『クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST』の著者オースティン・クレオン氏が言うように、運が良ければ好きなことを職業にして生活の糧を得ていけます

大抵の人は、自分がやりたいことと生計を立てるための仕事は別で、それぞれに時間を使っています。この2つが重なることはほとんどないのです。要するに、やりたいことに時間を使っているときは報酬は得られず、仕事をしているときはお金、福利、自由などを報酬として受け取りますが、楽しんではいないということになります。

やりたいことがお金にならない場合

これは趣味と呼ばれるものです。お金にならないことをするのは、継続可能なキャリアではありません。

趣味へのアプローチは2つあります。趣味のままにしておいて満足し、収入は別のことで得るようにするか、人にお金を払ってもらえるようになるぐらいまでがんばって自分のスキルを向上させるかです。

Sean McCabe氏は2つ目のアプローチを「オーバーラップ・テクニック」と呼んでいます。趣味と、それとは別の全く関係の無い日々の仕事とを重ねて1つにしてみることで、趣味をするときに心に余裕がもてます。趣味に十分な時間を使い、それを本当に仕事にしたいかどうかがわかってくるでしょう。そして、それまで趣味をすると感じていた収入源に関するプレッシャーを無くすことができるでしょう。

Sean氏にとっては、ハンドレタリングを学んだときがまさにそれでした。彼は今やハンドレタリングで大変有名です。ウェブデザイナーを職業にしていたとき、Sean氏は自分の好きなハンドレタリングの練習に空き時間を使っていました。自分が創作したハンドレタリングを発表することが増えて、ハンドレタリング・サービスを仕事として立ち上げたのです。

やがて、需要がどんどん増えて、もともとの仕事を辞めて趣味を生業にできるようになりました。

好きではないことをして生計を立てる

もう1つの究極は、需要はあっても楽しめないことをやることです。生活費を稼ぐ仕事は様々なことを満たすので、ある一定の期間なら可能です。しかし好きでないことをしてキャリアを築いていると、慢性的ストレス、エネルギーの低下、倦怠を招き、場合によっては燃え尽きてしまうかもしれません。

この状況の厄介な点は、そこから抜け出るのが本当に大変だということです。請求書の支払いができて、素敵な福利厚生があり、自律性があり、この会社に勤務すると社会的信用が得られる、という快適な立場に置かれるのです。このような利益を諦めるのは難しいことです。保障された場所から出ていくのは怖いことでもあります。

しかし仕事で活力を得るよりも消耗することが多く、人生に仕事以外の余地が無くなります。健康や大切な人との関係や趣味が犠牲になってしまいます。

内省的な人(独りで過ごすことでエネルギーを得られる人)が他人に囲まれた状態で平日の大半を過ごすようなものです。あるいは、外交的な人(他人といることでエネルギーを得る人)が平日の大半を独りで過ごすようなものです。毎日の終わりには、どちらも消耗と倦怠に苛まれることになるでしょう。

私は1日の仕事の後でそんなふうに感じたくはありません。

好きなことをして見返りが得られる仕事を見つける

誰もが自分の仕事を楽しみたいと思っています。しかし楽しめて、且つ、生計を立てていくのに十分な需要がある仕事を見つけるにはどうしたらいいでしょうか。出発点として以下のことがあげられます。

・時間をかける

Sean McCabe氏から学んだもうひとつの重要な教訓は、これをしたいというコンセプトよりも、それをしていく「プロセス」を楽しめるか本気で試してみるということです。多くの作家は「書くこと」は楽しくないが、「書き上げた」ということを楽しんでいると言っています。自分の仕事のプロセスを楽しめないと、この先何年も日々をそれに費やしたいとは思わないかもしれません。

生活費を得るための仕事を始めるのは、それ以外の選択肢をテストするのに良い方法です。実験か趣味としてとらえ、上達するために時間をかけます。絵を描くことを選び、2、3週間後に思っていたほど楽しめないとわかったら、別の選択肢に移ればいいのです。

新しいタイプの仕事の現実は、それを始めてみて暫くたたないとわからないものです。

・需要を調べる

Sean氏のレタリングの話は、それでお金を稼ごうとする前に需要を調べるという良い例です。レタリング愛好者と自分の仕事を共有することで、Sean氏は十分な需要を生み出し、結果的にレタリング・アーティストを生業にしました。

新しいタイプの仕事を始めるときは、自分の進歩や自慢できる作品を他人と共有しましょう。これにより自分がやっていることを世間に知らしめて、公私にわたりスキルの上達をさせてくれます。

これはポートフォリオやパブリック・ショーウィング、あるいは、どうやってゼロから新しい作品に仕上げていくかのケース・スタディの形にすることもできます。

・独自のアングルを見つける

アプローチに関して他人と違う点は何でしょうか。今まで誰も言わなかったことで自分なら言えることは何でしょうか。ツール、スタイル、テクニックの新しい組み合わせとして思いつくことは何でしょうか。

自分の独自のアングルを見つけると、自分がやりたいことで、且つ、需要もあるという観点から、自分だけのニッチを切り抜いていくのに役立ちます。

人まねには需要はありません。独自性のあるものを誰もが求めているのです。

今あるものの中に隙間を見つけ、自分がしていることのユニークな点に焦点を当てましょう

やりたいことをして収入も得ていけるようなキャリアを見つけられたら、仕事をすると元気になることに気付くでしょう。1日の仕事の終わりには、疲労感でなく気分爽快と感じるはずです。そして、友人や家族と過ごすためのエネルギーが十分に残っていて、新しいスキルや興味のあることを開拓する余地も残っているはずです。

How to love what you do (and make a living too) |Crew

Belle Beth Cooper(訳:春野ユリ)

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