99u:会社でよくある会議の光景を思い出してみてください。いつも同じ人が話をしているような気がしませんか? 自分のアイデアがよくスルーされているような気がしませんか? そんな状況を変えることはできます。

自由な形式の会議が必ずしも良いアイデアを生むとは限らないことが研究によって証明されています。まず、会議の前半に出るアイデアが影響力を持つ傾向にあります。それに、アイデアの良い面よりも悪い面の方が、私たちの判断に影響を与えます。そして、会議というのは、ほとんどの話を同じ人たちがしています。

従って、より柔軟な環境で積極的に意見を交換できる会議になるよう、発想を変える必要があります。1番大事なのは、いつも同じ人の意見ばかりに耳を傾ける場ではなく、友好的な方法でアイデアを出し合える場にすることです。新しいアイデアを出し、それをスクラップ&ビルドするような会議は、ボクシングの「スパーリング」にたとえることができます。

スパーリング会議では、みんなの前で仕事やアイデアやプロジェクトに関する質問をする機会があり、威圧的ではなく価値のあるフィードバックをもらえます。デザインやクリエイティブに関わる仕事でも、意見を戦わせられるスパーリングの場を設け、オーナーや社長、フリーランスから新入社員まで、あらゆる立場の人の意見を聞いてみましょう。意見の食い違いはあっても、衝突はしないようにします。

スパーリング会議の基本的な役割

スパーリング会議には「話す人」「聞く人」「進行役」3つの役割分担があります。

話す人は、この場でスパーリングしたいアイデアや考えを説明します。いろいろな意見を取り入れるために、普段はあまり会議で意見を述べない人が、話す人になるのが望ましいです。新入社員や若手社員、中途採用の人などがおすすめです。聞く人は、ベテランでも新人でも社内のどんな人でもよく、話す人に質問をして、アイデアの新しい可能性を広げます。進行役は、中立な議長のような立場で、手順に沿って会議を進め、参加者がきちんと自分の役割を守るようにします。

進行の手順

実際のスパーリング会議はどのように進んでいくのでしょう? スパーリング会議には以下の4つの手順があります。

1. 気づいたことを述べる

まず、話す人は自分のアイデアやプロジェクトや意見を1分半ほど説明し、それを中心に会議を進めます。たとえば、話す人が「オフィスのデザインを新しくすることについて話し合いたいと思います。共同作業ができる、オープンスペースにすることを優先した方がいいと思うのです。あらゆるところにイスやソファを置いて、壁はできるだけなくしましょう」と言ったとします。

聞く人は、この意見に対して気づいたことがあれば、「ビリヤード台を置きたい」とか「オシャレにして協力し合えるのかわからない」など、どんなことでも述べていきます。話す人が説明した後で、聞く人は、「ワクワクした」とか「それは大事なことだ」とか、アイデアを聞いて最初に思ったことや、それに対する意見や感想などを述べます。

2. 話す人が聞く人に質問をする

聞く人は、質問をされたら誠実に、話を逸らさないよう聞かれていることに対して忠実に、答えなければなりません。たとえば、より協力し合えるデザインにオフィスを変えるというアイデアに対して、話す人が「オフィスに共有のテーブルしかなかったとしたら、どう思いますか? オープンなオフィスで生産性は上がると思いますか? 机は、プロジェクトごとや部署ごとなど、どのように配置した方がいいと思いますか?」と聞いたとしたら、聞く人はこの質問に答え、自分の考えを共有します。進行役は議事録をとり、聞く人だけが質問をするようにきちんと会議を進めます。

3. 聞く人が話す人に質問する

今度は立場が逆になり、聞く人が話す人に質問をします。ここで1番大事なルールは、質問の裏にある思惑が出ないような、中立的な言葉で質問することです。たとえばこのような感じです。

「そのようなオープンな雰囲気にすると、どんな課題がありそうですか?」

「周りの声がうるさくなった時に、静かにするためのルールを設けますか?」

「クライアントとのミーティングはどこでやるのでしょう?」

話す人はこのような質問に答え、聞く人は質問を続けます。進行役は議事録をとり続け、聞く人がきちんと中立的な質問をするよう気をつけながら会議を進めます。

4. 聞く人が意見を述べたい時は、最初に話す人に許可をもらう

聞く人が意見を言いたい時は「そのことについて言いたいことがあるのですが、聞いてもらえますか?」と尋ねます。意見を述べることを人に認めてもらうことで、悪意なく会話は進み、聞く人はその人の言動に無理矢理賛成させられるような気分にならずに、耳を傾けることができます。たとえば「オープンなオフィスにするというアイデアに意見があるのですが、聞いてもらえますか? 内向的な人間にとって、周囲に人がたくさんいるオープンスペースで仕事をするのは難しいです。その環境でうまく仕事ができるとは思えません。オープンじゃないスペースが必要な人のために、小さな別のスペースもあった方がいいかもしれません」など。

チームでスパーリング会議をやってみる

スパーリング会議はとても強力な効果があるので、個人的な意見を言うよりも、よく考えた質問をすることを優先すべきです。上記4つの手順をきちんと守って会議を進めると、個人の意見を言うよりも、提案された問題や仕事について話し合うことに集中できます。1人1人の考え方は違うので、できるだけ率直で生産的な話し合いをしましょう。

見本となるようなスパーリング会議をしている会社はあまりありませんが、ドリームワークスは「Life's a Pitch」というプログラムを作っています。社員は、スパーリング会議のような話し合いをすることが奨励され、上層部とクリエイティブなアイデアを話し合うために、部署を越えたチームを作ってトレーニングされています。弁護士からエンジニアまであらゆるレベルの社員が、自分のやりたいことを提案することができます。

ドリームワークスは、このプログラムを通して他社にはない強みを持つ企業文化と多様な社員を涵養し、それらを有効活用することができました。また、自社以外でもスパーリング会議と似たようなワークショップを開催しています。そこで素晴らしいアイデアを出したチームは、ドリームワークスの管理職クラスの社員に対してプレゼンをすることができます。

スパーリング会議にはいろいろなかたちがあります。

  • 15分スパーリング

    何か問題や障害にぶつかった場合に、チームの頭脳からアイデアをもらうために、即興で開催するスパーリング会議です。

  • 1時間スパーリング

    1カ月もしくは3カ月に1回、差し迫った問題について話し合うためのスパーリング会議を設定します。アイデアが飛び交うような状態にするには、いろいろなチームの人が一緒に参加するといいです。クライアントを招待してもいいかもしれません。

  • 半日スパーリング

    これまでなぜかやらなかったプロジェクトをやるために、それぞれの部署の才能ある人を集めて、半日をかけてスパーリング会議をします。斬新な解決法を生み出すために、あらゆる才能を結集させて活用します。

スパーリング会議は簡単ではありません。適度な緊張感と議論のある場を作らなければならず、それを恐れる人もいるかもしれません。しかし、創造性の欠片もない退屈な会議よりも、本当に必要なアイデアが生まれる興奮がある方がいいですよね?

How to Disagree (Without Being a Jerk)|99u

Erica Dhawan(訳:的野裕子)

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