中国の電子商取引会社アリババ・グループ・ホールディング(以下、アリババ)は9月19日、ニューヨーク株式市場で新規株式公開(IPO)を行いました。同日の初取引で株価の終値は93.89ドルと公開価格から38.1%急伸し、IPOの規模としては米国史上最大の218億ドル(約2兆3800億円)となりました。またこの日、アリババの時価総額は2314億ドルとなりましたが、これは米アマゾン・ドット・コムとeベイを合算した規模を上回ります。
なぜアリババが注目されているのか?
日本ではアリババの筆頭株主がソフトバンクであることも注目を集めました。孫正義社長は2000年に同グループに2000万ドルを出資し、現在の持ち株比率は32.4%。孫社長は同社を「戦略的コアカンパニー」として株は売却しない方針を明らかにしていますが、9月16日にはアリババ効果でソフトバンク株価が上昇し、孫社長の資産額(166億ドル)がファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(162億ドル)を抜いて一時的に日本一となりました。
そもそも「アリババ」とはどのような会社か
アリババは、元英語教師の馬雲(ジャック・マー)氏が1999年に中国・杭州で創業した会社。企業間電子商取引(BtoB)のウェブサイト「阿里巴巴(アリババドットコム)」、個人間取引(CtoC)の「淘宝網(タオバオ)」等を運営し、月間利用者数は2.79億人に上ります。四半期のサイト上での流通総額は8.5兆円で、売上高は8925億円。2005年には中国ヤフーの買収も行っており、アリババドットコムは日本を含む世界70以上の都市に事業所を構えています。
巨大企業を築き上げ、現在は同グループの会長であるマー氏が保有する資産は、IPOにより250億ドル(約2兆7400億円)に跳ね上がり中国富豪ランキングでトップに躍り出ました。そんな同氏が、まだアリババを創業して間もない1999年に、オフィスとして使っていたマンションの一室で当時の社員たちに向けて行ったスピーチの様子を収めた貴重な動画が残っています。同社のサクセスストーリーを描いた映画「Crocodile In The Yangtze」のワンシーンです。

以下、一部抜粋し意訳します。
"私は中国のビジネス情報サイト「China Pages」を手がけていた頃から常々言ってきた。私たちが戦う相手は国内ではなく、海外、特にシリコンバレーの競合サイトだと。"
"私たちはシリコンバレーからハードワークの精神を学ばなければならない。8時出社、5時退社の会社ではハイテクカンパニーになどなり得ないし、成功することなど不可能だ。"
"米国の企業はハードウェアとシステムの分野では強かった。しかし、インフォメーションとソフトウェアでは、中国人の頭脳は彼らに匹敵するだろう。(中略)良いチームを作り、成したいことを自覚すれば、彼らに勝てるはずだ。"
"これから3年から5年は痛みを伴うかもしれない。しかしそれが、私たちが成功する唯一の方法だ。"

映像から伝わる彼の熱意もさることながら、後にこうして世界中の人々の注目を集めることを見越していたかのように、当時のことを映像として残していることも驚きです。そんな自意識過剰とも言える姿勢にこそ、マー氏の自信や信念が表れているのでしょう。
Jack Ma Speech From "Crocodile In The Yangtze"|Youtube
(岡徳之)
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