『「人儲け」できない人生ほどつまらないものはない!』(吉田潤喜著、こう書房)の著者は、「ヨシダソース」という醤油ベースのソースを世界的に成功させたことで有名な人物。マスコミにもよく登場するので、ご存知の方も多いのではないかと思います。本書は、そんな著者が「人儲け」ということばに基づいて、人と人との本当のつながりや、それに基づくビジネスについての考え方を記した書籍。
僕はよく「金儲けより、人儲け」という言葉を使う。(中略)ひと言で説明するなら、人とつながり、いろんな人が集まってくれること。さらに簡単に言えば「人に好かれること」が人儲けだ。(「はじめに」より)
「人儲け」こそ、人生でも、仕事でも、一番大事。そればかりか、「結局、人儲けのできる人が仕事もプライベートも充実するし、楽しくハッピーな人生を送っている」と断言すらしています。では著者は、「人儲け」を軸としてどのように人生を切り開いていったのでしょうか? 第1章「『自分の生き方』を愛せる人になれ」に目を向けてみましょう。
大事なのは「I love myself」
19歳で単身渡米し、空手の師範を経てヨシダフードを設立した著者は、2003年にインテルやAOLと並んでアメリカの優秀中小企業家賞を受賞して殿堂入りを果たし、2005年のニューズウィーク日本版で「世界が尊敬する日本人100人にも選出された人物。10代のときからアメリカを活動拠点にしてきただけあり、その考え方も日本人離れしています。
そして著者にとって、人に好かれるためのベースとなるものは「自分を愛する」という気持ちなのだそうです。
英語で言えば「I love myself」。
あなたは「自分自身を愛している」と正々堂々、胸を張って言えるだろうか?
(20ページより)
著者の言う「I love myself」とは、当然ながら自分の自慢をすることではなく、「自分という人格」「自分の人生や生き方」を愛せるかということ。「自分が愛せる自分」とはなんなのか、「I love myself」と言える生き方とはどういうものなのかと、考えながら生きていくことが大切だというわけです。(20ページより)
自分の夢を「死ぬほど」信じる
なにかを成し遂げている人は、自分の夢を死ぬほど信じられる人であり、いちばん大事なのは「死ぬほど」という部分だといいます。「ただ夢を持つ」とか「なんとなく信じている」というような生やさしいものではなく、「この夢を絶対実現してやるんだ!」と人生を賭けて、死ぬほど信じている人が、最後はなにかを成し遂げていくという考え方。
たとえばスティーブ・ジョブズも、ビル・ゲイツも、本田宗一郎も、松下幸之助も、創業者はみな同じ。それぞれの分野においても、経営においてもズブの素人であるはずの人が「こんな商品をつくりたい!」「こんなものをつくって、世界を変えたい!」という思いを持ち、死ぬほどその夢を信じ、いつの間にかとてつもなく大きな事業を成し遂げてしまうということです。
もちろん、それは著者にも言えます。「アメリカで、醤油とみりんを使ったソースをつくって売る」などという大きな夢を語ったところで、「できるわけない」と一蹴されても不思議はない。しかし、ソースを手作りして、「1本でも多く売りたい」と必死でがんばっていたら、気がついたときにはいうまくいっていた。そんな経験を経てきたからこそ、「人生とは、そんなものなのだ」という言葉も重みを感じさせます。(27ページより)
本気で信じていれば、誰かが近寄ってくる
若い人たちには特に、大きな夢を抱き、その夢を死ぬ気で信じられる人になってほしいと著者は記しています。そして、「大きな夢」を持っている人が近くにいたら、間違ってもその夢を否定すべきではないとも。なぜなら、「そんな夢は実現するわけない」と10人中8人が思う夢であっても、実現することはあるから。
また、自分の夢を死ぬ気で信じ続ければ、必ずその夢を一緒に見てくれる人が現れるもの。それが1人、また1人と増えていって、知らないうちに大きな渦になり、気がついたときには、その大きな渦の中に自分自身がいるということです。
そして、もうひとつ、「どんな成功者も一度のチャレンジで成功したわけではない」という真実をおぼえておいてほしいそうです。大きな夢を持ってなにかを始めれば、まず間違いなく失敗する。そんなことは当たり前。しかし、終わりではないということ。成功する人としない人の差はそこにあるといいます。
一度や二度失敗をして、そこで終わりにしてしまう人は結局何をやっても成功しない。どんな分野でも成功している人というのは、100個のいろんなアイデアを持っていて、それを次々に繰り出す人だ。もちろん次々に失敗するけれども、めげることなく、どんどん先に進んでいく人だ。(37ページより)
多くの失敗を乗り越えてきた人のことばだからこそ、この一文は強い説得力を感じさせてくれます。(34ページより)
在日韓国人であり、7人兄弟の末っ子として生まれ育った家は貧乏。さらに幼少時に事故で右目を失明し...と、著者は決して恵まれた環境に育ったわけではありません。しかし、それでも大きな成功をつかむことができたのは、持ち前の前向きさと行動力のおかげ。マイナスをマイナスとして意識せず、常に前を向き続けることの大切さを、本書は教えてくれます。
(印南敦史)