1.期待しない

2.他の子どもや兄弟と比較しない

3.親バカになる

4.ママ友と群れない

5.育児本に頼らない

6.世界中を敵に回しても子どもの味方になる

(「親も子どもも幸せになる! テキトー母さん6か条」より)

1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』(立石美津子著、日本実業出版社)の著者は、冒頭で上記のような「6か条」を掲げています。そして自分自身の体験、長年の教育現場での体験を通して「完璧主義ではなく、テキトーに育てることが、人生のスタート時点で自己肯定感を確立させ、幸せな人生を送ることにつながる」と確信するようになったのだとか。

現在も保育園、幼稚園で0歳〜小学校低学年の子どもたちと触れ合っており、自身が自閉症児を育てる母親であるというだけに、なおさら説得力があります。

では、子育てに際してはどんなことに気をつければいいのでしょうか? 「言葉編」「お勉強編」「家の中編」「お出かけ編」に次ぐ第5章「お母さんの行動編」を見てみましょう。

ママ友に同調しない

女性は群れたがる生き物、しかも仲間はずれにはなりたくないですから、みんなでつるんで、仲よしを装うのは無理もないと著者はいいます。とはいえ、あっちにもこっちにもいい顔をすると、疲れてしまっても当然。八方美人は本音を口に出さないので、心は解放されないわけです。そして賛成したくないことに同意しければならないような場面になると、自分の心にウソをつくことになり、ますます疲れてしまうという悪循環。

だからこそ、まわりの意見を鵜呑みにせず、自分の頭で考えるのが大切です。押しの強い相手から同意を求められた場合は、なにも反応しないことです。なぜなら首を縦に振ってしまうと、「仲間」に引きずり込まれてしまうから。

良好な人間関係をつくっていくうえで、場の空気を読むことは必要。しかし、だからといって議論をふっかけたり、間違いを正面から否定することは必要なし。ただ、勇気を持って黙っているだけでいいということです。

安易に同調してしまうと、意見を利用されてしまうこともあるので、なにを言われてもブレない信念を持つことが大切だと著者は主張しています。(182ページより)

エラそうなことをいわない

「最近、子どもを置き去りにしたくなるんだよね......。母親失格かな......」と、こぼすママ友に対するテキトー母さんの適切な答えは、「たしかに、子どもをどこかに置いてきたくなるとき、あるわよねー」というもの。むしろ、エラそうなことや説教がましいことはNGだと著者はいいます。それは、うつ病患者に対するカウンセラーの対応にも近いとか。

カウンセラーにとっていちばん大事なのは、相手に寄り添い、共感すること。そうでないと「やっぱり私の気持ちをわかってくれない」と感じ、信頼関係を築くことはできないからです。つまり上記のテキトー母さんも、「そうなんだ」というだけではなく、「置き去りにしたくなるわよね」とママ友の気持ちをことばに出したことがよかったというわけです。

それは子どもに対しても同じ。親は「強い子になってほしい」という思いから、つい頭ごなしに子どもの感情を否定してしまいがち。しかしそんなことを続けていると、子どもは気持ちを押し殺す癖がつき、思春期以降、心に歪みが生じるそうです。

泣きやませようと励ましたり、お菓子を与えて気をそらせたりするのではなく、ただ共感し、落ち着くまで見守ることがなにより重要だということ。(186ページより)

自分を子育ての犠牲にしない

どんなに子どもを愛していても、甲高い声で騒がれたり、目の前をバタバタ走り回られると、ときにはイライラして当然。耐えきれずに大声をあげたり、手が出てしまったりすることも。そんなときは、子どもを変えようとするよりも、自分の状況を変える方が手っ取り早いと著者はいいます。

子育てに疲れたら、がまんしないのがテキトー母さん。イライラしたり、疲れすぎて子どもの相手ができないときは、耳栓とアイマスクを使ってみてもいいかも(耳栓は、子どもにバレないように髪の毛で隠しておいた方がいいそうです)。

また、トイレやお風呂場に逃げ込んで、5分くらいリラックスしてから戻るだけでも、だいぶ気持ちが落ち着くといいます。他にもアロマを炊いたり、BGMを流したり、ガムを噛んだり、自分の平静を保つための「避難方法」はさまざま。自分に適した手段を準備して、できる限り落ちついた姿勢で子育てするように工夫するのが大切だということです。(194ページより)

「ありのまま」の姿を受け入れる

自閉症児を持つ親として、著者は障がい児のことにも触れています。子どもに障がいがあると、不便だったり行きにくいと思う場面が多々あるもの。なぜなら世のなかは、健常者が生活しやすいようにつくられているから。

でも、それは決して「不幸」ではないのだと著者は強調しています。むしろ「障がいがあるとかわいそう。不幸だ」という親の固定観念があると、悲しい気持ちが生まれてきても当然。

そして子どもにとってなにより不幸なのは、ただひとり、誰よりも味方になってほしい親から、自分を受け入れてもらえないこと。「健常児と同じようになってほしい」という親の思いは、子どもにとってはありのままの自分を否定されていることになるといいます。だからこそ大切なのは、AD/HD(注意欠如/多動性障害)であろうと自閉症であろうと、それらを「障がい」ではなく「特性」と捉え、それに沿った手段を示してやることだそうです。

親も受け入れず、担任やクラスメイトにも特性を伝えないまま集団内に放り込まれた子は、成功体験や達成感を味わうことが難しくなります。しかしそんな環境では、エネルギーや学習意欲は湧きません。それどころか、次のように坂道を転がり落ちる人生になってしまうこともあるといいます。

1.集団行動がとれない。じっとしていられない。集中できない。学力低下。

2.先生から叱られる。友だちからのいじめ。

3.「自分はダメな人間」と自己否定。

4.楽しくない学校生活。

(201ページより)

こうしたストレスが思春期以降、不登校やうつ、引きこもり、リストカットなどの自傷行為、他人への暴力など、2つ目の障害(=二次障害)として現れるケースもあるのだとか。だからこそ大切なのは、世界中の人間を敵に回しても、子どもの味方になろうという思いだと著者は記しています。(198ページより)

「テキトー母さん」というスタンスは、どこかユルくも見えます。しかし、実はそれがとても大切なのだということを、本書はしっかりと教えてくれるはずです。

(印南敦史)