在宅勤務など、メンバーがばらばらで働くリモートチームにいると、コミュニケーションの重要性が身に染みてわかります。顔を合わせることができない分、それぞれの状況がほとんどわからないからです。そのため、ベストなコミュニケーション手段を見つけることが不可欠です。

たとえば、チームが同じオフィスで働いていれば、誰かがふさぎ込んでいてもすぐにわかります。それがいつもの行動であれば、「昨夜よく眠れなかったのかな」「ストレスが多いのかな」などと心配する必要はありません。

オフィス内の騒音や、外で行なわれている道路工事などの状況にも、気づくことができます。メンバーが集中している時とそうでない時を見分けることもできるでしょう。

私たち人間は、このようなシグナルの察知に長けています。毎日の交流の中でこれを繰り返し練習し、言葉以外にも、ボディランゲージや声のトーンを使ってコミュニケーションを取っているのです。

でも、リモートチームの場合、それらの文脈はほとんど失われます。ですから、別の方法でそれを補ってやらなければなりません。以下に、いくつかの方法を紹介しましょう。

リモートチームで密な関係を築く方法

リモートチームで新しい仕事を始めると、最初は違和感を覚えるでしょう。知らない人ばかりの新しいオフィスで働くよりも困難は少ないものの、孤立感がつのります。

いずれ、メンバーとの何らかの交流ができてきます。筆者が経営する会社「Zapier」では、数カ月に1回のペースで社員旅行を実施しているので、そのようなイベントで直接会うこともあるでしょう。でも、1度も会ったことがない人と、密な関係を築くにはどうしたらいいのでしょう。

そこで、密な関係を築くための標準的な方法を紹介したうえで、それをリモートワークに応用する方法を考えてみます。

FBIの対敵防諜活動トレーニングセンターでリードインストラクターを務めるRobin Dreeke氏は、著書『It's Not All About Me: Ten Techniques for Building Quick Rapport With Anyone』において、人との関係構築のための基本的なテクニックを解説しています。たとえば、笑顔でいること、見下している印象を与えないようにあごを引く、握手の強さを合わせる、ゆっくり話すなどの方法が紹介されています。

しかし、これらは顔を合わせないシチュエーションだと、ほとんど役に立ちません。では、リモートチームの場合、どうやって強固な関係を築けばいいのでしょうか? Dreeke氏の方法の中でも、以下の2つは、リモートチームにも応用できるでしょう。

1つ目。新しい人に会うことは、会話に時間制限がないと恐怖になりやすいとDreekeは指摘します。人は新しいシチュエーションでは、本能的に脅威を探す生き物なので、密な関係ができ上がるまでは警戒心が先に立ちます。人工的に時間制限を作ることで、新しい人との会話のプレッシャーを和らげることができるのだそうです。

新しいチームメイトとの間で電話会議やビデオ会議をするなら、15分間の時間制限を設けてみてはいかがでしょうか。

2つ目は、自分のエゴを抑えて相手の話に耳を傾けることで、相手を承認すること。「つまり、こちらから言うことは何もないので、あなたの言うことを聞きますよ」という意思を相手に示すのです。

Dreeke氏によると、エゴを抑えるためには、会話に参加したい気持ちを抑えて、「いつ?」「どうやって?」「なぜ?」といった、短いオープンクエスチョンをするのがコツだそうです。

また、研究結果によると、傾聴と相手の話題を伸ばす質問をすると、あなたの好感度がアップして、また話したいと思われることが明らかになっています。

まとめると、新しい人との会話を始める前には終了時間を決めて、中断や自分語りをせずに、短いオープンクエスチョンをするといいようです。

正しくテキストに依存する

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チームとしては、「Skype」「Sqwiggle」「Google Hangouts」などのチャットツールを使うことが多いでしょう。これらは非同期式のコミュニケーションと異なり、タイムラグや誤解などが生じにくいため、前述の密な関係を築くためにも役に立つツールです。

それでも、文字によるコミュニケーションも多いと思います。「Slack」「HipCat」「Capmpfire」の共有資料、メール、「GitHub」など、手段はいろいろありますが、文字によるコミュニケーションは相手を邪魔しない連絡手段として、もっとも便利なツールです。

リモートチームにとって、文字によるコミュニケーションの向上は非常に重要です。企業によっては、採用時にそこをチェックすることがあるようです。たとえば、BufferのLeo Widrich COOは、こう言っています。

会社の文化に合うかどうかを測るために、メールでの言葉遣いを見ることがあります。私たちはリモートチームとして働くので、メールでのコミュニケーションは非常に重要で、そこから感情を読み取る能力が不可欠なのです。

リモートチームの場合、論点を明確かつシンプルに示す必要があります。また、共感や理解を示しつつ、時差によるロスをなくすために有効な手立てを考えなければなりません。

そこで、文字によるコミュニケーションに有効な、3つの手段を紹介します。

1. 常に最新情報を

チームメイトが地球の裏側にいると、目が覚めたときや昼休みから戻ったときに、受信箱やチャットメッセージがあふれていることがあります。これではげんなりしてしまうので、何とかして効果的なコミュニケーションをとるための手段が必要です。

