8%を大きく上回っているというデータも出ています。

シンガポールでも女性の社会進出についての議論があるようですが、少なくとも日本より進んでいる背景には、そもそも「女性だから」という区分けがなく、前述のようにさまざまな人種や民族が共存する中で、すべての人に平等の機会が与えられているように、性別の違いで差をつけるような感覚が存在していないように感じています。

また、ベビーシッターの料金が安く、育児の負担を軽減できる環境や、掃除や洗濯などの家事代行サービスが日本に比べて浸透していること、外食でも安く済ませられることなどが文化的にも浸透、定着しているのも背景にあると考えられます。

私自身が実際にシンガポールで暮らし仕事をする中で、日本との環境との違いをどのように感じるか。また日本がシンガポールから「女性活躍」に関して何を学ぶことができるのか。そのあたりについてもこれからリサーチしていきたいと考えています。

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シンガポールの新しいシンボル、日本でも有名なマリーナベイサンズを見上げた様子

シンガポールの魅力5:快適な住環境と治安の良さ

シンガポールでの住まいは3つに大きく分かれます。HDB(政府が運営する公団住宅)、コンドミニアム、一軒家のようなタイプです。多くのシンガポール人はHDBに住んでいる人が多いようで、海外からの家族連れの駐在員はコンドミニアムに、また海外からの単身者の多くはHDBやコンドミニアム、またはシンガポール人がオーナーの一軒家を借りるか、シェアするかたちで住んでいます(シンガポールには、日本によくあるワンルームや1Kのような間取りのマンションが多くありません)。

家賃が高いことを除いては、住環境はとても快適。私自身は今回プールやジム付きのコンドミニアムにシンガポール人の女性と一緒に住むことになりました。

交通機関は地下鉄やバスが発達しており、車がなくても簡単に街中を行き来できます。車を所有するとなると非常に高価ですが、タクシーは日本と比べると非常に安いです。

食事に関してはバラエティに富んでおり、中華や洋食はもちろん、和食や日本でよく見かけるファストフード店も多数。ショッピングモールやスーパーマーケットはそこかしこにあり、日本の食材を調達できるスーパーもあります。

アジア諸国では、まだ女性が一人で外に動き回れるほど治安のあまりよくない国が多々ありますが、シンガポールについてはその限りではなく、女性一人で夜も出歩ける環境があります(もちろん、海外で暮らす以上、自分の身は自分で守る自己責任の意識は大切です)。

よく言われるのは、「治安は良いし、住環境も快適だけれど、何せ狭いのですぐに飽きるよ」という話。住み始めて間もない私にはまだあまり実感のない話ですが、日々の生活がコンパクトかつ快適にできて、もし飽きるようなことがあれば週末などを利用して気軽に海外旅行をすることもできます。求めるライフスタイルは人それぞれ。住み始めて1週間ですが、日本人の女性にとっても、自由で快適で充実した生活を送ることができる、そんな場所な気がしています。

今回は私がシンガポールに拠点を移すことに決めた理由とともに、シンガポールの魅力を紹介しました。

私にとって、シンガポールがいつまで生活と仕事の拠点であるのかは全く決まっていません。ただ、小さい頃からの私自身の夢だった「日本と海外とを行き来して生活・仕事をすること」、そして「さまざまな人種やバックグラウンドを持つ人たちがいる環境の中で、ひとりの日本人のビジネスマンとして活躍すること」という私自身の"なりたい"をかなえるために、しばらくシンガポールを中心に活動していきます。

今後もシンガポールに関わる情報、そこで働く人、仕事、ライフスタイルに関わる情報を私なりの目線で発信をしていく予定です。どうぞお楽しみに!

小川麻奈(おがわ・まな)

人材コンサルタント/Girls Bee ファウンダー&代表

2007年国際基督教大学社会科学科卒業。学生時代から、人の可能性を引き出すことをビジネスとすることに強い興味を持ち、新卒で人材総合サービスの株式会社インテリジェンスに入社、中途採用・転職支援の事業に従事。その後、金融業界専門のエグゼクティブサーチファームへ参画し、ヘッドハンターとして主にアセットマネジメント業界のサーチを行う。その傍ら、「転職」だけではなく、よりさまざまなアプローチで人の可能性の支援をしたいという思いから、2011年9月にGirls Beeを立ち上げ、さまざまな女性の「なりたい」をかなえるべく、代表として運営中。2015年4月からは生活と仕事の拠点をシンガポールに移し、世界規模の新たな人材関連ビジネスに参画。また、Girls Beeの本格的な海外展開に向けて準備を進めている。