テック業界はキャッチーなフレーズが大好きです。しかし、多くのフレーズは、意味のない造語か、簡単なことを難しく言い換えているに過ぎません。今回は、そうした視点から、「モノのインターネット(the internet of things)」や「破壊的(Disruptive)」などの業界用語を一般の人にもわかりやすく解説します。
以前にも「米Lifehackerによるテクノロジー用語辞書」を紹介しました。しかし、昨今のテック業界は新しいバズワードが続々と登場しています。有用なものもありますが、ほとんどの用語は頭を混乱させるだけです。以下、そうした業界用語の真の姿を暴いてみました。
Acqui-Hire(買収による人材の獲得)
「Acqui-hire」とは、「買収」と「雇用」の2つを合わせた言葉です。テック業界では、才能ある人間を雇いたいだけの理由で別の企業を買収することがよくあります。米紙ニューヨークタイムズは次のように書いています:
FacebookやGoogle、Zyngaなどの企業は、常に最高の人材を欲しがっており、創設者やエンジニアを獲得する目的で、スタートアップ企業を買収している。そして、その企業のプロダクトは捨ててしまう。
つまり「Acqui-hire」とは、人材を獲得するために、大企業が小さな企業を買収することです。
Augmented Reality(拡張現実)
「拡張現実」とは、コンピュータで生成した情報を現実環境に付け加えることです。一般的には、カメラの画面に情報を重ねて表示します。ビデオゲームのHUDの画面にも似ています。対象にカメラを向けると、視界の前方に、対象物に関する情報がリアルタイムに表示されます。例えば近い将来、車のフロントガラスに、前方の車を透過した映像を表示するようになるかも。現在でも、拡張現実を扱ったアプリやサービスがたくさんあります。ただし、まともに使えるものはわずかです。
The Cloud(クラウド)
「クラウド」は、耳にタコができるくらいよく聞く言葉ですが、正確には何を指すのか判然としません。基本的に、クラウドとはインターネットのことです。膨大な数のコンピューターがネットワークで相互接続されいて、あらゆる場所からネットワークにアクセスできる状態を指します。例えば、「クラウドストレージ」とは、DropboxやSkyDrive、 Google Driveなどのオンライン・ストレージのことです。データを「クラウド」に保管するとは、そのデータがオンラインで利用可能となり、複数のデバイスからアクセスできることを意味します。
Crowdfunding(クラウド・ファンディング)
名前の通り、クラウド・ファンディングとは、プロジェクトへの投資を、広く一般に対して募ることを言います。プロジェクトはコミック製作からアプリ製作まで多岐にわたります。みんなが少しづつ投資して、プロジェクトを支える仕組みです。プロジェクトが成功すれば、出資者は報酬を受け取ります。こうしたクラウド・ファンディングは、KickstarterやIndiegogoなどのサービスを通して行われています。問題は、どのプロジェクトが投資に値するのか判断が難しいこと。こちらに、英文記事ですが米Lifehackerによる投資ガイドがあります。
Cryptocurrency(暗号通貨)
暗号通貨とは、基本的にはインターネット・マネーのことです。「ビットコイン(Bitcoin)」が有名ですね。もう少し詳しく言えば、非集中型のデジタル通貨のこと。ビットコインの取引履歴は、利用者ネットワークが管理する公開台帳に記録されます。誰でも他の人の支出や取引、送金などの情報を閲覧できます。すべての取引は公に記録され、偽造は不可能とされています。
Disruptive(破壊的)
昨今のテック業界では「破壊的」という言葉が乱用されています。これは、ある技術が業界を一変させてしまう時に使われる言葉です。新しい技術が古い技術を駆逐したり、ある製品が飛躍的に進歩して、古いバージョンがすっかり脇に追いやられることを意味します。T型フォードやMP3などの技術革新がその一例です。ところが最近では、それほど革新的でもないアプリも「破壊的」と呼ばれます。例えば、Facebookのイベントを取り込めるだけのカレンダーアプリでさえ「破壊的」と呼ばれたりします。一方、iPhoneの登場はたしかに「破壊的」でした。(参考:「破壊的技術」 by Wikipedia)
Gamification(ゲーミフィケーション)
ゲーミフィケーションは、ユーザーのモチベーションを高めるために、すべてをゲーム仕立てにすることです。例えば、あるアプリは、ToDoリストを作ればご褒美をあげると言ってユーザーを駆り立てます。心理学的な効果は不確かですが、フィットネスや習慣作りなどでよく使われる手法です。
The Internet of Things(モノのインターネット)
「モノのインターネット」とは、今までインターネットに接続されていなかった物が、インターネットに接続されることを言います。例えば、サーモスタットや冷蔵庫、コーヒーポットなど、Wi-Fiカードを組み込めるあらゆる物がインターネットに接続されていきます。「モノのインターネット」はすべてを変えてしまう可能性がありますが、今はまだ黎明期といったところです。
Startup(スタートアップ)
スタートアップとは新規事業のことです。それだけです。ただし、テック業界のスタートアップは何もしないこともあります。シンプルな知的資産が、現実の形になる前に売却されるだけだったりします。今や、「スタートアップ」という言葉は、ドットコム時代のように会社を作りまくる若い起業家たちを揶揄するものになりつつあります。
Quantified Self(自己の定量化)
自己の定量化とは、テクノロジーを使って日々の生活データを記録し、自己改善につなげることを言います。例えば、歩数計はあなたの1日の歩数を数えてくれます。歩数計のデータを使えば、運動量と感情の状態の相関を調べられます。「自己の定量化」という概念は以前からありましたが、ここ数年で、生活データの追跡が簡単になったことから、一般にも知られるようになりました。
Wearables(ウェアラブル)
「ウェアラブル」とは、身につけられるテクノロジーの総称です。一般的には、身につけられるコンピューターのことです。スマートウオッチ、フィットネストラッカー、Googleグラスなどがそれに当たります。
Thorin Klosowski(原文/訳:伊藤貴之)