37歳までは、自分らしく生きることができず、もがき続けながら会社勤めを続ける毎日。しかし、心から満足のいく生き方を手に入れることなく人生を終えたくないという思いから、38歳で「人生を劇的に変える」と宣言。

結果的には月間160万PVを誇る人気ブロガーとなった著者が、やりたいことだけをして生きていく術を明かした書籍が『サラリーマンだけが知らない好きなことだけして食っていくための29の方法』(立花岳志著、大和書房)です。

この本では、本当にやりたいことだけをして食っていくために必要な心構えや時間の使い方、そして「自由になる勇気」を得る方法を、すべて書ききりました。(4ページより)

「はじめに」の部分にはこう書かれていますが、果たして「やりたいことだけをして食っていく」ことは本当に可能なのでしょうか? 第1章「ワークスタイルに自由を与える」から、いくつかを引き出してみます。

価値のあることを考える

「安定・安心」と「自由」はトレードオフの関係にあります。

(16ページより)

そう語る著者は、17年間にわたりサラリーマンとして「安定・安心」を優先して生きてきたのだそうです。ところがそんな生活に飽き足らず、「安定・安心」を捨て、プロフェッショナル・ブロガーとして「自由に生きる」と決断したのは41歳のときのこと。

当初は不安だらけで、収入も会社員時代から激減。仕事も少なく、相談相手もいなかったといいますが、独立した年にはブログのアクセスが月間160万PVを突破。翌年には書籍を4冊続けて出版し、セミナーやワークショップも盛況で、独立3年目には年収も1000万円を突破したそうです。

にわかには信じられないような話ですが、なぜ、そんなことが実現したのか? この問いに対して著者は、「『安定・安心』を手放し、丸裸の状態からチャレンジしたからこそ、やりたいことをして生きることができるようになった」と分析しています。(10ページより)

「サラリーマンだから不自由」ではない

ただし著者は、やみくもに会社を辞めることを勧めているわけではありません。それどころか、このように断言しています。

「サラリーマンでありブロガー」。そんな働き方を選ぶことも、今の社会ならできるようになってきているのです。

(20ページより)

人はそれぞれ個性が異なり、働き方も異なるものなので、フリーに向く人と向かない人がいるのは当然。フリーに向かない人が無理に独立しても、後悔することの方が多いと指摘しています。しかもフリーになってしまうと、その瞬間からなにかしらのプロである必要に迫られるもの。「この仕事で食べていく」「この仕事でプロになる」という分野を持っていない限り、独立してもお金を稼ぐことは難しい。

だからこそ、もし現段階で抜きん出る得意分野がなく、でも会社を辞めて独立したいと考えるなら、まずは独立してもやっていける力をつけるためにすべきことがあるはず。それは、会社のなかで「自由」を獲得し、自立的に働けるように工夫すること。

会社で仕事をしつつ、「これで食べていく」と確信を持てる分野をつくり、その得意分野の力を徹底的に磨くことを優先する。そんなプロセスを踏むことなく、ただ「会社が嫌だから」と逃げの姿勢だけで独立してしまうと、「自由」な人生ではなく、「お金に縛られる」「お金がなくて困る」人生になってしまうといいます。

自分はフリーに向いているタイプか、それとも組織で力を発揮するタイプか。独立するなら、なにをして食べていきたいのかがはっきりしているか。最初に、この2点について見極めることから始めるのがいいそうです。(18ページより)

自分だけの「軸」に従う

自由に生きるとは、「自律的に生きる」ことだというのが著者の主張。そして自律的に生き続けることができる人は誰しも、自分だけの「軸」をしっかり持っているものだとも記しています。言い換えるなら、自由に生きるためには「自分軸」をしっかり持ち、自分軸に従って生きればいいということ。

では、自分軸とはなにかといえば、それは「認識と行動が一致すること」。そして自分軸を作るというのは、目指す自分、つまり自分の意識に向かってひたむきに行動していくこと。

自分軸は、人それぞれ異なるもの。誰かのまねをする必要もなければ、どの生き方が優れているとか正しいというようなことも皆無。自分軸さえしっかり持っていれば、サラリーマンとして働きつつも自由に生きることができると結論づけています。(24ページより)

実際には「好きなことだけして食っていく」ための具体的な方法が紹介されているわけではなく、軸をなしているのは精神論。つまりは実用書ではなく自己啓発書ですが、最大のポイントは、独立することだけを推奨するのではなく、「自分らしくあるための居場所を見つける」ことを勧めている点です。

そういう意味では地に足が着いていると言えるため、人生に迷っている人にとっては、心の方向性を軌道修正するために最適かもしれません。

(印南敦史)