たとえば、「Stripe」では、社内のメールの大半を共有しています。そうすることで、透明性を保っているのです。

Stripeではアーカイブリストを作っていて、関係のないメールはそこにCcされます。つまり、会議招集のために誰かとやりとりする際、みんなの受信箱をあふれさせることはなく、後でその情報がほしくなったら、誰でもさかのぼって読むことができるのです。StripeのGreg Brockman CTOは、こう説明しています。

機密事項やプライバシーを共有するのが目的ではありません。誤って何人かの受信箱に豊富な情報眠らせてしまうことを防ぐのが目的です。

Zapierの場合、1対1のチャットにはSlackを使っています。ZapierのメンバーであるJason Kotenkoは、複数のSlackチャンネルで起こっていることを把握するスマートな方法を考案しました。

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Kotenkoは、ディスカッションをしない空のチャンネルを作りました。このチャンネルが、休憩でコンピュータを離れるメンバーのプレースホルダーの役割を果たします。彼らが休憩から戻ると、アクティブなチャンネルはすべてブックマークされており、見逃したディスカッションにすぐ追いつくことができるのです。

2. 絵文字やGIFアニメを使う

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私は絵文字が好きではないので、あまり使いません。あまりにも子どもじみていて、プロとは思えなかったからです。でも、ある知人の意見で、絵文字に対する見方が変わりました。

その知人は、最近メールに絵文字を使うようになりました。その理由は、文字のみでのコミュニケーションでは声のトーンや表情がわからないため、ニュアンスや感情を伝える方法として絵文字が効果的だからというものでした。確かに的を射ていると思います。

GIFアニメーションも同じカテゴリーに該当すると言えるでしょう。経験上、HipChatとSlackチャンネルは、GIFのヘビーユーザーに向いています。私はあまり使ったことがありませんが、それらのツールを使えば、文字によるコミュニケーションに、彩、トーン、感情を付加することができるでしょう。

3. ハンロンの剃刀を忘れない

哲学において剃刀は、ある現象に対する説明をはぎ取る概念として使われます。「ハンロンの剃刀」は、私たちはまず、悪意よりも無知を想定すべきというアイデアを指すものです。つまり、誰かが何かの間違いを犯した時、相手があなたを傷つけるために故意でやったと思うべきではないということです。単純なミスだった可能性の方が高いのだと。

文脈が失われた状況では、これが特に重要になります。時差を伴う文字によるコミュニケーションをしている場合、誤解が生じても、それは悪意ではなく無知のせいだと思うようにしてください。

私の経験上、これはよく起こります。Bufferのリモートチームで働いていたとき、COOとよく電話口でケンカになりました。多くの場合、足並みがそろっていないために誤解が生じていただけだったということが、後からわかるものです。

必要に応じて自己主張する

リモートコミュニケーションにおけるコンテキストの欠如を埋める最もハードで明確な方法が、いつもよりも自己主張をすることです。上でも述べたように、オフィスで一緒に仕事をしていれば、相手の感情を察することができます。一方、遠隔地で働いていると、気分が乗らない相手にチャットを送りつけて、さらにイライラさせてしまうこともあるでしょう。これは、避けることができません。つまり、情報が少ないために、相手に敬意を示すことが難しくなってしまうのです。

この問題に対処するためには、お互いに自分の背景状況を明確に伝え合うための方法を見つける必要があります。そのために効果的な方法が、事前にルールを定めること。

たとえば、Zapier共同創設者のJosh Sharpと私は、「Viber」を使ってコミュニケーションを取っています。「これからランチ」「今から会議」などの短いメッセージを送ることもあれば、重要な課題についてリアルタイムチャットをすることもあります。私たちにとってViberは「常時ON」のチャンネルなので、仕事を中断されたくない時は、会話から外れているという意思表示をはっきりさせる必要があります。そこで私たちは、暗号を決めることにしました。

「Tree Time」というのが、邪魔されたくない時間を意味する暗号です。由来は忘れてしまいましたが、「ちょっとTree Timeをください」と書けば、「気を悪くしないでほしいけど、いま集中する時間が必要なので、しばらく邪魔しないで」という意味になります。

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事前にルールを決めてあるので、どちらもその選択肢を取ることができます。相手を傷つけることなく、静かな時間を見つけられるのです。

自分のニーズを明確に伝えるには、時に困難を伴います。ほとんどの人が、チームメイトにそこまで率直になれずにいるのです。でも、あなたのニーズや感じていることは、あなた以外の誰にもわかりません。そのギャップを埋めて、相手がベストなコミュニケーション手段を取れるようにすることができるのは、あなた自身しかいません。

たくさんの方法を紹介しましたが、何よりも大事なのは、自分たちのチームや自分自身に合った方法を見つけること。

ベストな方法を見つけるには、いろいろな選択肢を試してみるしかありません。その際、気に留めておくべきなのは、自分の状況のコンテキストをチームメイトに伝えられる方法を見つけること。チームメイトは、あなたと最高の仕事をするための情報を必要としているのです。

Bell Beth Cooper(原文/訳:堀込泰三)

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