Crew blog:このところフランス語学習に取り組んでいる私ですが、母国語である英語を覚えたときとは比べものにならないほど苦労しています。これだけやっても上達しないなんて、何か大切なことを見逃してしまっているのではないか。そう考えているうちに、大人になった今、言語を習得するには特別な技が必要であることに気がつきました。

私たちはどうやって言語を習得するのか

言語の習得は人が生まれ持った本能です。ある研究論文に、これは観察だけでも証明できると書かれていました。

家で飼っている犬や猫は言語を習得しないのに、子どもにはそれができることから、特殊な生物学的適応が必要であると考えられます。

子どもたちは、母国語で考えることを学び、コミュニケーションを学び、直感的に文法を理解していきます。それ以降、私たちが新しい言語を学ぶときには、身の回りの世界を初めて理解するときに使っていた母国語との関係の中で学ぶことになるのです。

人は生まれつき言葉を知っているわけではありませんが、それを習得する能力は生まれたときから備わっていることが研究によって明らかにされています。私たちが自分の意思で言語を処理し身に付けていくだけでなく、人間の脳には(学習する言語を問わず)言語に関する共通の制約があるように思えます。どの言語においても一般的でない音節は、脳にとって処理が難しく、まだ言葉を知らない新生児であってもそれは変わらないのです。

外国語の習得

外国語を習得することにおいて、大人は不利な立場にあります。年を取るにつれて、脳の可塑性(新しい神経細胞やシナプスを作る能力)が失われていくからです。例えば、失語症を起こすような脳の損傷を受けた場合でも、子どもは脳内に新しい経路を築くことで損傷した経路を置き換え、言葉を取り戻す可能性が高いことが確認されています。

大人にとって外国語の習得が難しい理由は、可塑性の損失というよりは、その学習プロセスにあるとする理論もあります。Robert Bley-Vroman氏は、著書『Linguistic Perspectives on Second Language Acquisition』において、大人が新しい言語を学習する際、子どもが初めて言語を習得するときと同じ方法を取らずに、大人の問題解決プロセスでアプローチしてしまっていると指摘します。

つまり、言語学習の初期段階は、一般的に大人の方が子どもよりも速く進むことができますが、子どものころに外国語にさらされた経験がある人ほど、大人から始めた人よりも習熟度が高まる傾向があります。

だからと言って望みがないわけではありません。第二言語の発音に関するある研究では、大人になってから始めた人でもネイティブスピーカーと同じスコアを獲得する人がいたそうです。学習意欲が習熟度を高めることも示されています。ですから、本気で学びたいという気持ちがあれば、遅すぎるということはないのです。

自身に最高のチャンスを

新しい言語を習得したいなら、以下の手法を試してみてください。これらはいずれも、学習や記憶を改善させるものとして知られている方法です。

1. 間隔反復

間隔反復は、学習内容を心に刻むための記憶術として実証されている方法です。やり方は、学習した単語やフレーズを、間隔を開けて繰り返すこと。最初の間隔は短めにした方がいいので、新しい単語は、1回の学習セッション中に何度か繰り返します。その後、次は翌日にというように、徐々に間隔を長くしていきましょう。十分に覚えられるようになったら、数日から数週間の間隔を開けても、もう忘れることはありません。

下の図は、新しく学習した情報の典型的な「忘却曲線」を示したものです。反復を行うたびに、曲線の落ち込みが緩やかになる様子が見て取れます。

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私は、単語やフレーズを覚えるのに、間隔反復を利用したアプリ「Duolingo」を愛用しています。しばらく練習していない単語をアプリがリマインドしてくれるので、理解を深めることができるのです。レッスン中、すでに覚えている単語と新しい単語を交ぜて出題することで、間隔反復を実現しています。

2. 寝る前の学習

睡眠による恩恵はたくさんありますが、脳の「受信箱」を空っぽにできるのもその1つ。受信箱とは、起きている間に得られた新しい情報や記憶を一時的に蓄積しておく場所のことです。これらの情報を脳内に長期記憶として定着させるためには、睡眠(昼寝でもOK)が必要になります。ひとたび長期記憶に蓄積された情報は、間隔反復によってつながりを強化することで、より速く正確に思い出すことができるようになるのです。

3. 言語ではなくコンテンツを勉強せよ

語学教室などのプログラムでは、純粋に言語の習得に重きを置いていることがほとんどです。しかし、フランス語を学習している高校生を対象とした研究の結果、フランス語のみを教えるクラスよりも、フランス語を使って別のことを教えるクラスの方が、生徒のリスニングテストの結果と学習意欲が上がることがわかったのです。一方で、通常のフランス語クラスで学習した生徒は読み書きのスコアが高かったため、どちらの方法にもそれぞれのメリットがあるようです。

新しい言語の基礎をマスターしたら、理解をさらに深めるために、興味があるコンテンツをトピックにしてみてください。同じ言語を学習している友達と会話をしてもいいですし、オンラインで記事を読むのも、またポッドキャストを聞いて理解力を試すのもいいでしょう。

4. 練習は毎日少しずつ

忙しいと、つい勉強を先延ばしにして、1~2週間に1回の頻度でまとめてやろうと考える人もいるかもしれません。でも、本当は毎日少しずつやる方が効果的。脳の「受信箱」は大きさが限られており、それを空にする方法は睡眠しかありません。つまり、一気に何時間も勉強したところで、すぐにその限界に達してしまうのは目に見えているのです。

毎日少しずつやることで、間隔反復と脳の一時記憶のベストな使い方を同時に実現できます。

5. 新旧織り交ぜる

脳は目新しいことを好みますが、新しい単語やフレーズを一気にたくさん覚えようとするのはやり過ぎです。目新しさがもっとも役立つのは、目新しい情報がおなじみの情報に交じっているときなのです。

ですから、新しい単語を覚えようとするときは、すでに知っているものの間に入れるようにしてください。そうすることで新しい単語が際立って見え、脳がそれをつかみやすくなるのです。

The Science of Learning New Languages|Crew blog

Belle Beth Cooper(訳:堀込泰三)