Inc.:数カ月前にニューヨークで、「the 30% Club」アメリカ支部をキックオフための重要な会議が開かれました。the 30% Clubとは、「上場企業の役員にもっと女性を増やす」という目的を持つ民間セクターです。その会議は、特命を受けたイギリス人女性Helena Morriseyさんが仕切っていました。
Helena Morriseyさんの名前を聞いたことがない人も多いかもしれませんが、イギリスではNewton InvestmentsのCEOとしてとても有名で、誰でも知っています。彼女の取り組みは、すべての企業における役員のうち、女性の割合を30%までに押し上げようというものです。彼女は、どうすればその目標を達成できるのか、よくわかっています。
イギリスでは女性役員が増えている
イギリスやヨーロッパ諸国では、会社役員におけるジェンダーダイバーシティ(男女の多様性)の話題は、ここ何年もトップニュースになっています。EUや政府の後押しなどもある程度あり、会社役員に女性を割り当てなければならないということになっていますが、Helenaさんを含め多くの企業のリーダーたちは、そうではなくもっと自主的な行動を促そうと取り組んでいます。
Helenaさんは素晴らしい成功をおさめてきました。 FTSE 100(イギリスの代表的な100の株価指数)に名を連ねる企業の男性幹部の支援を受け、短期間でこの取り組みは劇的に前進しました。今週のFTSE 100企業の役員における女性の比率は20%まで上昇したのです。また、男性役員しかいないすべての会社が、年末までには女性役員を入れることを約束しました。
彼女が活動を始めた3年前は、FTSE 100の企業で役員がすべて男性の会社は21あり、女性役員の割合はたった12.5%でした。この数字を見ると、短期間でどれほど達成してきたかがわかるでしょう。
この問題が、なぜそれほどまでに重要なのか?
アメリカでは、実際のところ女性役員に関する話題はほとんど出ません。フランス、ドイツ、イギリスなどのヨーロッパ諸国の議員が議会で訴えるように、アメリカの議員が女性役員の割合について訴えるのは想像もできません。民間セクターはもう少し興味を持っていますが、その問題に全力をあげるほどではありません。かなり多くのアメリカ企業で女性役員が1人もしくはまったくいないという状況ですが、ソーシャルメディアや女性団体から時々この問題が声高に叫ばれる以外は、ほとんど話題になることはありません。
2013年のスペンサースチュアートによる研究では、S&P500(アメリカの代表的な500の株価指数)の企業のうち93%は、会社役員に少なくとも1人は女性がいますが、役員全体のうち女性が占める割合はわずか18%でした。女性がCEOの会社は、役員のダイバーシティに力を入れているように見えます。女性がCEOを務める少数の企業の間では、役員における女性の割合は30%近くあります。女性にとっては、このような状況は明らかに苛立たしいものでしょうから、このことを問題にするのは当然だと思われます。
しかし、これは問題提起するのが正しいかどうかという問題だけではありません。アメリカの人口の半数が女性なのであれば、アメリカ企業のリーダーの声に、女性の声も反映すべきでしょう。女性役員の割合を、企業規模やビジネスや産業に関わらず、すべての会社が増やした方がいい、説得力ある理由が少なくとも3つはあります。
1. 女性役員がいる会社の方が儲かっている
多くの研究で、女性役員のいる会社は財務的にかなり良い業績を残していることがわかっています。しかも、女性役員が3人以上いる会社は、驚くほど良い業績をあげています。このことに関する直接的な因果関係を証明することはできませんが、あらゆるデータが女性を上に引き上げない理由はないことを示しています。
2. 女性役員がいる会社の方がイノベーティブ
固定観念にとらわれず、イノベーションを起こすには、多様な視点が必要だというのは明らかです。女性役員がいる会社の方が、新しい市場機会や今までにないアイデアに対して、よりオープンだということを表す強力な証拠があります。
一つには、女性は市場機会や顧客のセグメントに関して、男性社員には思いつかないような、個人的な視点を持ち込むからです。これは、他の少数派の人にも当てはまる事実ですが、世界的なマーケットでも大部分を占める女性に関しては、特にその視点や意見が重要になります。
3. 女性は役員の役割をより効果的にする
女性役員が3人以上いると、役員全体のパフォーマンスもより高くなり、衝突が減り、うまくリスク管理ができ、監視体制もより効果的になるということが、いくつかの研究によって分かっています。また、女性役員がいる会社は、戦略実行のために自身も他の役員も、より貢献しようとすることも証明されています。
このような説得力のある見解があるにも関わらず、アメリカではなぜこの問題に関する議論がそこまで遅れているのでしょうか? 一つには、この問題が顕在化していない、という問題があります。イギリス政府は、より良い業績や管理体制を確保するためという理由だけでなく、女性に注力しています。やれと言われる前から、会社は女性の力を尊重しているのです。また、情報ルートとして女性を活用しているという理由もあります。
伝統的に、大手上場企業の役員は元CEOや元CFOですが、わずかながら女性もその役割を担ってきました。別の分野でもリーダーの役割を担ってきた人は、会社役員になる資質があるという意見もあります。バーナード大学学長のDeborah Sparさんや、プリンストン大学学長のShirley Tilghmanさんは、どちらも会社役員をやった経験があります。
起業家ではなく、最高マーケティング責任者や最高人事責任者のような役職に就いている女性を見ていると、役員の役割にかなり多くの深い価値を与えることができる、というのが分かります。国際的な競争と、複雑なマーケットに対する課題と、大きく多様な世界の消費者に対して、同じような(男性ばかりの)役員だけで成功できる企業はほとんどありません。ジェンダーダイバーシティを守ることで、競争に勝ち、業績を上げることができるのです。これでもう女性を役員にしない理由はありませんよね?
3 Reasons Having Women at the Top Is a Very Good Idea | Inc.com
Lauren Leader-Chivée(訳:的野裕子)
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