「人づきあい」は生まれつきの才能ではなくて、コツをつかめば、誰でも、いつからでもスキルとして身につけることができる、と私は思っています。
『人の気持ちがわかる人、わからない人~アドラー流 8つの感情整理術~』(和気香子著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、「はじめに」にそう記しています。そしてビジネスパーソンに対するコーチングを続けるなかで、「人の気持ちがわかる人は、そもそも自分自身がどのような気持ちでいるのかに敏感」だということに気づいたのだとも。自分の状態を知ったうえで、どう感情を整理するかを心得ているということ。そして人の気持ちをわかるために必要なことは、次の2点だといいます。
1.【他人・自分・物事】をどういう視点でとらえるか
2.いかに想像力を働かせるか
上記を基盤とした本書から、きょうは第2章「人の気持ちがわかる人は苦手な人ともうまく付き合える」を見てみましょう。
よい点を探そうという視点
自分のなかに複数の視点を持ち、ものごとを柔軟にとらえること。それは人間関係などで悩みを抱えている人には特に効き目があるといいます。いろいろな人とうまくやっていければ、気持ちが楽になって居心地もよくなり、ストレスフリーで過ごせるものだから。しかし「この人、苦手だなあ」と思いはじめると、その人のことばかり考えてしまうようになります。
そんなときに著者が勧めているのは、まず「その人に対してイヤだと思う点」を、「もうありません」というところまで挙げてみることだとか。すべて吐き出してしまうと、心のモヤモヤが晴れ、前に向かう気持ちがでてくるというわけです。そして重要なのは、イヤな点を挙げていくと、よい点が出てくるものだということ。
「誰にでもひとつは必ずよいところがある」という精神論で心を紛らわすのではなく、よい点を探す方向に脳を使うと、脳は問題解決のために信じられないほど活躍してくれるということ。脳の特性を活かせば、頭に投げかける質問によっては、苦手な人を減らし、生きやすくなれるわけです。
ステップ1
「この人、苦手だなあ」という相手のイヤな点をすべて、紙に書き出す。
ステップ2
書き出してスッキリしたら、「そうはいっても、よいところは?」と考えてみる。すると、ひとつくらいはよい点が見つかり、相手への気持ちが変化しはじめる。
ステップ3
相手との関係を改善するために、できることを考えてみる。どんな小さなことでもよしとすれば、なにか見つかるといいます。
(58ページより)
なお書き出すだけでなく、誰かに話を聞いてもらうのでもいいそうです。(50ページより)
反対から見てみるトレーニング
「反対から見てみる」とは、言い換え(リフレーミング)をするということ。同じことでも言いまわしを変えることで、まったく逆の印象が生まれるわけです。そしてそれを利用して、苦手な人や事柄に対しての見方を変えていくことが可能。たとえば「飽きっぽい」→「好奇心旺盛」、「人になかなか気を許さない(壁がある)」→「人間関係をじっくり築き上げる」、「優柔不断」→「人に気遣いする」という具合。前者が欠点のように聞こえるのに対し、後者だと長所として感じられるということです。
もともと好感を持っている人に対しては、自然に後者のような見方ができます。しかし好感を持っていない相手に対しては、前者の見方をすることが多くなるはず。だからこそ、「反対から見てみる(言い換え)」のトレーニングをすればいいという発想。「反対から見る」という視点のパワーはとても強く、相手のいちばん嫌いな部分が、いちばん好感を持てる特徴へと変化することさえあるといいます。(59ページより)
反対から見る(言い換える)力を鍛える
言い換えの能力は、簡単なトレーニングで身につくといいます。大切なのは、意識してやってみること。言い換えをしても、なかなかそのとおりには思えないものですが、無理やり思おうとするのではなく、言い換えてみるだけでいいわけです。
するとどこかで、言い換えてみた思考の部分と、気持ちの折り合う部分が出てくるといいます。いま苦手だと思っている相手のことを、半年後も同じように苦手に思い続けているとは限らず、いつからでも人との関係は変えられると著者は主張しています。そして時間のあるとき、次のエクササイズを試してみることを勧めています。「反対から見る(言い換え)」の練習問題です。
1.飽きっぽい →
2.意志が弱い →
3.暗い →
4.浮気っぽい →
5.こだわりすぎる →
6.怒りっぽい →
7.元気がない →
8.せっかちだ →
9.忘れっぽい →
10.消極的だ →
(66ページより)
他にも本書には多くのエクササイズが紹介されていますが、それらを全部やる必要はないそうです。やってみたいと思ったものだけをやり、うまくいったら続け、うまくいかなかったら別のエクササイズを試してみる。そんなことを繰り返すうち、いつの間にか人の気持ちがわかるようになっているというわけです。
(印南敦史)