Inc.:スタートアップの成否にまつわる統計データを見ると、ゾッとしてしまいます。なんと、スタートアップのおよそ75%は失敗に終わり、商品に至っては90%が失敗するというのです。それでも、日々新しい起業家が商品やサービスを思い描き、戦場へと挑んでいきます。うまくスタートを切れない人を妨げている理由は何なのでしょうか? もちろん、お金ではありません。それよりももっと身近な何かが、課題を増やしているような気がしてならないのです。

私たちの脳は、情報処理ツールとして非常に優れています。でも、多くのテクノロジーと同じように、脳だってバグを起こすことがあります。潜在意識があなたのスタートアップの業績に悪影響を与え、ミスを促しているのかもしれません。駆け出しのスタートアップにとっては、ほんの小さな判断ミスでも命取りになるのです。

そこで、あなたの潜在意識が成功を奪ってしまう4つの例について、その傾向と対策をお伝えします。

確証バイアスの犠牲になる

8000人を対象に行われた心理学研究から、人は今まで信じていたことを再確認できる情報を欲する傾向が高いということがわかりました。これを確証バイアスと呼びます。また、オハイオ州立大学が2009年に実施した研究では、自分の考えに沿った情報を読む時間が、考えに反する情報を読む時間よりも36%長いことが示されています。

これがスタートアップの創設者にとって問題であることは明らか。イエスマンに囲まれていては、誰も反対意見を言ってくれないし、改善点を指摘してくる人もいません。あなたの「パーフェクトな」アイデアを裏付ける情報だけに囲まれていては、ターゲット顧客や業界の現実を把握することはできないでしょう。

対策:

チームメンバーには、違う視点を持つことを奨励してください。事業が失敗する可能性について時間をかけて考え、どこが失敗しそうかを自分に問いましょう。自分の領域から一歩踏み出すことで、発生する前に問題を予測できるようになるはずです。

過去に基づいて将来を予測している

コインを投げて、表が何回も連続で出たとします。その次に投げるとき、裏になる確率は表になる確率よりも高くなるでしょうか? 宝くじを永遠に買い続けたら、いつかは必ず当たるのでしょうか? 過去の事象が将来の結果に影響を及ぼすと考えてしまう「賭博者の錯誤」と呼ばれる現象が、スタートアップの思考にあまりにも多すぎることがあります。

例えば、初めて起業した人が成功する確率は18%ですが、2回目以降の挑戦でも、成功する確率は20%にしかなりません。1回つまづいたからと言って、次はゴールにたどり着けるとは限らないのです。

対策:

自分の会社が成功するとは考えないことです。思ったほど会社の勢いが得られなかったら、あぐらをかいて魔法を待っている場合ではありません。成功を妨げているものを特定し、それを壊しにかかってください。チームメンバーには、自社の商品またはサービスを誠実な目で見て、問題が発生しそうな箇所を見つけることを徹底させましょう。

先延ばし癖がある

仕事もしないで1時間動物の赤ちゃんの動画を見ていたことがあるという人なら、先延ばしの意味を知っているでしょう。ほんのちょっとの時間でも、チリも積もれば山となり、あなたの生産性に大きな穴が開いてしまいます。それに、この先延ばしという癖、抜け出すのが実に難しいのです。

デポール大学で心理学を研究するジョセフ・フェラーリ教授によれば、全人類の20%近くに慢性的な先延ばし癖があると言います。そして、ストレスがたまってくると、時間を無駄にすることの魅力が、どうにも逃れられないものになってしまうのです。

対策:

研究者のDan Ariely氏とKlaus Wertenbroch氏は、先延ばし体質の人には、意味のある〆切を定める「プレコミットメント」が有効であることを発見しました。内部で定めた〆切は、外部からの〆切よりも緩くなりがちですが、ある程度は先延ばしを抑えることができます。

もうひとつの対策が、過去の失敗をよしとして未来に集中するという、シンプルな許容です。カナダのカールトン大学のTim Pychyl教授は、自分の先延ばしを許容する学生ほど、次の試験ではうまくやることを発見しました。嫌な気持ちは忘れて、会社の〆切に集中しましょう。

自分の価値を人と比べる

ついさっきまでいい気分だったのに、うっかりFacebookを開いて友達の仕事やプライベートでの成功を見てしまうと、自分の会社の小さな進歩が、急に大したことないように思えてしまうことがあります。

人は、自分の価値を他者との比較で判断する傾向があります。同業の大企業やスタートアップと自社を比較していては、チームを落胆させるばかりか、災難になることもあるのです。

対策:

競合他社のことを知るのはいいことですが、固執してはいけません。自分の会社を何かと比較している暇があったら、業界で自社がのし上がる方法や、独自のアイデアを提示する方法を探してください。

脳は不完全な器官なので、スタートアップに問題をもたらす潜在意識を把握して、それを正すことが大切です。それさえできれば、成功の確率がぐっと高まるでしょう。

4 Ways Your Brain Can Ruin Your Chances for Success|Inc.

Ilya Pozin(訳:堀込泰三)

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