タブロイドより転載:企業年金の持っている本質的な問題点を解決するための手段として考えられた制度が「確定拠出年金」であるということは前回お話しました。この制度が始まってから14年が経過し、今では日本全体で加入者の数は500万人を超えています(2014年12月末現在)。
日本の企業の内、この制度を採用しているのは2万社近くもありますから、恐らくこれを読んでいる方の中にも確定拠出年金に加入している人はたくさんいるだろうと思います。
ところが、仮にこの制度に加入していたとしても、実際には仕組みがよくわからない、あるいは入っていること自体も知らないという人も、実は多かったりすると思います。
何も難しいことではない
そもそも名前がわかりにくいですね。「確定拠出年金」、いかにもカタい名前です。でも別に、これは難しいものでも何でもありません。簡単に言えば、これは「退職金の前払い」です。
退職金というのは会社を辞める時に支給されるわけですが、それに備えて会社がお金を積み立てておきます。つまりお金を積み立てて運用したり管理したりするのは会社です。
ところが、確定拠出年金というのはそのお金を毎月社員に渡してしまうのです。ただし、渡すと言っても現金で渡すわけではありません。社員1人ひとりに積立金の専用口座を作って、会社が毎月そこに一定のお金を入れます。そしてそのお金を加入者である社員が自分で管理・運用するという仕組みです。
さらにそのお金は、何があっても60歳までは絶対引き出すことができません。要するに確定拠出年金は「退職金の前払い」なのですが、現金で支給されず口座にお金が積立てられ、かつ、そのお金は60歳まで絶対に引き出せないという前払い退職金だと考えればいいでしょう。
以前、退職金とか企業年金というのは給料の後払いだと言いました。後払いすなわち、退職した後に支払うものですから、当然そこまでは会社がそのお金を預かって管理・運用していくことになります。
ところが確定拠出年金はそれを前払いするというのですから、毎月毎月積み立てられた掛金は会社ではなく、すでにもう社員個人のものになっています。
つまりお金を出すのは会社だということは今までと変わりませんが、その積立てたお金を管理するのを会社から社員に移したということです。ということは、確定拠出年金に加入している人は自分の年金資産を自分で運用しなければいけないということです。
もしあなたが確定拠出年金に入っていたとしたら、このことをご存知でしたか? もしそうでなければ次回以降もぜひこの連載コラムをしっかり読んでください。
(大江英樹)
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