「インド」と聞いて、人によって思い浮かべるイメージはさまざまのはず。ビジネスにおいて、特に近年は「IT立国」の印象が強いのではないでしょうか。それもそのはず、「IT産業の規模は2012年に800億ドル(8兆円)でしたが、14年には1180億ドル(12兆円)に達する見通しです。これはGDPの8%に相当しており、インド経済を支える柱です」と話すのは、インド出身で有限責任監査法人トーマツのインドビジネス アドバイザリー マネジャーを務める帝羽(純子)ニルマラさん。一方で、雇用やインフラなど多くの課題を依然として抱えており、経済成長率も下降の様相を見せています。
インド経済復活のカギは何か、そして日本企業が進出する契機はあるのか。テクノロジーによるイノベーション事例を数多く紹介しているウェブメディア「Mugendai(無限大)」では、前述のニルマラ氏にインタビューし、その可能性を伺っています。ニルマラさんは、インドの抱える課題に対して、日本企業が貢献できる役割は大きいといいます。
――ITが発達したのは、昔"ゼロ"を発見したようにインド人に数学的な才能があるからでしょうか。
ニルマラ ゼロの発見は何千年も前のこと。現在のインドの若者は、そうした才能を十分に自国で発揮できていないと思います。というのは、国内経済が発展しておらず、才能ある人は米国などに活躍の場を求めて出ていき、そこで貢献しているのです。インドにとっては大きな損失です。
――リーマン・ショック後、「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)はどこも経済運営に課題を抱えています。インドの経済成長率もかつて10%前後あったのに2013年は4.4%になってしまいました。何が原因なのでしょうか。
ニルマラ リーマン・ショックのインドへの影響は2008~2009年はさほどではありませんでしたが、2010~2012年は世界経済全体が縮んだためにインドのIT産業の業績は悪化しました。インドの製造業はまだ弱体なので、成長率はITの業績に左右されやすいのです。IT産業の主力であるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)がクラウドやビッグデータといった新技術に移行したこと、他国の競争相手が増えたこと、そして米国でアウトソーシングを国内に戻す動きがあり、そのためインド人へのビザ発給を抑制したことも響きました。ただ、IT産業は新技術をスピーディーに取り込みつつあり、今後とも成長が望めます。
一方で、インド経済全体を考えれば、分厚い中間所得層を育てる必要があり、それにはITだけでなく、やはり製造業の強化が必要です。
今後日本企業の協力を得て、製造業の強化やインフラの整備などを進めることができれば、若者の雇用創出と12億人のインド国内市場の活性化につながり、両国経済の発展や安定化ができると期待しています。
低コストを武器に成長を続けてきたインドのIT企業も、昨今は人件費が上がり、「フィリピンやハンガリー、メキシコにアウトソーシング・センターを作り、現地の人を採用して業務を行う」といった海外進出を行うといった動きもあるそう。また、インドでは2014年5月に行われた総選挙では人民党(BJP)が圧勝、10年ぶりに政権交代が実現。ナレンドラ・モディ首相はインフラ開発や企業誘致を訴えているだけに、日本企業の進出も今後増えていくのかもしれません。
下記リンクより、ニルマラさんのインタビュー全文を読むことができます。「現在シリコンバレーで働く人の60%はインド人である」といった、インドがいかにしてIT立国となっていったのかの背景など、興味深いトピックが並んでいます。
人口12億の半分は24歳以下の国、インド――日本企業の協力が若者の雇用創出と、日印両国の経済安定化につながる(前編) | Mugendai(無限大)
(ライフハッカー[日本版]編集部)
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