地球温暖化が世界各地で進み、森林破壊は着々と広まり、地球の人口は増え続けている...。目の前の仕事や生活に打ち込むのはもちろん大切なことですが、より大きな視点からすると、私たち全員が抱える問題は深刻化しているといえます。
中でも、地球温暖化にもつながるエネルギー問題は大きなテーマ。化石資源は限りがあります。「石油は残り40年、石炭は120年、ウランは100年。シェールガスは300年ほど」なのだそうです。その1つのソリューションとして「化学」が挙げられるという声があります。国内外のイノベーション事例を紹介するウェブメディア「Mugendai(無限大)」のインタビューで、国内化学メーカー最大手の株式会社三菱ケミカルホールディングス取締役社長である小林喜光氏は、これから目指すべきは「低炭素社会」ではなく「新・炭素社会」であると述べています。
化石資源を野放図に燃やして二酸化炭素を排出し、地球温暖化を進行させるばかりでは人類の未来はありません。いずれ枯渇する化石資源の代わりに、バイオマスなど新しい炭素資源の活用を進める必要があります。ノーベル化学賞を受賞した根岸英一先生も指摘されていますが、究極的には植物を真似て人工的に二酸化炭素で光合成を行い、有用な炭化水素を作り出すことを実用化すべきです。そのための「人工光合成化学プロセス技術研究組合」という国家プロジェクトも動き出しています。
私たちが目指すべきは「低炭素社会」ではなく、持続可能な「新・炭素社会」だと思います。その実現のためには、「錬金術」ならぬ「錬炭素術」とでも言うべき、化学産業の力が必須なのです。
一方で、化学メーカーによって引き起こされた公害問題など、今になっても爪あとを残す懸念点はなかなか拭えるものではありません。その点について、小林氏は以下のように話しています。
化学産業は過去たしかに公害などの問題を引き起こしました。しかし、自動車や飛行機に炭素繊維やプラスチックを使えば軽くなり、燃費改善に役立ちます。住宅に高機能な断熱材を使えば、冷暖房のためのエネルギー消費を大幅に減らせます。化学製品をしっかりコントロールして使えば、大いに人間のためになることを知っていただきたいと思います。
化学に対する正しい認識のもと、生産者と消費者がお互いをもっと知り合う必要があると思います。
Mugendaiのインタビューでは、そんな化学産業を取り巻く現状について語られています。諸外国といかに渡り合っていくのか。他社と差別化を図るにはどうすべきかといった経営論にも触れられており、読み応えがあります。
THE KAITEKI COMPANY――「低炭素社会」ではなく、「新・炭素社会」を目指して(前編) | Mugendai(無限大)
THE KAITEKI COMPANY――「低炭素社会」ではなく、「新・炭素社会」を目指して(後編) | Mugendai(無限大)
(ライフハッカー[日本版]編集部)
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