あら探しばかりする上司やクライアントっていますよね。そんな相手への対処法は? 作家のOliver Burkeman氏が、成果物にわざと欠陥を作っておくテクニックを教えてくれました。
あら探しはクライアントの仕事のひとつです。提出された成果物をチェックして、ミスを見つけ、指摘します。そうすることで「自分の仕事」をした気分になれるのです。
今回紹介するのは「毛むくじゃらの腕」と呼ばれるテクニックです。あるグラフィックデザイナーがクライアントに提出する広告案の片隅に、自分の毛深い腕をチラ見せしておいたことから名付けられました。
ビジネスコンサルタントのLawrence San氏が、まだコンピューターが普及していない時代にグラフィックデザイナーをしていたJoeという人物の物語を教えてくれました。
Joeは、くだらない変更を何度も要求するクライアントに頭を悩ませていました。広告案になかなかOKがでないのです。ところがあるとき、奇妙なことが起こりました。写真に撮った広告案にジョーの腕が写り込んでいたのです。
「クライアントはそれを目ざとく見つけました」とJoeは回想します。「そして、『この毛むくじゃらの腕は何をしているんだ?』といきり立ちました」。Joeが不手際を謝罪すると、「クライアントは怒って出て行こうとしました」。Joeはクライアントの背中に向かって、「腕を消せば製作に入ってもいいですか?」と問いかけました。クライアントは振り返り、「いいとも。ただし、腕を消してからだ!」と叫びました。そして、「まったく!油断もすきもありゃしない」とつぶやきながら去っていきました。
もちろん、腕は不手際ではありません。クライアントがケチをつけられるようにわざと置かれたものです。クライアントはこの腕のおかげで「自分の仕事」をすることができました。広告自体には一切手を加えなくてもです。もちろん、このテクニックはいつでも使えるわけではありません。無意味なあら探しばかりするクライアントや上司にだけ使ってください。良心的なクライアントにこんなことをすれば、時間と信用をなくすだけです。
また、米Lifehacker読者のTristanさんによると、このテクニックはプログラムの世界で「アヒル」と呼ばれているそうです。
アヒル:マネージャー連中の注意をひくためだけに付け加えられる囮。プロダクトを変更要求から守るために用いられる。この物語はゲーム製作会社Interplayでささやかれ始めたものです。ゲーム業界でプロデューサーといえば、すでに完成したプロダクトに無意味な変更を加えずにいられない人種として有名です。きっと、何かをしないと自分の存在価値を感じられないのでしょう。
『Battle Chess』というゲームでクイーンのアニメーションを担当していたクリエイターはこのことに気づいていました。彼は、クイーンのアニメーションをさらに完璧なものにするために、小さなアヒルを付け加えました。アヒルは、クイーンのまわりを四六時中うろつき回っています。ただし、アヒルとクイーンが重ならないように細心の注意が払われていました。
ついに、完成したアニメーションをプロデューサーに見せる時が来ました。プロデューサーはクイーンのアニメーションをじっと睨み、こう言いました。「うん、上出来だ。ただし、ひとつだけ。アヒルは消すこと」
The theory of the hairy arm: the tactical benefits of making deliberate mistakes | Oliver Burkeman
Eric Ravenscraft(原文/訳:伊藤貴之)
Photo by Rich Moore.