新しいアイデアを考えなければならないのに、1時間経っても、2時間経っても、数時間経っても、全然思いつかない...。そんな時は一体どうすればいいのでしょう?
創造性はどこからやって来るのか?
90年代に「あなたは右脳派か、それとも左脳派か?」というような説が広まったのを覚えているでしょうか。この説によると、右脳派の人はクリエイティブでアーティストタイプ、左脳派の人は論理的で分析タイプと言われていました。しかし、クリエイティブな仕事をするというのは、そういうことではありません。
創造性は、どこか1つの場所から湧いてくるようなものではなく、研究者いわく「ハブ」のようなものだそうです。この創造性のハブは、脳の他の領域ともかなり密接につながっており、頭の中のネットワークでより速く、より広域に情報を広めます。
何かを創造しようとする時は、上の図にある「Default Mode Network(初期モードネットワーク)」を起動して、頭の中に浮かんだものを描こうとします。しかし、そのアイデアを実際に実行しようとする時には、「Central-Executive Network(中枢ネットワーク)」を使います。常に1つのネットワークだけを使っている訳ではありません。
この研究は、フリースタイルのラッパーの頭の中では、どのようにしてリアルタイムの考えが生み出されているのかを調べていました。Default Mode Networkが活性化し、脳の認識する領域の活動が弱くなった結果として、即興が生まれています。ネットワークは常に「Salience Network(主要ネットワーク)」を通じてつながっています。
創造性というのは、右脳派でない場合は、何か難しいもののように感じる人もいるかもしれません。しかし、実際にはこのような仕組みで動いているだけです。
クリエイティブな脳の側面
脳には毎日大量の情報が入ってきます。脳が受け取った情報を、些細なものまですべていちいち処理していたら、仕事を終わらせるのはかなり大変です。
脳は、このような些細な情報を精査するために様々なフィルタを使っています。そのうちの1つは直接創造性に関わっているもので、「潜在的抑止」と呼ばれています。潜在的抑止は、自動的に刺激を減らす脳のプロセスです。脳が注意すべき情報に集中できるようにするために、重要でないと思われる情報は無視するようになっています。
研究では、クリエイティブな人は新しい経験に対してよりオープンで、潜在的抑止力が低いということが分かっています。クリエイティブな人は、毎日やってくる大量の刺激をシャットアウトすることができませんが、実験の結果によると、見たり経験したりしたものを、早い段階から頭の中でつなげることができるのです。このような能力が、高いIQと結びついた時には特に、より独特なアイデアや考え方を生むのでしょう。
脳の創造性を理解するには、ある一部分で起こっていることだけでなく、脳全体を見なければなりません。
これ以上何も思いつかないと思う時
筆者は、脳が乾き切っているように感じることがあります。そのような時は、何かが降りてこないかとパソコンの画面をじっと見つめていますが、何も起こらないと本当にがっくりします。
脳をもっと解放するにはどうすればいいのでしょうか? 創造力が湧いてくるにはどうすればいいのでしょう?
白昼夢
人間は、起きている時間のうち15〜50%の時間を白昼夢に使っており、これはとても良いこと、むしろ肝心なことなのです。もっと脳が自由にさまよわせてあげましょう。
「新しいアイデアが浮かんだ時、研究者は前頭葉からアルファ波を計測しました。この8〜12ヘルツの周波は、覚醒状態でリラックスしている時の典型的なサインで、細かいところまで注意が届きます」
─ Evangelia G. Chrysiko
アルファ波が出るような、とてもリラックスした状態は、クリエイティブなことを考えるのに適しています。前頭葉が大きな役割を果たしているということは、忘れてはいけませんが、あまりに前頭葉が活性化し過ぎていると、クリエイティブな思考の妨げになります。
前述の「Default Mode Network(初期モードネットワーク)」を覚えているでしょうか。科学者は、白昼夢を見ることができているのは、この初期モードネットワークのお陰だと考えています。白昼夢は、過去と現在と未来を高速で移動します。この移動によって、一見無関係に思えるアイデアやコンセプトを結びつけることができるのです。
「アルベルト・アインシュタインは、光と一緒に自分も走っているような想像をしていました。このファンタジーのような想像が、最終的には特殊相対性理論へと導いたのです」─ Josie Glausiusz
白昼夢を見るだけでは十分ではなく、それはクリエイティブな仕事の一部にしか過ぎません。白昼夢にもっと注意を払わなければなりません。良いアイデアが思いついた時に、忘れないように何かしていますか? おそらくなにもしていない人がほとんどでしょう。とにかく、白昼夢にしろ、ボーっとしている時にしろ、何かクリエイティブなひらめきがあった時は、それを書き留める癖をつけましょう。
柔軟性というのは頭を柔らかくすること
クリエイティブになり、クリエイティブに考えるようになるには、頭を柔らかくしなければなりません。新しい関係を築いたり、新しい方法で既存のものを使ってみたりする理由を、脳に与えなければなりません。
柔軟性のある脳というのはどんなものでしょう?
クリエイティブになるためのアドバイスを調べてみたら、頭を柔らかくすることとかなり近いということが分かるでしょう。
- 専門家になること。しかし、1つのことに特化していてはいけない(幅広い視点が必要)。
- できないことを乗り越えること(常に向上すること)。
- マンネリ化しない、場所を変える、気分を変える。
- 遊ぶ!(もっと色々やって、失敗して、グチャグチャにする)
- あきらめないこと。
柔軟になるというのは、実際にはどういうことなのでしょう? あまり恐れずオープンになることです。ただ、言うは易し、行うは難しです。脳は、生活や人生に悪影響のあることを最小限に抑えたり、避けたりするのにかなりの時間を使いますが、何とかなるということを私たちは知っています。
前述のラッパーは、即興でラップをする時に前頭葉をあまり使っていませんでした。前頭葉というのは、脳のCEOのようなものです。決断や感情を制御し、脳全体にかなり多くの影響を及ぼします。前頭葉は、クリエイティブになるために必要なものでもあります。Default Mode Network(初期モードネットワーク)ほど柔軟ではありませんが、欠かせないものです。
クリエイティブな答えが欲しい時に、問題のことだけを考えてはいけないというのは、こういうことです。何にも集中しない状態がいいのです。脳が何か1つのことと強く結びつきそうなことを、あえてしないようにしなければなりません。
創造性というのは、常に課題であり、どんなにあがいても間違いはありません。新しいクリエイティブなひらめきを得る方法は1つではありません。新しいアイデアが湧いてくる方法はたくさんあります。
クリエイティブなアイデアが生まれるまでは、失敗もたくさんあれば、無駄なこともたくさんあります。それが最終的に成功につながるのです。そのプロセスの楽しみ方を知り、柔軟になり、あきらめなければ、本当に役に立つクリエイティブなアイデアが生まれるでしょう。
Andrea Ayres(原文/訳:的野裕子)