あなたの子どもは頭がいい! ──小さな子どもの学力を、ラクに、グ~ンと伸ばす3つのお話』(長野雅弘著、鈴木由美監修、パンローリング)は、以前ご紹介したことのある『女の子の学力の伸ばし方 心の育て方』(あさ出版)の著者による新刊。テーマは小学4年生から中学2年生までを対象とした、学力を無理なく伸ばすための「復習継続法」です。具体的には、次の3つの話題によって構成されているところが最大の特徴。

・子どもとの接し方(ほめて育てること)

・学力アップに直結する「勉強のやり方」と「勉強の続け方」

・学力アップを支える生活習慣

(3ページより)

きょうご紹介したいのは、第1章の「子どもはほめて育てましょう」。幸せを感じると伸びるという、「スピンドルニューロン」について解説された箇所です。

幸せを感じて伸びる神経細胞

人間の脳のなかには、「スピンドルニューロン」という神経細胞があるそうです。その特徴は、うれしいことや楽しいことがあるなど、幸せを感じると伸びること。トータルで、3キロメートルくらいにまで伸びるという説もあるのだといいます。左目の側頭葉より少し右の位置にあるそうなのですが、そこで3キロメートルもどう伸びるのかについてはイメージしづらくもあります。が、これがさまざまな意味において、重要な役割を果たすということです。

スピンドルニューロンは、アメリカの解剖学の研究を通じて発見されたのだそうです。具体的には、「人生を楽しく生きてきたニコニコばあさん、ニコニコじいさんはスピンドルニューロンが大きく伸びていた」ことが、研究の結果としてわかったのだといいます。そして、逆に「人生に不満を抱いていたガミガミばあさんやガミガミじいさん」のスピンドルニューロンは、ほとんど伸びていなかったのだとか。

そして特筆すべきポイントは、スピンドルニューロンが伸びると「人間にとってよいことしか起こらない」ということだと著者は説明しています。どういうことでしょうか?

スピンドルニューロンが伸びると見られる効果

まずスピンドルニューロンが伸びると、「やる気」がでてくる。理由は、幸せな体験を重ねて伸びてきたスピンドルニューロンには、ストレスに抵抗できるだけの強い力が備わっているから。我慢強くなり、そしてやる気が出れば気持ちが前向きになるので、必然的に考え方や想像力にも好影響を与えるというわけです。

つまりは、脳が活性化されるということ。事実、スピンドルニューロンが伸びている人を調べた結果、具体的には次のような効果が見られることもわかっているのだそうです。

・やる気が出る

・前向きになる

・ストレスに強くなる

・我慢強くなる

・考え方・想像力によい影響を与える

(13ページより)

なお、スピンドルニューロンには、一度伸びたら縮まないという特徴も。伸びれば伸びるほど、なにごとにもめげない強い心がつくられるということです。(10ページより)

スピンドルニューロンの伸ばし方

では、スピンドルニューロンは具体的にどんなとき伸びるのでしょうか? 研究によってわかったその結果を、著者はランキング形式で紹介しています。

第3位は、「おいしいものを食べたとき」や「美しい風景を見たとき」。いわば、プラスの刺激を受けたときに伸びるということ。第2位は、「一生懸命やって、ようやくできた」というような達成感や充実感を得たとき。やり遂げたとき、満たされた気持ちを感じることがポイントだというわけです。そして第1位は、「我慢してやってきたことをほめられたとき」。(12ページより)

ほめるときのちょっとしたコツ

なお、ほめるときのコツは、他人との比較をしないこと。「あの子よりがんばったね」というようないい方ではなく、「この前の英語テストは50点だったけど、きょうは80点だったね。毎日がんばったものね、偉いね」というように、「がんばった行為」をほめてあげることが大切だという考え方です。

ところで、子どもは誰にほめられるといちばん喜びを感じるのでしょうか? このことについても、結論が出ているそうです。1番目はお母さん、2番目が先生、3番目が友人(ただし、2番目と3番目はほとんど接近しているとか)。お父さんにとっては残念な結果ではありますが、お母さんのほめことばが、それほど大きな意味を持つということなのでしょう。(14ページより)

ほめるときの留意点

ほめるときには、ことば以外にモノをあげることも効果的だと著者はいいます。そして「モノで釣ってもいいのか」という考え方については、「モノをあげることはよいことなのです」と主張しています。とはいえ豪華なものではなく、アイスとか菓子類がいいのだとか。事実、少しの景品は、よりいっそう効果を増すことが証明されているそうです。

そして留意点は、先にも触れたとおり「我慢してがんばった行動」をほめてあげること。たとえば「テストの点、よかったね」ではなく、「テストの点、よかったね。テレビも漫画も我慢して、毎日がんばったもんね」というように、結果だけではなく、結果に至るまでのプロセスもほめてあげるということです。(17ページより)

ほめてあげると、よいことばかり

このように、「ほめてあげると、よいことばかり」だと著者は記しています。少なくとも、ほめた結果として悪いことは起こらない。もちろん、ときには起こることも必要ですが、起こるのはダメなことをしたときだけで充分だといいます。普段の生活は、「ほめる」ことを中心にして育てるべきだということです。

ほめてあげれば、子どもは喜ぶ。そして、またほめてほしいから、つぎもほめてもらえるような行動をとる。こうした好循環をつくることがたいせつだというわけです。(18ページより)

この考え方を軸に、2章以降では学力を伸ばすための具体的な方法が解説されています。小さな子どもが読んでもわかりやすいように、キャラクターが登場して説明している点も魅力のひとつ。子どもを「わかる状態」へ導くためには、とても効果的な内容だと思います。

(印南敦史)