新たなジャガイモが登場しました。アメリカ合衆国農務省(USDA)は、農家が商業目的で栽培できる遺伝子組み換えジャガイモの新品種として、数種類を承認したのです。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、一般的に出回っているジャガイモであるラセットポテトとアトランチックポテトの遺伝子を組み換えたものだということです。新しく登場したジャガイモは「イネイトポテト」と呼ばれ、油で揚げた際に発生するアクリルアミドという化学物質の生成量が少ないといいます。アクリルアミドは、でんぷんを含む食品を高温で調理することで発生する物質です。

特にフライドポテトやポテトチップスに多く、タバコの煙にも含まれます。科学者は、アクリルアミドを摂取することで一部の癌の発症リスクが高まるとしていますが、どの程度の摂取量でリスクが高まるかは明らかになっていません。そのため、イネイトポテトの摂取によるリスクの低減についてもまだ判明していないとニューヨーク・タイムズ紙は伝えています。また、農家や出荷業者に好まれる点として、イネイトポテトは非遺伝子組み換え作物と比較して傷みにくいという特性があります。

これらのジャガイモを含む、新しい世代の遺伝子組み換え作物の特徴は下記のようになります。

1.RNA干渉法と呼ばれる新たな遺伝子組み替え技術が用いられている。

2.農家や出荷業者だけはでなく、消費者にとっても有益な特性を持つ。

米国のこれまでの遺伝子組み換え作物の目的は、除草剤に耐性のある農作物などのように、農家や出荷業者にとってのみ有益な特性を持たせることに限られていました。ただし、米国外では、栄養失調の解消に役立つ遺伝子組み換え作物が研究者によって開発されています。

この新たな形の遺伝子組み換え作物であり、承認目前の段階にあるのが「アークティックアップル」です。アークティックグラニーとアークティックゴールデンのリンゴ2品種は、切った後の白さが長時間持続するよう改良されています。

アークティックアップルやイネイトポテトが持つ優れた特性は、どちらも同じ種類の他の品種の遺伝子から得たものです。イネイトポテトの場合は栽培されたジャガイモ、もしくは野生の他のジャガイモから得た遺伝子断片を加えたものであり、アークティックアップルも同様に、他のリンゴの遺伝子を加えたものです。この点でこれらの作物は、こんにち最も一般的な遺伝子組み換え作物、すなわちバクテリアなどの他の生物種から新しい特性を得た作物とは異なります。

企業は、遺伝子組み換え作物に対して慎重な態度を示す消費者が、同種間限定の遺伝子組み換えによる作物に魅力を感じることを期待していますが、その点については今後の動向に注目したほうがよいでしょう。今のところ、いずれの作物も反遺伝子組み換え団体から声高に反対を叫ばれています。

USDA Approves A Genetically Modified Potato With Possible Health Benefits|Popular Science

Francie Diep(訳:Conyac

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