1日中オフィスで座っていると健康に悪いのはご存知ですよね。座っていると健康だけでなく「脳にも悪い」というセンセーショナルな記事が、最近ニューヨーク・タイムズ紙で紹介されました。この記事によると、1日中座っていると筋肉内部の電気活動が落ち、有害なほどに代謝が悪くなる、ということを科学者が発見しました。残念ながら、定期的に一定量の運動をしても、このダメージの埋め合わせにはなりません。

ドイツの人間発達に関する研究機関「the Max Planck Institute」の研究員Sabine Schaefer氏は、作業記憶にはウォーキングが効果的だということを発見しました。親世代の人たちには、歩きながらガムを噛むなと怒られたかもしれません。しかし、Schaefer氏が子どもと若者を対象に、座っている時と歩いている時に作業記憶の標準テストをして比較したところ、親世代のアドバイスとは相反する結果になりました。英国心理学協会の研究要約に、その研究結果がまとめてあります。

どちらの年代のグループでも、自分が決めたスピードで歩いている時は、座っている時や決められたスピードで歩いている時に比べて、作業記憶のパフォーマンスは向上しました。作業記憶にとって難しいことを行っている場合は特にこの傾向が強く、大人よりも子どもの方が顕著な結果が見られました。したがって、2つのことを同時に行っている状況のほうが、脳のパフォーマンスが優れているということが明らかになりました。

つまり、考えながら歩いている時は、それぞれのことに専念し過ぎない程度に、頭と体のリソースを分離するということでしょう。この研究報告によると、「頭で考えることができるような身体的活動と連動すると、覚醒や活性化が増加する」ということが分かったのです。歩くことで、考えるためのエネルギーリソースが増加するのです

では、"決められたスピードで"歩いている時には、好きなスピードで歩いている時と同じような効果が、作業記憶に見られなかったのはなぜでしょう? 科学者は、「決められたスピードで歩くのは、どちらの年代のグループでも、好きなスピードよりもかなり遅かったので、効果が表れるのに十分なスピードではなかっただけではないか」、もしくは「決められたスピードに歩くのを合わせることを意識しなければならなず、そちらに頭を使っていたからではないか」と推測しています。

もちろん、歩きながらやれば、どんな頭脳活動でもパフォーマンスが向上するとは限りません。しかし、この新しい研究は、机について座りっぱなしでいることは、身体的な健康と同じように脳にも良くない、という発見を裏付ける事例証拠です。ずっと悩んでいた問題から少し離れた時に、クリエイティブなひらめきがよく起こる、例えばシャワーを浴びてリラックスしている時に、素晴らしいアイデアが浮かぶというような、よくある経験が科学的に証明されたのです。

朝起きてウォーキングやジョギングをするのも、頭の中に余裕ができる方法ではありますが、結局アインシュタインやチャールズ・ダーウィンがやっていたように、歩きながら考えるというのが良さそうです(また、ビールを飲むのも良いようです)。別の研究では、たった5分でも外に出て自然の中に身を置くと、気分が良くなったり、自信が持てることも証明されています。1日に何回かは机から離れて、外で歩きながら考えてみてはいかがでしょうか。

Your Desk Is Making You Stupid|Inc.

Jessica Stillman(原文/訳:的野裕子)